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リトルヒーローズ  作者: 貫井べる
1章 : BRAVE STORIES
6/12

Round 06 : 最強の矛vs新たなる矛

Round 06 : 最強の矛vs新たなる矛




ガン・デュミナスの頭部がリング外に落ちた。

「あーっと!ここでガン・デュミナスがクラッシュアウト!」

司会が無情にも現実を告げる。

交錯したレイヴンとアヌビスは振り返りながら停止し、ケンイチのロボットに狙いを定めた。

「ツバサ!」

「ああ、このまま決める」

ツバサと犬飼はそのまま決めるつもりだ。

「クロス・ブレイド!」

再びタイミングを合わせたレイヴンとアヌビスの凶刃が、今度こそケンイチのロボットを襲う。

しかしケンイチもまたタイミングを合わせて横へ踏み込みながら機体を回転させた。

ケンイチのロボットはアヌビスのブレードをかわし、その後頭部に右の拳を叩き込む。

次の瞬間、レイヴンの爪とケンイチのロボットの拳がアヌビスの首を挟み切った。

「これは──」

司会の言葉が止まり会場も静まり返る中、アヌビスの頭部がリングに落ちる。

「返した!あのクロス・ブレイドを返したぞ!」

司会の言葉で会場に歓声が戻った。

「絶対無敵の一撃必殺がついに破られた!

そして勝負は1対1だ!」

ケンイチのロボットもレイヴンもそれぞれリング際まで下がり、互いに様子を伺う。

「しかしこの大会はクラッシュアウトしたロボットはリタイア!

どっちが勝ってもパートナー無しで次の試合に出なければならないぞ!」

司会のその言葉に対しリング際から声があがった。

「タイムを申請する!」

そう宣言したのは犬飼だった。

「両者、試合を中断!」

審判の指示でケンイチもツバサもコントローラーのタイマーを止めた。

「おっと、ここでチーム・ブラックウィングAからタイムの申請だ!

そして何か、マイクの要求をしている!」

審判が犬飼にマイクを渡し、犬飼は話し始めた。

「今、リング上で戦えるのは2台。

どっちが勝っても次の試合は1台で出ないといけない。

だったら、今動けない2台の操縦者がリタイアして残り2人で次の試合に出るってのはどうだ?」

「おっと、まさかの提案だ!

審査員、これは許可されますか!」

司会から話題を振られ審査員の四条氏が答えた。

「参加エントリー済みかつリタイアしていない選手であればパートナー交換を否認するルールは存在しない。

よって許可されるべきと判断します」

「聞いたか観客!」

犬飼が客席に問う。

「次の試合で2対1のしょうもない試合を見るか、2対2の試合を見るか!

そんなの決まってるよなあ!」

観客は歓声で犬飼に応えた。

「そういう事だ。

お前達はどうする?」

「あ、俺はいいです」

犬飼の提案をケンイチは断った。

「優勝とかどうでもいいですし」

「私は賛成」

ケンイチを無視しMIOは頭部を失ったガン・デュミナスをリングから回収した。

「断れる状況じゃないじゃない」

「決まりだな」

犬飼もまたケンイチの意見を無視した。

「試合終了!

チーム・ブラックウィングAはアヌビスを失ったものの、MIO選手へのリベンジは果たした!」

司会も試合終了を宣言した。



「さあ、準決勝!

まずはパートナー交換を行ったチーム・ブラックウィングAの入場!」

ケンイチはツバサと並びステージに上がっていた。

「対するは沖縄のバーチャルアイドル、シーサーズです!」

リング後方のスクリーンに2人のバーチャルアバターが映し出された。

セコンドが2台のロボットをリングに置く。

「それでは試合開始です!」

『3、2、1、FIGHT!』

試合開始の合図とほぼ同時に1台のロボットがリング外まで殴り飛ばされた。

「あー!いきなりリングアウトだ!」

ケンイチは更にもう1台も殴り付ける。

殴られたもう1台はレイヴンの目の前に転がり、レイヴンはその頭部を足蹴にした。

「ダメージポイント10点先取!

試合終了だ!」

「ツバサさん、今回は壊す気が無かったんですね」

「ああ、彼女達はまともな選手……壊さずに勝てるならそれでいい」

ケンイチの問いにツバサはそう答えた。



「準決勝第2試合、赤コーナーはTOMI TVより代表コンビ!

テオ監督と園田カンタ選手!」

ステージに上がったのは監督と園田だ。

「青コーナーはチーム・ブラックウィングB!

氷室ソウヤ選手と火向トウキ選手!」

今度は氷室と火向がステージに上がる。

「さあ、これは日本トップレベル同士の試合!

日本ランキング4位と6位の代表コンビに対し、現在は40位とランク外とはいえ元9位と元1位!」


「……どっちが決勝でも大変そうですね」

ケンイチはツバサに問う。

「そちらのチーム同士で当たった時はどうするんですか?」

「手加減不要、ぶっ壊せ……そういう取り決め」

ツバサはそう答える。

「俺達の中じゃ氷室さんと火向さんがタッグとしては一番強いね。

クロス・ブレイドは元々は氷室さんの技だし、火向さんも専用機を用意するくらいタッグ戦に力を入れてる。

技の練度は俺と犬飼より上だ」

「そうなんですね……」

ケンイチには何か考えがあるようだった。


『FIGHT!』

試合開始と同時に4台が一斉に飛び出す。

マントを纏った左右対象の赤いハルートと青いマルートが剣を振り上げ、市販機のビクトリーヴァンガードそのままの機体はホーンビートルを盾にするように突撃する。

ホーンビートルが前進しながら角の連打を始めた瞬間、ハルートとマルートは左右に別れ攻撃をかわす。

その瞬間、氷室のマルートの正面にビクトリーヴァンガードが飛び出してきた。

マルートが左腕の剣を振るい、ビクトリーヴァンガードは僅か1歩の後退でそれを避け次の1歩で踏み出すとマルートを殴る。

攻撃は浅かったもののマルートは姿勢を崩し、そこにもう1撃の打撃を打ち込まれてしまった。

「ビクトリーヴァンガードNC(ノーカスタム)の連打だ!」

司会が叫ぶ中、ビクトリーヴァンガードは更に拳を打ち込もうとする。

しかしホーンビートルの角と打ち合いをしていたハルートがホーンビートルの脇をすり抜け、ビクトリーヴァンガードの背中に斬りつけた。

ビクトリーヴァンガードは振り向き様に腕を振り上げハルートの剣を弾く。

樹脂の腕だが的確に剣の側面を叩いており、目立った傷はつかない。

しかしその一瞬のうちにマルートはビクトリーヴァンガードの間合いから抜け出し、ホーンビートルへと斬りかかった。


ケンイチとツバサは控え室のモニターで試合を見ていた。

「氷室さんが一番速いけどこの4人では技量で負けてる……でも、火向さんのカバーは完璧」

ケンイチはそう、思ったままに口にした。

画面の向こうではマルートの剣とホーンビートルの角が高速で打ち合っている。

「ただ、連携を取る時は氷室さんがスピードを調整しないといけない。

更にそこに火向さんが合わせている」

「よく見てるんだな」

3人分のドリンクを買ってきた犬飼がケンイチに缶を渡した。

「ほら、お前も」

「ありがとうございます」

ケンイチは犬飼から缶を受け取る。

「もしそれが負担になるようなら火向さんも高速機で合わせている筈。

そうしないで役割分担を選べているから、弱点になる程の事ではない」

「その見せかけの弱点に釣られた相手は多いよ」

ツバサもケンイチの観察力を評価した。

「でも意外だね、やる気が無いって言ってたのにしっかり見ている」

「そりゃ、やるからには手を抜いたら失礼ですから……」

そう口にする間もケンイチは試合を見続けている。

試合はというとハルートがビクトリーヴァンガードとの打ち合いから一瞬離れ、その一瞬のうちにマルートもホーンビートルの正面を避けた。

そしてハルートとマルートは至近距離からホーンビートルの首を剣で挟み込んだ。

「決まった!不意討ちのクロス・ブレイドだ!」

司会が言い終わらないうちにホーンビートルの頭部がリングに落ちる。

更にハルートとマルートは剣を構え、ビクトリーヴァンガードに突撃した。

「クロス・ブレイド!」

掛け声でタイミングを合わせ、ハルートとマルートが左右の剣をビクトリーヴァンガードの首に打ち付けた。

「勝負あった!

ビクトリーヴァンガードNCもクラッシュアウト!」

司会の言葉と共にビクトリーヴァンガードの頭部がリングに落ちた。

「試合終了!

チーム・ブラックウィングB、氷室&火向ペアとしては嵐山大会と合わせて東西タッグマッチ6連覇に王手をかけた!」

歓声とブーイングが飛び交う中、マルートはカメラへと剣を向けた。

それは試合を見ているであろうケンイチ達に向けたものだった。



いよいよ決勝だ。

ケンイチとツバサはそのステージに上がった。

「さあ、赤コーナーはチーム・ブラックウィングA!

烏丸ツバサ選手はご存知、かつての"神童"!

しかし卑怯な戦いこそあれど度重なる果たし合いの末に日本ランキング2位に上り詰めたその実力はかつて以上のもの!

途中からパートナーとなった工藤ケンイチ選手は今日が公式デビュー戦だが、こちらも期待できそうだ!」

司会が改めて選手の紹介をする。

「対する青コーナーは日本最強タッグ、チーム・ブラックウィングB!

氷室ソウヤ選手は現在は日本ランキング40位だが、ランキングポイントの剥奪処分を受けてからここまで順位を上げてきた!

パートナーの火向トウキ選手は3年前まで日本ランキング1位、4年前と6年前は世界大会準優勝!」

そのアナウンスの間に4人はロボットをリングに置いた。

「さあ、早くも準備が出来たようだぞ!」

「それでは、決勝戦を始める」

審判の言葉に会場が静まり返り、試合開始のカウントが響いた。

『3、2、1──』

4台共、まだ動かない。

『FIGHT!』

試合開始の瞬間、ハルートがマルートの前に飛び出したかと思うとマルートが最高速で飛び出した。

マルートに押し出されハルートも本来の最高速を超え、2台は同じスピードで左右に別れる。

「クロス──」

氷室と火向は掛け声のタイミングを意図的に遅れさせる。

ハルートとマルートは既に左右の剣を構え、飛び出してきたケンイチのロボットに向かっていた。

しかしケンイチはその意図的に外されたタイミングに合わせて一瞬減速し、右腕に埋め込まれていたフライホイールを回転させながら拳を突き出した。


試合開始から1秒もかからなかった。

ハルートとマルートがリング外まで吹き飛ばされ、ダメージポイントとリングアウト・ペナルティの合計が12点となった。


「さあ、試合は──」

司会の言葉が試合終了のゴングにかき消される。

「試合は……試合終了?」

司会も観客も困惑する中、客席のハヤトは満足げに口にした。

「やってくれるじゃないか……なあ、ナナミ」




登場機体紹介


ビクトリーヴァンガードNC(ノーカスタム)

操縦者 : テオ・ストラトス

ベース機体 : アクセルギア・ビクトリーヴァンガード

クラス : ヴァンガードクラス

パワー : 9

スピード : 8

レスポンス : 9

モーション : 7

ウェイト : 8

リーチ : 1

バランス : 10

備考 : 市販機ノーカスタム


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