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リトルヒーローズ  作者: 貫井べる
1章 : BRAVE STORIES
10/12

ROUND 10 : 最速の矛VS最強の矛

ROUND 10 : 最速の矛VS最強の矛




3年半前の冬、工藤ナナミは両親の葬儀を終えたその足でミヤノ本社ビルを訪れた。

最上階で止まったエレベーターを降り、ナナミは一般開放されているホールへと足を運ぶ。

「工藤、お前、どうしたんだ──」

「親が死んだ」

声をかけてきた氷室にそう言い放ち、ナナミはそこにいた少年達の中からハヤトを見つけた。

「ハヤト……私は親の会社を継ぐ」

ナナミは一方的に告げた。

「どうせ最初はうまくいかない……だから何とかなるまでの間、うちの"看板"になれ。

"コレ"を使えば負けない……でも、まともに使えるのはお前だけだ」

そう言ってナナミは1台のロボットを差し出した。


その日、堂守ハヤトは夢を捨てた。




「さあ、いよいよお待ちかね!

1回戦ラストにとんでもない組合せが来ましたが、これは抽選!偶然──」

司会の言葉は歓声にかき消された。

それでも司会は声を張り上げる。

「赤コーナーはかつての"神童"!

2年前の惨敗の後は落ちるところまで落ちたが、それが逆に悪ガキ共を惹き付けた!

そして何より、数多の果たし合いを征したその実力は間違いなく本物!

日本ランキング2位にしてチーム・ブラックウイングのリーダー!」

スポットライトがステージの一方を照らす。

「烏丸ツバサ選手!

使用機体、レイヴン!」

ツバサはリングに漆黒の愛機を置く。

「迎え撃つはデビューから無敗の世界チャンピオン!

3年前、日本大会へと続く全国の地区予選全てで優勝しランキング1位の地位を約束された男!

そしてあのジャック・ブラッドリーの世界大会3連覇を阻止した実力者!」

ステージのもう一方をスポットライトが照らした。

「堂守ハヤト選手!

使用機体、ブリューナク!」

ハヤトは西洋式の甲冑のようなデザインの青いロボットをリングに置いた。

その右腕は長い槍になっている。

「楽しみにしてるよ、ツバサ君」

ハヤトはリング越しにツバサに声をかけた。

「敗北は、誰の元にも公平に訪れる。

この試合でそれが見られるといいな」

「本当はわかっていますよね……俺じゃあまだ貴方に届かない事」

ツバサが言い返すが、ハヤトは否定する。

「いいや、わからない……考えの及ばない事が絶対に無いとは言い切れない。

君達みたいに強者に必死に食らい付く存在は、時に実力差をひっくり返す。

その可能性が無いなら……本当に結果が見えていたなら、楽しみだなんて思わないよ」

ハヤトは本心で口にした。

「勝つ前に勝ちを確信したなら、それは相手の可能性を否定するという事だ。

僕は、可能性を信じるよ」

ハヤトがコントローラーを手にし、ブリューナクが槍状の右腕を引いて身構える。

「……こちらの考えを改めましょう。

その可能性、確かに否定してはいけませんね」

ツバサもコントローラーを手に取り、レイヴンは両腕を軽く広げ低く構えた。



控え室では他の選手達がスクリーンに映るリングの様子に注目していた。

「犬飼、これどう思う?」

火向の問いに犬飼は答えた。

「いや、今日はまだ無理です。

最高速じゃレイヴンが上でも、ブリューナクは常時トップスピードが出せる。

トップスピード出すのに1秒弱の電力チャージが必要なレイヴンじゃ、そんないきなり勝てる相手じゃありませんよ」

「それじゃあやっぱり」

「ええ、真正面から正々堂々……純粋な実力差を確かめに行く。

今は負けるとしても、次で勝つつもりです」

「確かに、ツバサならハヤトの全力を出せるかもな」

氷室も犬飼の意見に概ね同意のようだ。

「あいつの全力は過去に2回……世界大会でジャックさんとMIOと戦った時。

3年前の北海道統一大会の決勝も、火向が『新型のテスト』を中断してれば本気が見れたかもな」

「あの時もハルートしかエントリーしてなかったからな」

火向ははっきりと答える。

「どちらにしても、実際に向き合った方が相手との差はわかりやすい。

ツバサだってわかってる……どれだけ情報があっても勝てる確信が無いなら自分の目で確かめるだろ」



『3、2、1──』

静まり返った会場に試合開始のカウントが響き、そして、

『FIGHT!』

試合開始とほぼ同時にブリューナクとレイヴンが飛び出した。

背面ユニットからの風圧で圧倒的なスピードを生み出すレイヴンに対し、ブリューナクは反応の早さと加速力で上回る。

結果として両者はリング中央で交錯し、わざと弾かれたレイヴンがブリューナクを飛び越えてその背後に着地した。

そのレイヴンの背中をブリューナクは振り向き様に右腕の槍を伸縮させて狙うが、レイヴンもまた旋回しながらのサイドステップで回避すると同時にブリューナクとの距離を詰めて爪を突き立てる。

槍を引っ込めて防御したブリューナクはレイヴンの攻撃の威力を利用して距離を取るが、レイヴンは再び背面ユニットからの噴射で加速してブリューナクにぴったりついていく。

ブリューナクは急停止と同時に機体を傾けながら踏み込み、一瞬停止が遅れたレイヴンにヘッドバッドを見舞った。

更に回転したブリューナクはふらついたレイヴンの側頭部に槍の側面を打ち付ける。

吹き飛ばされるレイヴンだったがブリューナクの槍に爪を引っ掻けており、攻撃を受けた勢いでブリューナクを引っ張って転倒させた。

その瞬間にレイヴンは弱めの噴射で崩れた姿勢を強引に立て直し、ブリューナクの頭部へと爪を突き出す。

しかしブリューナクは長く伸ばした槍をリングに叩き付けた反動で起き上がり、旋回しながら槍の柄の先端でレイヴンの爪を防いだ。

「さあ、開始5秒で早くも──」

司会に話す隙すら与えず、僅か1秒の硬直で両者は互いを弾き飛ばし距離を取る。

すぐに急停止するレイヴンだったが、既にその目の前へとブリューナクは踏み込んでいた。

しかしレイヴンはブリューナクの槍が突き出されるよりも早くその間合いの内側へと踏み込み、先程のお返しとばかりにヘッドバッドを打ち込む。

更にレイヴンはブリューナクを蹴り上げ、宙に浮かせたブリューナク目掛け至近距離から最高速で飛び上がる。

その渾身の一撃を槍で防いだブリューナクだったが防御ごと弾き飛ばされてしまうが、それでも長く伸ばした槍の先端をリング際のフェンスに叩き付けて軌道を変えリングアウトを防いだ。

先に着地したレイヴンはブリューナクの落下点に向かって大きく踏み込んでいくが、ブリューナクは槍でリングを軽く突いて落下の位置とタイミングをずらしレイヴンの背後に着地する。

そしてブリューナクは伸ばしていた槍を縮め、それにより肘側から突き出る槍の柄でレイヴンの背中を突いた。

レイヴンもその一撃を防御するが、ブリューナクはそのレイヴンの爪を跳ね上げるように弾いて防御をこじ開け、胴体への回し蹴りでレイヴンを突き放して距離を取ると大きく踏み込みながら槍を突き出した。

鋼鉄製の槍による刺突は刃こそ無いが、その一撃をまともに受けて吹き飛ばされたレイヴンの左肩フレームが抉れてしまう。

しかしレイヴンはフレームが抉れた事で衝撃が逃げて弾き飛ばされず、逆にブリューナクの槍が延びきっているうちにその懐へと踏み込んだ。

ついにレイヴンの爪がブリューナクの頭部を捉えた。

金属音と共にブリューナクが弾かれ、頭部の青い塗装に傷がつき金属の下地が露出する。

更にレイヴンは最高速でブリューナクに飛びかかるが、姿勢を崩したままのブリューナクがレイヴンを蹴り上げた。

「試合終了!」

ゴングが鳴り、18秒の激闘が終わった。

「ダメージポイント10-7でブリューナクの勝利!

日本ランキング2位が早くも敗退だ!」

自らの敗北を宣告されたツバサは無言でレイヴンを回収する。

しかしハヤトはそんなツバサに声をかけた。

「惜しかったね……あと少しで首が飛んでた」

「その少しが届かなかった、それが現実ですよ」

ツバサは勝敗に不服は無い。

「MIOは25秒持ちこたえて、9点を取った。

それにすら届かなかったのが現実です」

「でも確かに可能性はあったよ。

また次が楽しみだね」

ハヤトはリングを迂回してツバサに歩み寄り、手を差し出す。

「……まだ貴方に届く未来すら見えなかった。

次回はそれが見えると良いのですが」

ツバサはハヤトと握手した。




1回戦が終わり、ステージ上のスクリーンにトーナメント表が映し出された。


第1試合

アルゼル/工藤ケンイチ

ハルート/火向トウキ


第2試合

アイゼン/金山アキト

ケット・シー/猫村マイカ


第3試合

くーぱー/のなめ

はいぱー以下略/トワノミライ


第4試合

BLAZE GEAR 紅蓮/桜木ボタン

もず吉/Mr.NO CAMERA 2代目


第5試合

くっしーさん/北里クウ

コロロ/深山フブキ


第6試合

たこやン/蛸壺仮面

ガン・ケルビム/MIO


第7試合

キングザウラー/ゴウ・エルドラ

ホーンビートル/園田カンタ


第8試合

おきつねさま/iNari

ブリューナク/堂守ハヤト



観客席に座っていた氷室の隣にハヤトが腰かけた。

「強かったよ、ソウヤのところのリーダー」

「でもお前が勝った……あのデタラメなスペックで」

「そうだね」

ハヤトは氷室の言葉を否定しない。

「ブリューナクは強すぎる……僕達が倒したかった相手そのものだよ」

ハヤトは寂しそうに笑う。

「でも、君達ならやってくれる……僕が夢見た勝利を、君達なら見せてくれる」

「勝手に言ってろ……俺達も勝手にやる。

お前の願いなんて知らねえよ」

氷室はハヤトを突き放すように告げ、立ち上がった。

「工藤ケンイチ……あいつかMIOの方がお前に近くないか?」

「ああ、彼らはダメだよ」

ハヤトは断言した。

「彼らは僕の代わりにしかならない。

君達が勝たなければ意味は無いんだ」

「そうかよ」

氷室はそう言って立ち去った。




登場機体紹介


ブリューナク

操縦者 :堂守ハヤト

ベース機体 : アクセルギア・アドバンスド

クラス : ハイエンドクラス+

パワー : 10

スピード : 32

レスポンス : 28

モーション : 23

ウェイト : 5

リーチ : 8

バランス : 4

備考 :


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