ROUND 07 : 氷の帝王
ROUND 07 : 氷の帝王
その日、その会議室にはリトルヒーローズカップの運営メンバーが集まっていた。
「あれ以来、ネロ氏に動きはありません」
TV監督のテオ・ストラトスが口にする。
彼は幕張で襲撃を受けた当事者の1人だ。
「おかげで今日この日を無事に迎えられました」
「今日も引き続き、ネロ氏が仕掛けてこないか警戒します」
そう話すのはスタッフの園田カンタ。
彼もまた襲撃を受けた当事者であり、何より直接攻撃され傷を負っている。
そして他にも多数の男女が続く。
「警戒するだけして空振りならばそれで良い……我々が屈しない事が大事ですから」
「今日を乗り切り、今度の世界大会も無事に終わらせなければなりません」
「そう、今日を……日本大会を無事に成功させなければ」
お台場にあるその科学館に日本中から人々が集まっていた。
リトルヒーローズカップ日本大会──世界大会への参加権を賭けたその大会に日本中が注目していた。
「さあ、年に1度の日本大会が始まりました!
今年は2年に1度の世界大会への参加権が上位3名に与えられるとあり全国の強豪が集まっています!」
司会の声がホールに響き、観客から歓声が上がった。
「早速、オープニングマッチとなる1回戦第1試合を開始しましょう!
まずは赤コーナー、先日のタッグマッチトーナメントでデビューした期待の新人!
工藤ケンイチ選手の入場です!」
ケンイチはアナウンスに従いステージに上がった。
「本日明かされた機体名はアルゼル!
必殺の拳は今日も見られるのか!」
歓声の中、ケンイチはステージ中央のリングの手前に立つ。
「対する青コーナーは氷室ソウヤ選手!
日本ランキング元9位、ランキングポイントの剥奪処分後も40位まで戻ってきた実力者だ!」
氷室がステージに上がると客席からはブーイングが飛んできた。
「使用機体はマルート!
あのレイヴンとブリューナクに続く高速戦で今年はどこまで勝ち上がるか!」
ブーイングの嵐にも動じることなくリング際で立ち止まった氷室は、先にマルートをリングに置いた。
「おっと、氷室選手どうした!
先に試合準備をするなんてらしくないぞ!」
司会も観客も困惑する中、氷室はコントローラーを手にする。
リング内のマルートが左腕の剣をケンイチへと向けた。
それに応えるようにケンイチもアルゼルをリングに置く。
マントを纏った青い仮面のマルートと赤い外装のアルゼルとが対比のように向き合う。
「これは2人とも準備万端だ!
しかし審判の紹介を先にさせてもらう!」
審判がステージに上がりリング後方に立った。
「審判はやはりこの男!ミック!」
客席から再び歓声が上がる中、審判は問う。
「準備はいいですか?」
ケンイチと氷室が頷き、審判は宣言した。
「それでは1回戦第1試合を始める」
『3、2、1──』
試合開始のカウントが始まる。
『FIGHT!』
試合開始と同時にアルゼルとマルートがリング中央へと飛び出した。
「さあ、早くも激突だ!」
先制はマルートで、その剣をアルゼルは鉄の拳で受け流す。
そのまま2台は交錯し、急停止と同時に振り返る。
今度はアルゼルの攻撃が一瞬早く、マルートが防御する流れになった。
アルゼルは拳を突き出したまま前進しマルートを防御ごと押し込み、そこから急停止してマルートを突き放すと間髪入れずに追撃の拳でマルートのガードを崩した。
そこに更に一撃を入れようとしたアルゼルだったが、拳はマルートの右肩を素通りしてしまった。
「右腕が無い」
ケンイチは即座にマルートのマントの下の構造を見抜く。
しかしその1回の空振りだけでも氷室には十分だった。
マルートの剣の強烈な一撃がアルゼルを襲い、ギリギリ間に合ったガードごと弾き飛ばしてしまった。
更にマルートは加速をつけアルゼルの頭部へ剣を突き出す。
リング際で立ち止まったアルゼルは頭部にマルートの剣を受けながらも拳を突き出した。
マルートの剣は確かにアルゼルの頭部に触れていたがアルゼルは頭部を完全には破壊されない程度にかわしており、外装の一部を抉り取られただけだった。
対するマルートはアルゼルの反撃の拳を胴体にまともに受けてしまい、リングの反対側まで吹き飛ばされてしまった。
「クラッシュアウトならず!
アルゼル、紙一重の差で頭部破壊を免れた!」
司会の言葉が会場を盛り上げるのとは裏腹にアルゼルとマルートはリング際で立ち止まってしまった。
控え室では他の選手が試合の様子を見ていた。
「ソロの氷室に速さでついてこれるとか、嫌な相手だよな……」
火向は次の試合だというのにコンビニで買ってきたうどんを食べていた。
「おまけにここで追撃せず待つ判断ができる……これは2回戦の相手は決まったな」
「でも火向さん、初戦は勝てそうな相手なんですか?」
犬飼の問いに火向は答える。
「ああ、うどんさんだし」
それは松山大会で優勝した赤井レンの事だ。
だがその相手とは──
「ランキング3位の人じゃないですか……何で余裕なんですか」
犬飼もすぐにそう答えられる程、その相手は有名だった。
「もしかして紅朱雀を出すんですか?」
「いや……アレは暫く使う気は無いよ。
今回の大会もハルートしかレギュレーションチェック受けてないし」
食べ終えたうどんの容器を袋に詰め、火向はハルートを手に立ち上がった。
「やっぱり、勝ち負けがわからないくらいが一番楽しいんだよ。
今の俺はチーム・ブラックウィングの4番手……そのくらいがちょうどいい。
それでも勝つつもりだよ」
そのまま火向は次の試合の準備に向かった。
「さあ、残り時間は1分を切った!」
アルゼルとマルートが睨み合ったままのリングに司会の声が響く。
「審判から両者に再度の警告!
ペナルティによりポイントは6-5!
依然としてアルゼルのリードだ!」
その状況でケンイチは考えた。
現在、お互いに攻撃を行わない事で30秒ごとに1ポイントのペナルティを受け続けている。
このまま時間切れになればケンイチの勝ちになる状況であり、氷室は時間内に攻撃しなければ自動的に敗北が決定する。
ならば氷室は確実に攻めてくるが、そのタイミングだ。
恐らく残り時間僅か、ギリギリでリードして逃げ切る事を狙ってくる。
「残り30秒!更にペナルティ1点!」
今はまだマルートは左腕の剣を引いたカウンターの構えだ。
先に動けば不利になる。
だが、マルートのスピードに対しまともにアルゼルのカウンターを合わせても間に合わない。
狙うは──
「残り10秒!」
その瞬間、マルートが最高速で飛び出した。
ほんの一瞬だけ遅れてアルゼルが踏み込みながら拳を突き出すが、マルートは一瞬減速しアルゼルの拳へと剣を叩き付ける。
アルゼルはその剣を逆に弾いた。
その瞬間、マルートは弾かれた勢いで機体全体を横へ一回転させ、のびきったアルゼルの右腕を切断した。
「マルートの神速のカウンターが──」
司会の言葉が終わるより早くアルゼルはマルートを蹴り飛ばし、バランスを崩したマルートへと突進しリング外へ押し出した。
「決まっ……いや、ここで試合終了だ!」
試合終了のゴングが鳴り響いた。
「両者リングアウトで11-9!
工藤ケンイチ選手!アルゼル!あのマルートのカウンターを受けながらも競り勝った!」
歓声の中、氷室はマルートを回収するとリングに背を向けた。
「じゃ、次も頑張れよ」
氷室はその言葉を残し、早々にステージから降りてしまった。
司会は早々に次の話題へと進む。
「さあ、オープニングマッチを終えたところで観客の皆様にも本日のトーナメントをお見せしましょう!」
ステージ後方のスクリーンにトーナメント表が映し出された。
第1試合
アルゼル/工藤ケンイチ/ランク外
タッグマッチ稲城大会優勝
マルート/氷室ソウヤ/40位
タッグマッチ嵐山大会優勝
第2試合
ハルート/火向トウキ/ランク外
タッグマッチ嵐山大会優勝
うどん丸/赤井レン/3位
松山大会優勝
第3試合
にーはち/愛知ショウタロウ/28位
名古屋大会優勝
アイゼン/金山アキト/21位
長井大会優勝
第4試合
BLAZE GEAR 絶火/桜木ヤエ/ランク外
審査員推薦
ケット・シー/猫村マイカ/ランク外
西東京大会優勝
第5試合
くーぱー/のなめ/9位
佐世保大会準優勝
ニュートリオンB/チームひだかみ2/23位
飛騨神岡大会準優勝
第6試合
はいぱー以下略/トワノミライ/33位
草加大会準優勝
ニュートリオンR/チームひだかみ5/31位
飛騨神岡大会優勝
第7試合
TAMAちゃん/もぶ・さっぷ/10位
西東京大会準優勝
BLAZE GEAR 紅蓮/桜木ボタン/ランク外
審査員推薦
第8試合
Dレックス/神楽坂リカ/8位
浅草大会優勝(全米大会優勝)
もず吉/Mr.NO CAMERA 2代目/7位
審査員推薦
第9試合
アヌビス/犬飼ケンジ/20位
川崎大会準優勝
くっしーさん/北里クウ/5位
北海道統一大会準優勝
第10試合
コロロ/深山フブキ/ランク外
北海道統一大会優勝
ビクトリーヴァンガードNC/テオ・ストラトス/4位
TOMI TV杯優勝
第11試合
アップルロボG/スーパーりんごマン/45位
長井大会準優勝
たこやン/蛸壺仮面/18位
難波大会準優勝
第12試合
カンキツオー/マスク・オブ・ミカン/12位
松山大会準優勝
ガン・ケルビム/MIO/ランク外
川崎大会優勝
第13試合
キングザウラー/ゴウ・エルドラ/ランク外 (全米ランキング1位)
佐世保大会優勝 (全米大会準優勝)
ガルム・ジョー/鮫嶋イッペイ/15位
名古屋大会準優勝
第14試合
ホーンビートル/園田カンタ/6位
TOMI TV杯準優勝
ネギタロサン/深谷ミク/39位
草加大会優勝
第15試合
おきつねさま/iNari/11位
難波大会優勝
B.B.ベリー/小平アオイ/13位
浅草大会準優勝
第16試合
レイヴン/烏丸ツバサ/2位
タッグマッチ稲城大会優勝
ブリューナク/堂守ハヤト/1位
審査員推薦
「さあ、次の試合といきましょう!」
司会の声を聞きながらケンイチはステージを降り、ステージに上がる火向とすれ違った。
「次の相手がどっちか、よく見ておけよ」
火向はそうケンイチに声をかけた。
登場機体紹介
マルート
操縦者 : 氷室ソウヤ
ベース機体 : ソニックギア・スタンダード
クラス : ハイエンドクラス
パワー : 4
スピード : 30
レスポンス : 25
モーション : 18
ウェイト : 1
リーチ : 4
バランス : 1
備考 : 凶器使用あり




