邂逅1
取引先からの帰り道、いつもの白い社用車に乗って走っている。
まだ昼過ぎだったが、今日の午後はアポイントも無いし、久しぶりに時間に余裕がある。車を商工会議所の駐車場に片づけたら、早上がりしてしまって良いかもしれない。
信号待ちをしている交差点の向こうに、工場のような素っ気ない外観の建物がある。
四角い二階建ての建物だが、グレーのトタン板のような外壁に囲われていて、何の飾り気もない。だが、よく見ると、通りに面した壁には、ペンキで店名が書いてあった。その色の褪せた、白い文字がバイク屋であることを示している。
この道は何度も通ったはずだが、バイク屋があることに今まで気づかなかった。いつから、ここにあったのだろう。
信号が青になると、店の駐車場に車を入れた。
建物の中を覗くと、意外に奥行きのある店内だった。
左側には工場らしきスペースがあり、バイク用のリフトが置いてある。今はそこに鋭い形をした青いバイクが置いてあり、店主らしい男が作業中だった。
右の方には様々な形と色のバイクが並んでいた。別に綺麗に陳列してある訳ではなく、倉庫のようなスペースにぎっしり置いてある。床も、コンクリートの上にリノリュームが塗ってあるだけだ。それもところどころ欠けて、はげかけている。
作業をしていた男が、こちらに気づいて顔をあげたが、
見せてもらっても良いかときくと「勝手に見てってください」とだけ言って、作業に戻ってしまった。
展示車を見て回ることにした。
ただ、見るといっても、そもそもバイクにどういう種類があって、どこのメーカーが造っているのかも知らない。
何を見れば良いかもわからないと思いつつ、店の中を歩いていると、バイクにも意外なほど種類が多いことに気づいた。ただ、あの黒い大きなバイクに似たような車種は見つからなかった。
やがて、一台の小さなバイクに目が留まった。
黒っぽい武骨な車体。一人乗りのシート。丸目一灯。車体の横にはHONDAの文字とCC50と書かれている。
50㏄という意味なら車の免許でも乗れるなと思う。それに気づくと、急にバイクという存在が身近なものになった。
社用車に戻って、ドアを閉めた。
急に、乗りなれた社用車になんだか息苦しさを覚えた。バックミラー越しに、あの小さな黒いバイクが見えている。
あの小さなシートの上には自由な風が吹いているような気がした。




