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リトルヒーローズ  作者: 貫井べる
1章 : BRAVE STORIES
8/12

ROUND 08 : 光と影

ROUND 08 : 光と影




「これは決まった!」

黒い巨体が宙に舞い、リング外へと落下する。

「愛知の鉄人、初戦で散った!

勝負を制したのは東北のアイゼンだ!」

リングに残っていた20cmを超える大型のロボットがゆっくり拳を下ろした。

「金山アキト選手、3年目にして初の日本大会、初戦突破だ!」



「さ、ウチらの番ですな」

ヤエはゆっくりとステージに上がった。

客席から歓声が上がり、司会が更に会場を煽る。

「4年前に大旋風を巻き起こしたあの桜木姉妹が帰ってきた!

2年前から受験を理由に大会不参加でしたがついに復帰!

今年は審査員推薦となったが、誰も文句は無い筈だ!

桜木ヤエ選手、使用機体はBLAZE GEAR 絶火!」

ヤエは頭部の無い武骨な白いロボットをリングに置く。

「対するは激戦区の西東京大会で優勝というデビューを飾ったニューヒロイン!

猫村マイカ選手、使用機体は──」

ステージに上がったマイカはケット・シーをリングに投げ込んだ。

そのままケット・シーは右腕を伸ばして絶火の胴体に爪を食い込ませた。

「ああ!これは──」

司会の声が会場に響く中、ケット・シーは右腕を縮める勢いに乗って左腕の爪を絶火に叩き付ける。

そのまま絶火はリング外へと弾き飛ばされてしまった。

更にケット・シーはリングから飛び出すと絶火に執拗な連打を浴びせた。

「そこまでだ!」

審判がマイカを止める。

「桜木ヤエ選手、試合への参加は……」

ヤエは片腕を失い胴体も傷だらけの絶火をリングに戻しコントローラーを操作するが、絶火は動かない。

「……ダメみたいです」

「これは酷い!ゴング前のクラッシュアウトだ!

猫村マイカ選手、そんな勝利でいいのか!?」

司会の言葉を合図に客席からブーイングが浴びせられる。

しかしケット・シーはそんな観客を挑発するように右腕を客席に向けた。

「勝ちは勝ち、でしょ?」

マイカの挑発的な言葉に更にブーイングが飛び交った。



「はああああああああああ……」

選手控え室でヤエは大きなため息を吐いた。

「ウチらの時代、もう終わったんでしょか……」

「アホか、そもそも来てもいませんわ」

ボタンは自分の紅蓮を手にする。

「まだウチがおるやないの……新人共をわからせたりますわ」

ボタンは凹むヤエを置いてステージに向かった。

「日本中親戚中たらい回しにされて、やっと手に入れた居場所ですからなぁ……」



リングにアザラシのようなロボットが置かれた。

「さあ、赤コーナーは……TAMAちゃん今日も可愛いぞ!」

司会の言葉と客席からの歓声を待っていたかのようにアザラシのボディーが割れ、大きな腕の二足歩行の姿に変わった。

「ダメだ!今日も変形した!

やっぱり可愛くない!」

客席からの歓声は一気にブーイングへと変わる。

その毎度恒例のやり取りを無視するかのようにボタンは静かにステージに上がった。

「対する青コーナーは桜木ボタン選手、BLAZE GEAR 紅蓮です!

4年前の桜木姉妹ブームから生まれた新世代のパワーファイターの1人を相手にどこまで通用するのか!」

「へぇ……ウチらを見てきた世代なんですか……ま、宜しく頼みますわ」

ボタンはヤエの絶火と全く同じ機体である紅蓮をリングに置いた。

対戦相手のもぶ・さっぷはヘッドマウントディスプレイをつけた表情のわからない顔でお辞儀をする。

『3、2、1、FIGHT!』

試合開始と同時にTAMAちゃんと紅蓮は飛び出し、そしてリング中央で互いの巨腕が激突した。

互いが互いの攻撃の衝撃で弾き飛ばされる。

「これは互角だ!」

司会はそう叫ぶが、急停止する紅蓮に対しTAMAちゃんは先にリングを蹴って反撃に転じる。

しかし紅蓮はあえてその場で腕を構え、そして突っ込んできたTAMAちゃんへと踏み込みながら腕を突き出した。

十分に加速していたTAMAちゃんだったが、リングを踏みしめた紅蓮の一撃で吹き飛ばされてしまう。

そこから紅蓮は更に追撃しようと前進するが、TAMAちゃんはすぐに急停止しまだ追撃が間に合わない紅蓮の胴体にその巨腕を打ち込む。

今度は紅蓮が弾かれかけるが、紅蓮は構わず逆にTAMAちゃんを押し込みながら一撃をねじ込んだ。


観客を魅了する小細工無しのノーガードでの殴り合いの果て、試合終了のゴングが響く。

「試合終了!勝ったのはBLAZE GEAR 紅蓮だ!」

紅蓮はリング中央で腕を高く突き上げた。

「桜木ボタン、ここに健在!

まさしく真っ向勝負だ!」

対戦相手のもぶ・さっぷ選手は一礼すると無言でステージを降りる。

そして入れ替わるように神楽坂リカがステージに上がった。

「さあ、次は前半ラスト!

赤コーナーには日本ランキング8位の神楽坂リカ選手!

使用機体はD-レックスだ!」

左目に眼帯をしたリカは工作機械で小指を失った左手で恐竜のようなロボットをリングに置く。

「なお毎度のお知らせですが、神楽坂リカ選手の手の怪我は工作機械によるもので、反社会的な団体との関連性はありません」

いつものアナウンスにリカは左手を振る。

「リカ選手は既にアメリカ大会で優勝し世界大会出場権を得ていますが、それでもこの日本大会に挑みます!

そんな彼女を迎え撃つのは日本ランキング7位でありリトルヒーローズカップ創設者の1人!

Mr.NO CAMERA 2代目!」

青コーナー側には頭に紙袋を被った男が現れた。

その額には『NO CAMERA』と書いてある。

「初代がいたのかも不明の自称2代目!

本人は顔出しNGだが使用機体のもず吉は撮影可だ!」

Mr.NO CAMERAは小鳥の人形のようなロボットをリングに置いた。

「さあ、ランキング7位と8位の対戦だ!

現在、ランキングポイントの差は僅差!

リカ選手が勝てばランキング順位が入れ替わる──」

その時、もず吉がゴング前から動き出した。

しかしその速度はかなり遅く、一瞬反応の遅れたD-レックスとリング中央で交錯する。

D-レックスは巨大な顎でもず吉に噛み付こうとしたが、もず吉は小さな羽をその口にねじ込んだ。

その瞬間、D-レックスの下顎が外れてしまった。

その光景に会場内は静まり返る。

「まだやれるのかい?」

Mr.NO CAMERAのその挑発にリカは激昂した。

「調子に乗るな!」

D-レックスはその場で旋回し太い尾をもず吉へと叩き付けようとする。

しかしもず吉がD-レックスから距離を取った瞬間、D-レックスの左脚が根本からもげてしまった。

「剛力の大顎も、鋼の刃も、相手を破壊するには過剰すぎる」

Mr.NO CAMERAはリカではなくステージ下にいる犬飼に視線を向けた。

「そんな付け焼き刃の力でこのステージに上がるなら、それ相応の敗北が待っているものと思え」

「そいつは余計なお世話だな」

犬飼はステージに上がり、リカの前に立つ。

「さあ、1回戦はここから後半戦!

まず赤コーナーはチーム・ブラックウイングの狂犬!

犬飼ケンジ選手とアヌビスだ!」

客席から歓声とブーイングが飛ぶ中、青コーナーにも相手選手が上がってきた。

「そして青コーナーには8年前の世界チャンピオン!

未だ国内外で敗北した相手は2人だけ!

北の女王、北里クウ選手だ!」

今度はブーイングの無い大歓声が客席から溢れた。

「使用機体のくっしーさんも未だ現役!

犬飼選手はこの強敵にどこまで通用するのか!?」

「言ってくれるねぇ……」

犬飼はリングにアヌビスを置いた。

「そういうのがオイシイんだよ」

「いいね、そういうの……倒しがいがありそうだ」

クウもまたリングに怪獣のような愛機を置く。

『3、2、1、FIGHT!』

試合開始と同時に両者はリング中央へと突っ込んだ。




日本大会が順調に進行しているちょうどその頃、ブラックローズ社のオフィス。

社長であるネロ・クロノワール・ブラックの他に2人の男が集まっていた。

1人はマーゲイ・グリント。

先日の襲撃事件の実行犯の大男だ。

もう1人はサーバル・グランツ。

研究と開発が専門の男だ。


「さてさてさて、準備は万全かな?」

ネロは愉快そうに2人に話しかける。

「バックアップ用のゴーストは指示通りの場所に待機しています」

マーゲイはそう報告した。

「万が一の時はすぐに動けます」

「彼女の方も客席で待機しています。

いつでも動けます」

サーバルもまた状況を報告した。

「とはいえ、今はまだ動きませんが」

「にゃっはっは、その通り。

我々が動くのは全ての試合が終わった後。

今はゆっくり観戦しようではないか」

ネロは上機嫌そうに笑う。

「今日の我々は別に乱暴な事がしたい訳ではない……平和的な宣伝がしたいだけ。

大会はきっちり終わらせてあげて、動くのはその後だ」

ネロ達3人の視線の先には大きなモニターがあり、試合の様子を映していた。

「ワタクシの予想ではまだ烏丸ツバサは堂守ハヤトに勝てない……そうなれば後半戦は見るまでも無い。

堂守ハヤトが優勝、MIOが3位は確実だろう。

問題は前半戦……どう見る?」

「火向トウキが工藤ケンイチを下せばそのまま決勝までいけるでしょうね……金山アキトも桜木ボタンも勝ち残りはしても火向トウキで止まってしまう。

しかし工藤ケンイチの機体はあの堂守ハヤトのブリューナクと同じで工藤ナナミの作品……火向トウキが必ず勝てるとは思えません」

「しかし工藤ケンイチでは金山アキトを突破できない。

そうなれば準決勝は金山アキトと桜木ボタン……どちらが勝っても決勝と3位決定戦は堂守ハヤトとMIOが勝ちます」

サーバルもマーゲイも同意見だ。

「君達はそう見るか……ワタクシはそこまで予想できていない」

ネロはそう口にする。

「やはり君達を雇って正解だったよ……いずれワタクシがいなくなっても、君達のどちらかが残れば目的は達成できるだろう」

ネロは笑う。

このままなら彼女の計画は全て順調に進むだろう。



同時刻、日本大会の会場。

その少女は観客席に座り、静かに試合を観戦していた。

そんな彼女の耳の後ろには、ゴーストを操縦する為の脳波コントローラーがかけられていた。




登場機体紹介


もず吉

操縦者 : Mr.NO CAMERA 2代目

ベース機体 : オリジナル

クラス : スタンダードクラス-

パワー : 1

スピード : 1

レスポンス : 1

モーション : 2

ウェイト : 1

リーチ : 1

バランス : 1

備考 :


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