フランシスの国
「それで、陛下の消息はつかめたのか?」
「申し訳ありません。全力で捜索を続けておりますが、この2日痕跡さえつかめません」
軍の主力部隊を使って、国中を探しているのは分かっている。
だが、同じ答えしか返ってこない。
会議は喧々囂々と、銘々勝手に発言して紛糾を極めていた。
ウズデロイドの王宮は、王が消えてから権力争いの場となっていた。
「陛下が見つかるまで代理王ならば、陛下の叔父の私がふさわしい」
そう言って立ち上がったのは、先王の弟のボンボワール公爵。
「いや、陛下にお子はおられず、簡単に代理を決めるべきではない」
争う姿勢の軍司令官にボンボワール公爵が机をたたく。
フランシスは不慮の事故にあい、戻ってこなければいいとさえ思っている輩だ。
フランシスが消えた後、取りまとめ役をしているのは側近の補佐官トミー・ロウ・ビステリア。
どいつも欲の固まりが、フランシスの能力の半分もないくせに! と苦々しく思いながら会議を進めている。
「ぎゃー!
どこ触ってるのよ! エッチ!!」
突如、若い女性のキンキンした声が会議場に響く。
会議場の中央にある転移陣が光り輝いて男が現れた。会議場の魔法陣は王族とそれに準ずる者しか使用できない。
怒声が飛び交っていた会議が静まり返り、全員が現れた二人を固唾を飲んで見ている。
そこには、美優を肩に担いだフランシスが立っていた。
「バカ陛下、女の子はお姫様みたいに横抱きって知らないの!」
手はポカポカ、フランシスの背中を叩いている。
「では俺のお姫様になるか?」
「お断りよ! 誘拐魔のフランシス! 帰して、戻して!」
「やっと俺の名を呼んだな」
美優はフランシスの肩の上で身をよじり逃げようとするが、徒労に終わる。
「トミー、近衛を呼べ。こいつを後宮の青の間に入れておけ。
絶対に逃がすな、傷一つ付けることはまかりならん」
ああ、そうだ、とフランシスは美優の足をなでる。
「ぎゃあああ!」
叫びながら美優が手を振り上げフランシスを殴るのを、信じられない物をみるように男達が瞬きもせずに見ている。
「痛かったぞ、あとでお仕置きだな。楽しみだな」
ニヤリと笑うフランシスに末恐ろしいものを感じて、美優がびくつく。
「わ、わ、悪かったなんて思って、な、ないんだから」
びくつきながら言っているのが、もろバレである。
「あはは、部屋に入ったら、ふろに入って綺麗にしてもらえ。
侍女をつけるから、好きに使え。
お前が逃げたら、その侍女を一人ずつ処刑する、覚えておけ」
楽しそうに笑いながらフランシスが言うのは、恐ろしい言葉だ。
「ぜ、絶対に逃げるから!」
美優が睨んでも威力はない。
「いいぞ、処刑する侍女の順番はこちらで決めるぞ」
フランシスは本気だ。
美優は、フランシスが冗談で言っているのではないと知っている。
「バカ言わないでよ! 侍女は関係ないでしょ!
バカフランシス、悪魔フランシス!」
近衛が駆け付けると、フランシスは肩から美優を降ろすと、大事そうに渡す。
「こいつがケガしたら、お前の首が飛ぶと思え」
ガン!
美優がフランシスの胸を叩く。
「どれだけ横暴なのよ! 何様よ!
王様だったっけ。暴君、独裁者、誘拐魔!歩くから降ろして!」
降ろせー! と喚く美優は、近衛兵に大事そうに抱えられて連れていかれる。
「陛下、よくぞお戻りで」
フランシスに駆け寄るのはトミーである。
「あの女性は?」
フランシスにあれだけの事をする人間を初めて見た、とトミーは驚きを隠せない。
しかも、それをフランシスが許しているのだ。
「あれは、この世の女王かもしれん」
ガタン、大きな音をたててフランシスが王の席に座る。
「それよりも、面白そうな話をしていたな。
俺の留守は楽しかったか?」
美優に驚いていた男達は、フランシスの視線に身体が冷えていくのを感じていた。
それは、死刑執行の言葉の様にも聞こえた。




