デートじゃない!と彼女は叫んでおります
「ま、一学年全員が使い魔を召喚するとなれば、そりゃかなーり大変なことだよね。場所も、時間も」
「そうよねー。二つの組を一つにまとめて、それぞれを二箇所で行ったとはいえ……人数も多いし、初めてのことだから流れもうまくはいかないし」
「それでも、皆さんちゃんと使い魔を召喚できて、よかったです。過去には、うまく召喚できずに……という話も聞いたことがあるので」
「それなりに問題もあったみたいだけどね。契約したばかりで暴れてしまう使い魔、他の人との使い魔とぶつかってしまう使い魔……なんかもね」
「使い魔と契約したことで、これまで以上に賑やかになりますわね。これからは使い魔とともに行う授業もあるのでしょうし」
「使い魔といかにして絆を深めるか……それも、一流の魔導士になるための鍵だって師匠も言ってたしね。
魔導大会じゃ、使い魔を駆使している人もたくさんいたし。ゴルさん以外にも、いろんな人が使い魔と協力してたよね」
「その大混戦の中に混じって負けず劣らず暴れてたあんたも、たいていおかしいけどね」
「それからこの後は、使い魔召喚だけの章ではなく他にもいろいろなことがあった。
例えばそう……エランくんと、ヨークリア・パルシュタンくんのデート……」
「デートじゃないです! エランさんはデートなんてしません!」
「すごい食い入ったわね」
「だいたい、900エピソードもやっててぽっと出の男とデートなんて、そんなのダメです! いや誰であろうとダメですけど!」
「束縛強すぎないあんた」
「ルリーくんはわりとこうだよ。部屋でもエランくんの話ばかりで、あの日だってエランのことばかり……」
「な、ナタリアさんっ」
「元々は、コーロランの許婚であるサライアちゃんの兄弟がヨークリアさんなんだよ。
んで、他の国の王族……だったけど、パルシュタン家に養子として迎えられたんだ。魔導の才能がないけど、長男として引き取られるくらいに優秀な人なんだよね」
「そして、その方にフィールドさんはおデートに誘われたんですのね」
「だ、だからそういうんじゃないってー」
「なんにせよ、楽しそうならよかったじゃないか」
「まったく……こほん。
で、使い魔召喚のあとは第十二章 中央図書館編だね。ここでは主に、私が調べものをするってお話だったんだよね。エルフ族のこととか、黒髪黒目のこととか……いろいろとね」
「中央図書館かぁ、行ったことはあるけど……エランちゃんが行ったのは、一般の人が行けないところだったっけ?」
「そうそう。許可をもらうことで初めて入れる場所。そこなら、普通に調べてわからない資料があったりするかもしれないからね。
結果としては、はいこうでした……ってわかったことは少なかったけど」
「いいですわねぇ。わたくし、読書が趣味なので、行ってみたいですわね」
「……多分、あそこに行ってもノマちゃんが呼んでる恋愛小説はないと思うよ」
「へぇ、結構乙女な趣味を持ってるんだね」
「も、もうっ、それは言わない約束でしてよ!」
「ごめんごめん。
そんで、他に印象的なのは……やっぱ、カゼルさんとの手合わせかな」
「カゼル・オートライン……武術のエキスパートって名高い人だね」
「そ。開発研究のエキスパートマーチさんと、魔導のエキスパートアルミルおじいちゃん……ナタリアちゃんのおじいちゃんだね」
「普通、会うだけでも厳しい人なのに……そんな人と、手合わせまでするなんて。やっぱ普通じゃないわ」
「カゼルさんの魔法も面白かったんだよねー。身体強化の魔法しか使えないんだけど、段階を上げることで力を増幅させていくんだよ。
最終的には、私の白髪状態といい勝負してたんだよね」
「え、すご。でもなんで上から目線」
「でもいいところで、イルスさんって専門の回復術師に止められちゃったんだよ。
カゼルさんてば、その人に自分をご主人様なんて呼ばせててさ。絶対変態だよ」
「偏見!」
「ともあれ、身体強化の魔法だけであそこまで自分を高めることが出来るなんてね。身体強化は魔導の基礎、シンプルゆえに極める人はいない。
私だって、全身強化ができる程度には鍛えてるけど……まさか、まだまだ上があったなんてね」
「面白い力ですわね……魔導であることには間違いないですが、あくまでも戦うのは己の身一つ! そういうの、わたくし好きですわ!」
「ノマちゃん、恋愛小説だけじゃなく王道展開も好きだよね」
「カゼルさんとの手合わせが原因だったんですね、翌日エランさんが筋肉痛を訴えていたのは」
「あー、うん。あーれはヤバかった。全身の筋肉が悲鳴を上げてたんだもん」
「授業休めばよかったのに」
「サボりはダメだよ!」
「……まあなんでもいいけど」
「これまで師匠との組手をこなしてきたけど……私なんてまだまだだなって、実感したもの」
「エランくんがこうなるなんて、どれだけ激しい運動をしたんだか」
「激しい運動!?」
「食いつくな」
「それでこの後は……そう、フィールドさん自身の過去パートに入るんでしたわよね」
「そうそう。今まで謎に包まれてきた、ミステリアス主人公……その謎に包まれてきたベールが、ついに明らかになるのさ!」
「すごい自信に満ち溢れたお言葉ですわね」
「そんな引っ張っといて、本名の一つも明らかにならないんじゃ世話ないわね」
「きぃー!」




