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リトルヒーローズ  作者: 貫井べる
1章 : BRAVE STORIES
9/12

ROUND 09 : 負け犬

ROUND 09 : 負け犬




「アレは無理だろ……」

敗北した犬飼は控え室で凹んでいた。

「火向さん、アレにどう勝ったんですか……」

「とにかく真正面は避けて回避と反撃の繰り返しかな……観客がキレるやつ」

火向はハルートのネジに緩みがないかチェックしながら答える。

「お前みたいに真正面からぶつかったら無理だよ。

ただ、そういう事するから変な人気あるんだよなお前……」

緩んでいたネジが見つかり、それを外し緩み止めを塗る火向。

「少なくとも俺とあいつは──」

「試合終了!」

スピーカーから会場のブーイングと共にアナウンスが聞こえた。

「テオ・ストラトス監督のビクトリー・ヴァンガードNC、トップランカーが1回戦敗退!

深山フブキ選手、北の女王を破った実力は本物だ!」

プロジェクターが映し出す試合会場の様子では、ビクトリー・ヴァンガードは右腕と頭部を失っている。

「あいつも初戦から派手に勝ったな……」

火向は率直な感想を口にした。

「ま、俺もあいつも真正面から突っ込むタイプとは相性がいいんだよ。

お前は無理に真似するより自分のやり方を続けた方がいいんじゃないのか?」

「そういうもんなんですかね……」

犬飼は今一つ納得できていないようだった。



「さあ、赤コーナーには愛媛の魂が燃え上がる!

マスク・オブ・ミカン選手!使用機体はカンキツオーだ!」

巨大なみかんの被り物をしたオレンジ色の作業着にオレンジ色のマントの男がステージに上がり、同じくみかんの頭部にオレンジ色の体のロボットをリングに置く。

そのロボットは背中の大きな透明のタンクにオレンジ色の弾を積んでおり、そこからのびるチューブが腕に装着している大きな銃に繋がっている。

「対するは前回の世界大会で準優勝のMIO選手!

まさかまさかの新型機、川崎大会で猛威を奮ったガン・ケルビムでの参戦だ!」

MIOがリングに置いたロボットは、ガン・デュミナスでは右腕だけだった銃を両腕に装着している。

ただしその銃身は短い。

「発射体ルールは1発命中で1ポイントとなりますが、これは両者共に連射力が高い審判に優しくない対戦だ!

しかし抽選で決まった対戦、文句は言えない!」

両者がコントローラーを構えた。

マスク・オブ・ミカンは市販のコントローラーに大きな画面を追加したもので、MIOは拳銃型のコントローラーを握った左腕を水平に上げる。

『3、2、1、FIGHT!』

試合開始と同時にカンキツオーは射撃を開始した。

オレンジ色の弾が高速で連射され、ガン・ケルビムがかわした後の空間を通過する。

「まず攻めたのはカンキツオーだ!」

カンキツオーは外した瞬間には射撃を中断し、即座に狙いを修正する。

しかしガン・ケルビムはカンキツオーの射撃が再開される度に身をかわし、オレンジ色の弾は1発も当たらない。

「ガン・ケルビム、見事な回避だ!

しかしこの状況はカンキツオーが優勢!」

司会が言う通り、ガン・ケルビムは反撃する事ができない。

「このまま一方的な試合になってしまうのか!?」

尚もガン・ケルビムは回避を続けるが、少しずつ前進をしていく。

「さあ、消極的と見なされるとペナルティが──」

司会が言いかけた時、ガン・ケルビムが一気に前進してカンキツオーの左脇腹に真横から回し蹴りを叩き込んだ。

「行った!行ったぞ!」

更にガン・ケルビムはバランスを崩したカンキツオーへと両腕の銃から弾丸を浴びせる。

「ダメージポイント10点!

一気に決まった!」

試合終了のゴングが鳴り、弾の散らばるリングでガン・ケルビムは静かに両腕を下ろした。

「愛媛の熱い魂、確かに届いた!

しかし相手が悪すぎた!

MIO選手とガン・ケルビム、余裕の2回戦進出だ!」

会場からのMIOコールを背にMIOはステージを降り、両コーナーに次の選手達が上がってきた。

大会スタッフが散らばった弾を回収する間に選手紹介が始まる。

「さて次は……赤コーナーには全米ランキング1位にして全米大会準優勝、そして全米最強タッグの片割れ!

世界大会出場権は獲得しているが、それでもこの国に挑みに来た!

ゴウ・エルドラ選手!使用機体はキングザウラー!」

リングの赤コーナー側に置かれた恐竜のようなロボットは大きな腕をリングにつけるほどの前傾姿勢になり吠えるようなパフォーマンスをする。

「対するは日本15位、鮫嶋イッペイ選手!

使用機体は鯱をも喰らう名古屋の怪魚、ガルム・ジョー!」

青コーナー側のリングには脚の生えたサメのようなロボットが置かれた。

「さあ、同タイプ同士の対決!どちらが喰われるか!」

司会の言葉の通り、巨大な顎を持つ大型機が向かい合う。

『3、2、1、FIGHT!』

試合開始の合図が鳴り響いたが、両者共に動かなかった。

「おっと、これは開幕からにらみ合いだ!

しかし消極的だとペナルティを取られるぞ!」

司会が煽るがそれでも動きは無い。

「審判から両者にペナルティ1点!

審査員の宮野コウサク氏、これをどう見ますか!?」

「お互いに相手を噛み砕く顎が自慢……捕らえれば勝てる、しかし捕まれば負けるというところでしょうか」

いきなり話題を振られた宮野模型の宮野社長だったが、迷わずに思った通りの事を口にする。

「しかしこのままではお互いに同じポイントのペナルティで審査員判定になりますが、全く動かなければ判定のしようがありません。

そうなれば基準の無い判定……つまり運の勝負です」

「そう、この日本大会は準決勝まで延長戦は無し!

同ポイントで試合終了となった場合は審査員5名による判定となります!」

司会がルールを説明している間にも審判はペナルティを宣言した。

客席からはブーイングが聞こえ始めるが、両者共に全く動かない。

「残り30秒!このまま判定となるのか!?」

お互いにコントローラーにかけた指に力が入る。

「残り5──」

最後のペナルティを受ける直前に動いたのはガルム・ジョーだった。

攻撃さえすればペナルティは避けられ1点差で勝てる、その筈だった。

しかしキングザウラーの肩に噛み付こうとしたその牙は空を切り、逆にキングザウラーの牙がガルム・ジョーの脇腹を捕らえた。

そのままキングザウラーはガルム・ジョーの巨体を持ち上げ、その胴体に亀裂が入るほど顎に力を入れる。

「試合終了!

残り1秒で審判からクラッシュ・アウトの判定が出ました!」

ゴングが鳴り響く中、キングザウラーはガルム・ジョーをリングに下ろした。

「これは審判から説明があります」

「えー、今回ですがバッテリーパックを内蔵している胴体に破損が出たため、発火の危険があると判断しクラッシュ・アウトという扱いになりました」

審判からの説明に、鮫嶋は自らガルム・ジョーを持ち上げ胴体の亀裂を指差して観客に見せる。

「発火上等、これがアメリカのやり口だ!

キングザウラー、2回戦進出です!」

ラスト数秒の豪快な攻防に機嫌を直した観客が歓声をあげる中、ステージに園田が上がってきた。

「さあ、TOMI TVの番組スタッフ、園田カンタ選手の登場だ!

日本ランキング6位のホーンビートルは今回どこまで勝ち進めるのか!」

園田はカブトムシのような角のあるロボットをリングに置く。

「対するは深谷ミク選手のネギタロサン!」




アナウンスを聞きながら烏丸ツバサは控え室でレイヴンの準備を終えた。

「本当、運が悪いよ……初戦の相手がハヤトさんだなんて」

思わず口にする。

2年前の日本大会で初戦敗退となってから、ツバサは過激な戦闘スタイルと果たし合いの過剰なまでの繰返しにより日本ランキング2位に到達した。

しかしそれでも堂守ハヤトのブリューナクには勝てるイメージが持てない。

速さで超えても、まだ足りない。

何かが、足りない。

しかし1回戦で惨敗した2年前の慢心は無く、むしろ相手が相手だからこそ諦めがつくためか敗北の運命を落ち着いて受け入れられている。

ただし敗北するにしても自分に足りないものが何かを確かめる為の戦いが必要だ。

今年が無理でも、また2年後に世界を目指すための糧にするのだ。


一方、堂守ハヤトは観客席で試合を観戦していた。

自分の準備は問題無いし、仮に問題があったとしてもどうにかなるのがブリューナクという機体だ。

3年前に工藤ナナミが作った最高傑作であり、そして重大な問題を抱えた欠陥機──その問題はハヤトならば解決できる。

そう、それは恐らくハヤトでしか解決できない問題だ。

だからハヤトは自らの夢に対する最大の障壁に自らがなる事を選んだ。

叶えるのは自分でなくても構わない、しかしこれは自分にしか出来ない役割──そう思ったからだ。




「ホーンビートルの勝利!

園田カンタ選手、2回戦進出!」

ステージではまた1試合が終わった。

「1回戦は残り2試合!

次の赤コーナーは伏見の奇人、iNari選手!

使用機体はおきつねさま!」

狐の面を被った人物とロボットが共に両手を頭上に上げて相手を指差す挑発ポーズを取る。

「対するは小平アオイ選手!

使用機体はB.B.ベリー!」

対戦相手は和風ベースの衣装のご当地アイドル。

リングに置かれたロボットは横倒しにした小瓶の上に槍を持った小人が乗っているような可愛らしいロボットだ。

客席からの歓声に手を振って応えながらアオイはコントローラーのスティックを倒した。

急加速したB.B.ベリーはゴング前からおきつねさまに襲いかかるが、iNariも予想していたのかおきつねさまは攻撃をかわした。

「B.B.ベリー、相変わらずのフライング!

しかしおきつねさまには当たらない!」

B.B.ベリーは急停止と同時に反転し凪ぎ払うように槍を振るうが、それもおきつねさまはかわす。

そこからの突撃も、すれ違い様の回転攻撃も、全てかわしてしまう。

そうしてるうちに試合終了のゴングが鳴った。

「おきつねさま、ダメージポイント10点でKO勝利!

試合のペースを掴んでいたのはB.B.ベリーだったが、地道なカウンターの蓄積が勝負を決めた!」

iNariとおきつねさまは再び挑発ポーズを取り、客席からはブーイングが飛んでくる。

「さあ、次は1回戦最終試合!

日本ランキング1位と2位の一騎討ちだ!」

会場が本日最高ではないかというほど盛り上がる中、堂守ハヤトと烏丸ツバサがステージに上がった。




登場機体紹介


B.B.ベリー

操縦者 : 小平アオイ

ベース機体 : オリジナル

クラス : ハイエンドクラス

パワー : 2

スピード : 28

レスポンス : 27

モーション : 18

ウェイト : 1

リーチ : 6

バランス : 7

備考 :


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