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天才魔術師の私が、異世界から勇者様を召喚するまで  作者: 楚々園 ゆるぎ
最終章 そして私は願い続ける

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Awake:93 話し合い

※ノルン視点。

「私の名はノルン――ノルン・フォン・テレシア・ミュゼ・エルタシア。このエルタシア王国第二王女であり、貴方達の言う【終わりの魔女】よ」


 私はダンスホールにある階段の踊場から、偽勇者達に向かって自己紹介をした。

 ついでに、スカートの裾をちょっとだけつまみ、膝を曲げてお辞儀をしてみる。


 この挨拶はパーティーとかで、ドレスを着たお姫様とかがするやつだ。

 カーテシーとか言うらしいけど、実は一回やってみたかったのよね!


 そんな私の姿を見て、勇者パーティーが愕然としている。

 魔女がこんな少女だってことに驚くのも無理はないけど、何もそんな目を向けなくてもいいのに……。


 今日は来客があるっていうから、久し振りに寝癖も直したし、目立たない程度でセレンに化粧もさせられた。

 ドレスだって普段よりも、かなりデザインの凝ったものを身に付けている。


 いつものだらしない姿と違って、今の私は姫として恥ずかしくない姿にプロデュースされていた。

 鏡で一度自分の姿を見たとき、写っている美少女が自分だと気付かなかったくらいの変貌ぶりだ。


 だから、私は少しだけ今の自分の容姿に自信があったんだけど、勇者パーティー達の反応は期待していたようなものとは違っていた。


「まさか【終わりの魔女】が、こんな少女だったなんて……」


「ああ。だがそれよりも――」


 勇者パーティーの視線は、あっさり私からセレンに移動した。

 ちゃんとラスボスっぽく登場したのに、私の存在感薄いわね……。

 彼らからの視線を受けて、セレンは淑やかに挨拶をする。


「お久し振りです、勇者パーティーの皆様。トワリアル地下迷宮では、大変お世話になりました」


「セレンさん、何故貴方が魔女側に……」


「何故と問われましても。私は元よりこちら側です」


 アイクの言葉に、セレンはそう答えた。


「じゃあセレンさんの主人というのは、そこの【終わりの魔女】だったんですか!?」


「はい。私は姫様の専属メイドですから」


 セレンは悪びれる様子もなく即答した。

 そんな彼女と話す偽勇者達を、私は改めて観察する。

 そして、事前にセレンから聞いていた名前や特徴を、今の彼らに照らし合わせた。


 アイク、ティアナ、アミィ、ラッシュ。

 よし、バッチリね。

 何でもセレンが面識の無い仲間がもう一人がいたようだけど、それはネルファが上手く分断してくれたようだ。


 彼らの顔と名前が一致したところで、私は肩の力を抜いて言った。


「まあ立ち話もなんでしょうから、ゆっくり紅茶でも飲んで話さない? セレン、お願い」


「お任せ下さい」


 セレンはパパっとテーブルと人数分の椅子を用意した。

 私は早速自分の椅子に腰掛け、勇者達に視線を向ける。


「さあ自由に座りなさい。勿論、貴方達が私を殺そうとここまできたのは知ってるわ。だけど、まずは腹を割って話し合わないかしら?」


「話し合いだと?」


 アイクの視線がかなり鋭い。

 というか、殺気すら漏れてる。


「ほら、話せば分かり合えるって言うじゃない? 人間って案外見かけによらないし、魔女と言っても私の中身は所詮ただの十六歳なのよ?」


 セレンの手によって、ティーポットから紅い液体がそれぞれのカップに注がれていく。

 その光景をジッと見ている偽勇者達は、まだ席に付く気配は見せない。


「……紅茶だと? 敵が出した飲み物を馬鹿正直に飲むわけないだろ。どうせ毒でも入れてるんだろうしな」


 ラッシュのその言葉に、私は率先して紅茶を口にした。

 同じティーポッドから注がれていたから、私が最初に飲めば毒なんて入ってないと納得してくれる筈だ。


「ほら、飲んだわ。毒なんて入ってないわよ?」


 しかし、間髪入れずティアナが言った。


「アイク、騙されてはいけません。毒を無効化する魔術を使ってる可能性もあります!」


「ああ、分かってるさ。それにティーカップ自体に毒を付着させてる可能性だってあり得る」


「……」


 どうすればいいのよ!

 というか、死ぬほど警戒されてるわね……。


「ねえセレン、私ってちゃんと『歓迎する』って言ったわよね?」


「言いましたね。ただ、やはり上手く意図が伝わらないようです」


「むぅ……困ったわね。出来るだけ穏便に済むように、彼らだけをこの城まで連れてこさせたのに」


 世界を救うという旗頭を掲げている彼らに話をつければ、一番てっとり早いと踏んでいたのに……。

 まともに話し合いに応じてくれないなんて、予想はしていたけど正直困る。

 私は言った


「じゃあもういいわ。話し合いは無しよ。今ここで、私の要求をハッキリと言わせて貰うわ。折角ここまで来てくれて悪いんだけど……貴方達、今すぐ帰ってくれないかしら?」


 私はそうキッパリと言ってやった。

 アイク達は全員黙っているので、このまま話を続けよう。


「見ての通り、この国は平和そのものよ。それにこの五年間だって、他の国にも一切迷惑を掛けてないわ。だから、お願い。今はそっとしておいて頂戴」


「そっとしておけか……。お前が世界を滅ぼそうとしている以上、それは出来ない相談だ」


 アイクのその言葉に、私は溜め息をつく。


「そうね。これは最初に言っておくべきことだったわ。私は世界を滅ぼすつもりなんてない。そもそも私が世界を滅ぼそうとしているって言うのなら、まずはその証拠を出しなさいよ」


 私がそう言うと、アイクは反論した。


「こちらには予言があるんだ。【終わりの魔女】は世界を滅ぼすとな。寧ろ、お前の方がその証拠を出してくれ」


 証拠を出せと言われても、彼らを納得させられるような証拠なんてものはない。

 というか、世界を滅ぼすって最初から決め付けられた時点で、私に反論の余地なんてないじゃない。


「世界を滅ぼす? 私が? 馬鹿じゃないの!? この世界を滅ぼすメリットなんて、一体どこにあるってのよ!」


 たとえ世界を相手取れる力を持っていたとして、それで『よし! 世界を滅ぼしましょう!』なんて発想になるわけないでしょ。

 しかし、アイクは首を横に振った。


「悪いが、俺達はお前の言葉を信用出来ない」


「そう……。どう言っても信じてくれないようね。なんなら、今ここで誓約書でも書きましょうか? 『私は世界を滅ぼしません』って」


「こっちを馬鹿にしてるのかよ……」


 ラッシュが舌打ちしてきた。

 コイツ、ウザイわね。


「この際だから教えてあげるわ。私がこの国に閉じ籠ってる理由はね、静かに魔術を研究するためなの」


「世界を滅ぼす魔術の研究ってわけか……」


 だから違うって言ってんでしょうが!

 アイクの台詞に、私は思わず心の中で叫んだ。

 しかし、喉まで出掛かったその言葉をグッと飲み込む。


「だから言ってるでしょ? 私は世界を滅ぼすつもりなんて無いの。ただ魔術の研究がしたいだけだから、貴方達と交渉したいのよ」


 すると、アイクはこう断言してきた。


「残念だが、こちらに交渉する気は無い」


「……後悔するわよ?」


 人に信じて貰うって難しいわね。

 もっと交渉のプロがいてくれたら、もっと穏便に話が進むのかもしれないけど。


「俺にも引けない理由がある。世界の為に死んでくれ、【終わりの魔女】」


 アイクはそう言って、武器を構えてきた。


 はぁ……結局こうなっちゃうのね。

 争う前にまずは話し合いって言うけれど、そもそも聞く耳を持たない人間に何を言っても無駄だわ。


 ああもう!

 これだから世界は平和にならないのよ。

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