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ウズデロイド王フランシス

フランシスは、ベッドで寝ている美優に呆れていた。

連れて来た昨日は、あれだけ文句を言い暴れたくせに、夜は侍女を連れて後宮探検だと。

報告を受けた時は、ありえないと報告を疑ったが、ミユウだったと納得した。


しかも、男である自分が部屋に来ても気づかず寝ている。

「馴染みすぎだろ。どういった神経しているんだ?」

普通は、戻りたいと泣き続けないか?

美優を見ていて自分の感性が普通と思うことに気が付き、フランシスは苦笑いを浮かべる。

「よくこんなので生きてきたな」

美優がとても不安定に思えるのは自分だけではあるまい。


「おはよう」

美優の目が覚めたらしく挨拶をしてくる。

「くく、もうすぐ昼だぞ」

何もなかったかのように美優が起きるのが、フランシスはおかしくてたまらない。

「昨夜は楽しかったか?」


美優はベッドから起き上がると、それには答えないでフランシスを睨む。

「女性の寝室に来るなんて失礼だわ」

「ここは、後宮だ。俺が来るのは当然だろう」

そうだった、ここはこの男の後宮だ。

はー、と美優が大きなため息をつく。


ガタン、と音がして寝室の扉を見ると、侍女の一人が水差しのグラスを倒していた。

起きた美優に水を持って来たらしい。

今まで笑っていたフランシスの表情がなくなるのを、美優は感じた。


「また来る」

美優に声をかけ、フランシスは部屋を出て行った。

それを見送って、美優は再度溜息をつく。

王様も政治家なんだ・・・

見たくないものを見ちゃったな。





王の執務室に戻ったフランシスは、トミーから書類を受け取った。

「叔父上にも困ったものだ。

俺が3日留守しただけで、欲張ったものだ」

「陛下、何故に急に姿を隠されたのです?」

トミーはフランシスが自分から消えたと思っているらしい。

結果的に、フランシスに対抗する者の(あぶ)り出しになっている。

フランシスは口の端にをあげると、

「俺は誘拐されたんだ。

犯人を抱えて、議場に戻って来たのを見たはずだ」


「え? あのキャンキャン吠えていたお嬢さんが?」

強い魔力は感じませんでした、とトミーが言わずともフランシスには通じている。


椅子の背に深く身体を預けて、机に両肘をつき、組んだ手を顔の前に置く。

「俺も魔力は感じなかった。

だが、あいつは女神なんだろう、きっと」

神獣がご主人と呼ぶ女は巫女などではない。連れ去られて、今頃怒り狂っているだろう。


「女神? 陛下、それほどあの令嬢を気に入られるとは」

とうとう、妃が、お世継ぎの希望がと喜ぶトミーである。


「トミー、すぐにわかるだろう。マルセウスに進軍するかどうかは、あいつ次第だ」

美優がこちらにある間は、神獣はマルセウスに戻らないだろう、その間にマルセウスを叩くとフランシスは考える。

すでに魔獣を放ってある。


「さて、叔父上の処分だな。

最後に顔を見にいくか」

椅子から立ち上がり執務室から出るのを、トミーが追いかける。


フランシスが転移しない時は、トミーや侍従を引き連れ、警護に守られた物々しい一群になる。

それは、王宮に居る者には見慣れた光景であり、厳格で威厳があり、その辺りだけ空気が冷えるような一群だ。

フランシスは魔力と才能にあふれた王であるが、好戦的で冷徹な王でもあると自他ともに認めているからである。

反対意見に耳を傾ける賢王であるが、反体勢力には容赦しない。

血による粛清、最初はフランシスの異母兄弟達。それを支援した貴族達。

フランシスは貴族牢のある西塔へと入っていく。


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