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真夜中の後宮

があぁぁぁ!

美優が消えた瞬間、ワンの叫び声が響き渡り、ルティンとデイルがワンに飛びつき口を塞いだ。

「落ち着け」

「ここで見つかると、美優を助けられなくなる」


ニナが辺りを探るが、人の気配はない。

「大丈夫なようです」

ワンの声は遠くまできこえただろうが、確認に来る者はいないようだ。


「美優はウズデロイドの王宮に連れていかれたのは間違いない。

まて、転移するわけにはいかないのだ」

飛び出そうとするワンをルティンが押さえ、デイルが説明する。

「我々はここでは他国の王族だ。ここで暴れるわけにいかないのだ。

それは戦争につながる」

二人は王子として国を守る義務がある。


「もちろん美優は助ける。密やかに王都に潜り込み、王宮に潜入する」

「そんな悠著な事をしていられない。すぐにご主人を助けるんだ!」

ワンがルティンを振り払い立ち上がる。元々二人はワンに(かな)わない。


「ウズデロイド王は、ミユウに危害を加えない」

デイルは言い切る。

「なんでだろうな。

僕もミユウを利用しようと近づいたのに、それだけじゃないんだ。

だからウズデロイド王もそうだと思えるんだ」


人型のワンは、落ち着いて来たのか草地に腰を降ろした。

「失態をさらしてしまった。

目の前で、ご主人を(さら)われ動転してしまった。

ご主人は、ご主人を守る者を無意識に側におく。デイルもそうであろう。

フランシスはご主人に呼ばれたのだ、ご主人に傷をつけることはないだろう」

最初は美優を食べようとしたワンがここにいるように。

「フランシスはご主人を傷つけなくとも、フランシスの周りも同じというわけではあるまい。急ごう」

ワンが立ち上がり荷造りするのを、3人も手伝い始めた。


ワンの言葉がひっかかる『フランシスはご主人に呼ばれたのだ』。ミユウの魔力は弱く、魔術は使えないのではなかったのか。

ルティン、デイル、ニナにとって美優は力なく守るべき存在である。それは違うのではないか、と思えるのだ。





カツン、カツン。

真っ暗な廊下に燭台の灯りが進む。

「お願い、アザレア、絶対に離れないでね」

美優が横を歩く侍女のアザレアをチラチラ見る。

「ミユウ様、怖いなら部屋に戻りましょう」

「恐いけど、探検したい」

握りこぶしで力説する美優は背中を曲げて歩いている。恐がっているのがよく分かる。


近衛兵に連れてこられた後宮には、すでに侍女が待機していた。その一人がアザレアである。

侍女も急遽(きゅうきょ)集められたらしく、王が連れて来た女性としか聞いてなく、美優を見て驚いている。

想像していた令嬢とは違っていたらしい。


美優も驚いていた。

後宮には誰もいないのだ。

広い後宮に人気(ひとけ)はなく、どの部屋も長い間使われていない。


フランシスには子供がいないが、後宮にいれる女性もいないらしい。

後宮と聞いて、美しい姫君たちに虐められる自分を想像していた美優である。

『後から来て、陛下の寵愛を得るなんて考えない事ね』

『陛下は、昨夜も私の所で休まれたのよ、おーほほほ』

そんな妄想をしていた美優であったが、実際の後宮は豪華さがかえって過去の物という証明でもあった。


夕方になっても、夜になっても、フランシスが美優の部屋に来ることはなかった。来られても困るのだが、それはそれで暇になった美優は、夜の当番のアザレアを連れ出して、後宮の探検に出たのだ。

探検というよりは、気分は肝試しである。

少し離れて護衛が付いているが、美優は自分の足音にさえびくついている。

「ね、きっとこの部屋は美しい寵姫様が妬みと嫉妬と陰謀の渦巻く後宮で殺されたのよ。

誰もいないはずの後宮に夜な夜な迷い出るのよ」

「申し訳ありません。ミユウ様が何を期待しているのがわかりません」

アザレアのいう事はもっともである。


「え?未知との遭遇よ!」


アザレアはミユウという未知の人物はここにいる、と思わざるを得なかった。


ワン達が美優を救出すべく悲壮な思いで王都に向かっているころ、美優は侍女を引き連れ、肝試しで遊んでいた。


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