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数日かけて王都に帰ったハーシュメルトは夕食を終えたあと、自室でルディアーノを待っていた。ルディアーノが来るとかれは扉を開け、部屋にいれた。
「ハーシュさま、お疲れでしょう? 今日はもうお休みください」ルディアーノは持っていたランプをベッド脇の小卓に置き、掛布団をめくった。
「話がしたい」ハーシュメルトはベッドに座り、隣に座るようルディアーノの服の袖を掴んだが、はぐらかされた。
「横になったらお話します」
言われた通りハーシュメルトがベッドにはいると、ルディアーノは上から布団をかけた。
「ぼくがいないあいだ、何かあった?」ベッドの近くに立つルディアーノにかれは話しかけた。
「ユリエラさんのお店で買い物をした帰り、ドルレアンさまに会いました」
「レイミー?」
「お兄さまのほうです」
「なんだ。何か言われた?」
「ハーシュさまのことと、サンセベリアの商人について聞かれました」
「教えて」
「ハーシュさまが闘技場で使われている剣のことを知りたがっておられました。誰の物なのか、どこで手に入れた物なのかを聞きたかったようです」
「そうなんだ。あれはぼくの家にあった物なんだ。ぼくもよく知らないけど、ぼくの曽祖父が持ってた物だって、父さんから聞いた。グランディオと試合する前にたまたま見つけて、その剣で勝ったから、気に入ってずっと使ってるんだ。前にテオジールがその剣を調べてたけど、400年くらい前にセザンの騎士が使ってた剣なんだって。昔の物にしては状態が良いってテオジールは驚いていたけど、ぼくはあまり興味ないかな」
「ドルレアンさまはなぜ、そのようなことを知りたがるのでしょう」
「あれじゃないかな。前に噂されたんだよ。子どものぼくがキングになってだれにも負けないから、剣に細工でもしてるんじゃないかって。刃に毒が塗られてたり、針が飛び出てくるようになってたりって。そんなわけないだろ。いまさらそんな昔の噂話を持ち出してきて、粗探しでもするつもりか」横になっていると睡魔に襲われ、ハーシュメルトは目を閉じながら答えていた。「あとは?」
「ハーシュさまはサンセベリアの商人のかたと面識があるのですか? ドルレアンさまはそのかたについて、知りたがっておられました」
「うん。調べて勝手に謝りに行くのかな。そのひとのことは知ってるよ。でも謝罪なんて受けたくないだろうね。犯人本人でもないのに。あらためてその話をされるのも辛いだけだ。もしかして、きみにも謝ってきた? あのロスカ人も一緒にいたんだろ?」
「はい。わたしだけでなく、ほかの遺族のかたにも会いに行かれたそうです。だれも話を聞きたがらなかったようですけれど」
「それはそうだろう。聞かれたのはそれで終わり?」
「あとひとつだけ。ハーシュさまに妹がいるのかと聞かれました」
「妹? いないけどな」
「はい。すべてなにも答えてはいません。聞かれたのはそれだけです」
「わかった、ありがとう。そのうちぼくに聞いてくるだろ。気が向いたら答えてやろう」ハーシュメルトは軽く笑いながら言い、閉じていた目を開けた。「ユリエラさんのお店でなにを買ったの? きみのことが聞きたい」
ルディアーノはランプの灯りを消し、「それはまた明日。もうお休みください」と言って掛布団を整え立ち去ろうとした。
ハーシュメルトは観念して暗闇の中に言葉を発した。「おやすみなさいルディ、愛しています」
すぐに光のような声で、「おやすみなさい」と聞こえたが、ルディアーノの表情は暗闇に遮られ、確認できなかった。




