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異界転生 人斬りの使い魔と没落探偵  作者: 悦田半次


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109


 ツバキ達は知らない情報だが、このゴーレムの名前は――厳密には識別番号で名前と言うほどのものではないが――トライアルナンバー109。


 本体はこぶし大の赤いコア。

 109の特製は、投下された場所の物質を取り込むことで様々な姿を取ることができる。

 戦闘機となって空爆を行うことも出来るし、人間と同じサイズになったりはたまた鉄の巨人になることもできる。


 いくらボディを壊してもコアさえ残っていれば、再生することも可能だ。

 109に対抗すべく某国が作り上げた人型兵器も、完成した瞬間109に乗っ取られるという笑えない事態も起こった。

 109は莫大な戦果を挙げた。

 そして、開発国が滅ぶだけの時間が流れ、109は武器庫の中でひっそりとその役目を終え、朽ちていった。


 しかしその間、今は亡き開発者達にも予想だにしない出来事があった。

 単純なプログラムしか無かったはずの109は自我を芽生えさせていたのだ。

 人間や他生物に比べればそれは極めて原始的なものだったが、確かに自我と言えるものだった。

 そして経年劣化を迎え機能が停止するその直前、109は初めて願いを抱いた。


 ――死にたくない。

 その自我の発露により、109は異界転生の召喚条件を満たした。満たしてしまった。

 仮に彼――便宜上そう呼称する――を召喚したのがシルヴィア・ブルームであれば、彼は新しい世界を生きる中で、さらに自我を拡張させていたことだろう。

 だが、現実は違った。

 皮肉にも自我を得たばかりに、109は再び操り人形へと戻ってしまったのである。





 小説の中には銃弾だの魔法だのを剣で弾いてものともしない者達がいる。

 この手の話はフィクション――作り話なのでアレコレ言うのも野暮だとツバキは思う。

 しかしこれだけは言わせて欲しい。

 どいつもこいつも涼しい顔してやっているが――いざやってみると、滅茶苦茶キツいのだと!


 次々と撃ち出される銃弾は、全部土の塊。

 周囲の物質を取り込んで肉体を形成するとなればそうもなるだろうが、土だからと言ってこの速さで飛んでくるものが当たれば普通に死にかけない。

 転生者は死ににくいので、普通の人間よりは耐えきれるだろうが、積極的に受けたいかと言われれば答えはノーだ。

 飛んできた弾丸が刀の間合いに入った瞬間に斬り、かつ別たれた弾が当たらないように軌道を変える。

 余裕があれば、一部の球を弾いて相殺を狙う。

 言葉だけだと簡単そうだが、それが1秒間に何発も来るとしたらどうだろう。

 たまったものではない。


「リドー! 早くやれ!」

「せっかちやなぁ――早漏は嫌われるで、ツバキちゃん」

「誰がツバキちゃんだ! あと早漏でもねぇ!」


 一ツ目ゴーレムの背後から迫ったリドーは、背中目掛けて煉獄一直線ゴー・トゥー・パーガトリィーを突き立てた。

 血飛沫のようにゴーレムの土が舞い、ぐらりと体が傾く――が、足下から取り込んだ土が傷を修復し、今度はリドー目掛けて銃弾の雨を降らせた。


「うひっ、こりゃたまらんわ!」


 地面を転がるように避けながら、リドーは叫んだ。

 ツバキがガドリング砲を引きつけ、その間にリドーが仕留める――という作戦だったが、そうことが上手く運んでくれる、ということはないらしい。

 戦い始めてからこんな調子だった。

 ダメージは通る。

 ゴーレムと言うとなんとなく無駄に頑丈なイメージがある。

 この個体は硬いことには硬いが斬れないほどではない。

 が、切った側から再生されるので結局はトントン――いや、ツバキ達の体力を考えればこちらがマイナスになっているとも言える。


「いっそのこと、周りの土がなくなるまで粘ってみるか?」

「そんなんやってたら、この星丸ごと無くなるわボケ」

「言ってみただけだよ。マジでやるつもりはない」


 肩をすくめながら、大剣の一撃を回避する。

 完全に倒すのはコアを破壊するしかない。


「シルヴィア、コアはちゃんとヤツの体にあるんだよな?」


 ツバキは離れた場所で分析中のシルヴィアに聞いた。


「ええ。強力な魔力反応はあのゴーレムから出ているわ。逆に周囲の魔力反応はピタッと止まってる。今の彼は、そのリソースを全てあの肉体に注いでいると見ていいわね。新しく雑兵や杭が出て来ないのもそれが理由だと思うわ」

「なるへそ。スキルは――」

「分からないわ」


 ばっさりと返された。


「でも、まだ使っていないっていう前提で戦った方がいいわね。スキルを使う際に発生する魔力反応はまだ未確認なの」

「そうかい……!」


 大剣の腕の上を駆け、ゴーレムの首を刎ねる――が、やはりすぐに再生された。

 振り落とされる前に飛び降り、着地。


「さっさと使ってくんねぇかな……! やりづらいったらないぜ」


 てっきりゴーレム関係のスキルを持った転生者が相手と思ったが、実はゴーレムそのものが転生者でしたということになったので、どんなスキルが飛んでくるのかまるで分からない。

 スキルはバリエーションやパターンがとにかく多い。

 武器に付与されてたり、転生者本人に付与されてたり、はたまた転生者が連れてる魔獣が持ってたりと様々だが、大雑把な区別というなら2種類に分けることができる。 


 1つ目は、転生者が持っていた特性・力を強化・拡大したもの――拡張型。

 ツバキの『切断』や以前戦ったゴリアテの『絶対防御』はこれに該当する。

 2つ目は、転生者と縁もゆかりも無い力が付与されているタイプ――搭載型。

 例えば、何の変哲も無い少年が、召喚した際に何でも切り伏せる最強の剣を持っている――と言った具合である。


 かの大英雄、勇者ヤマダも搭載型だったらしい。

 どちらの傾向でもスキルが強力であるということに変わりは無いが、搭載型の方が厄介だとツバキは思っている。

 何せ外見や戦闘スタイルからスキル内容を予想することが出来ない。

 仮に拡張型としたなら、このままの状態で立ち回ってコアを狙うのが1番だ。

 が、搭載型ならずっと、スキルの存在を気にして立ち回らなくてはいけない。

 果たしてどちらか――

 その答えが明かされたのは、意外にもすぐだった。


「ええ加減――ぶっ壊れろ!」


 リドーは弾丸をくぐり抜け、ガドリング砲を切断し跳躍。


「これで真っ二つや!」


 大鎌を振り下ろそうとした瞬間、一ツ目から赤い光線が発射された。

 狙いはリドーではなく――煉獄一直線ゴー・トゥー・パーガトリィー

 着弾。

 リドーは傷を負っていない。

 だが、


「なんやと……?」


 リドーが呆然と目を見開く。

 刃を構成していた液体金属が、どろりと輪郭を失い崩壊した。

 その表情からして、リドーの想定通りとは思えない状態にあることは明白だった。

 シルヴィアが戦慄に声を震わせる。


「この反応……! あれが、彼のスキル――!」


 大剣が唸る。

 腹から血をブチまけながら、リドーが墜落していくのが見えた。


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