美優の危機
暴力シーンがあります。
お気をつけてお読みください。
ワン達は、ウズデロイドの王都に来ていた。
様々な衣装の人間が行き交う大通り。
征服した国を隷属させることなく取り込んでいるのがわかる。
「ウズデロイド王は、賢王というのも真実のようだな」
「そして攻撃的で連勝の王というのもな」
4人は街を歩きながら、王城に潜入する算段をする。
この国に忍ばせている諜報から得た情報で、美優が後宮にいることは分かっている。
ルティもデイルも後宮と聞いて、戦争になっても取り返しに行くと突入しようとしたが、ワンに止められた。
「大丈夫だ。
王が訪れたのは1度だけで、それもすぐに部屋を出たと報告があるではないか」
「これが落ち着いてられるか」
「ルティン、ご主人が俺を呼ばない。まだ危機ではないということだ」
もしも、美優がケガでもしたらワンは呼ばれるはずなのだ。
「きゃああ!」
後宮に響き渡る侍女の悲鳴。
警護の女性兵士が弾き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
男達が後宮に押し入り、美優に危機が訪れていた。
侍女の一人の首元に短剣が付きつけられ、主犯と思われる若い男が美優の前に立つ。
「オルガを放しなさいよ、何が望みなの?」
侍女の名を呼びながら、この卑怯者と言いたい言葉を飲み込む美優。
「フーン、お前が王の女か。美人を見過ぎて飽きたのか、趣味が悪いな」
美優の顔を見ながら男が、失礼な事を言う。
美優も自分は絶世の美女というわけではないが、普通に可愛いと思っている。怒りで震えそうだけど、人質を取られて、拳を握りしめて自分を押さえつける。
それに、警備兵が弾き飛ばされたことから、この男には大きな魔力があるのだろう。
「ほぉ、グスタフではないか。自分から出て来るとは逃げるのを諦めたか」
美優は後ろから、フランシスの声が聞こえて振り返る。
普段は王以外男子禁制の後宮に、フランシスだけでなくトミーや兵士達が駆け付けて来た。
「近寄るな! この女がどうなってもいいのか!」
強く探検が押し付けられ、侍女の首に薄っすら傷がつき、一筋の血が流れる。
「やめて!」
叫んだのは美優。
「どうなろうとかまわない」
平然と答えるのはフランシス。
「ちょっと! あんまりじゃない!」
美優がフランシスにくってかかると、フランシスがニヤリと笑う。
「助けてやろうか?」
「はぁ!? 国民を守るのは、王の義務でしょうが!」
美優がフランシスに駆け寄り、その頬を掴んでひっぱる。
普段のフランシスならば、女が触れる程近くに来させないのに、美優であることと、想像外の出来事に虚を突かれた。
それは、フランシスの側近も、犯人達でさえそうだった。
美優に頬を掴まれたまま、フランシスが片手を前に出すと、侍女もろとも犯人が弾かれた。
同時に、フランシスの護衛達が駆けだし、侍女と犯人を引き離し、犯人を拘束する。
「え?あ?」
あまりに一瞬すぎて、美優は状況に着いていけない。
「死なない程度に魔力は抑えてある」
侍女も侍女に短剣を突きつけていた犯人も、意識がないのだろうピクとも動かない。
人質がなくなったことで、グスタフと呼ばれた主犯や他の男達が美優に魔力弾を打ってくるが、美優に届く前に消えてしまう。
美優には、何が起こっているかわからないが、フランシスは納得しているようである。
あのご主人大事の神獣が、美優にガードをかけないはずはないのだ。
反対に、フランシスが魔力で犯人達に攻撃をする。
グブッ、と鈍い音がして、犯人の腕がありえない方向に曲がる。
「うわぁあ」
痛みに男の悲鳴があがり、口から血が噴き出す。
まともに見た美優が、止めようとフランシスの腕にすがりつく。
「これは、俺に代わって王位に就こうとした叔父の長男だ。
叔父を拘束した後、屋敷に騎士が向かうと逃げた後で、探してたのだ」
その叔父は、すでにこの世にいないとは美優に伝えない。
「謀反は一族すべて処刑だからね」
一族すべて処刑。
恐ろしい言葉に美優は、この犯人がフランシスから逃げて回っていたことを知る。
そして、一矢報うべく、後宮に突入したのだろう。
きっと王家の血が濃いということで、王城の奥深くの魔法陣も使えたのかもしれない。




