幼くかわいくプリティな私
「そしてついに来ました、私の過去編! 第十三章 黒髪少女の軌跡編!
みんな待ちに待ってた、私の過去よ!」
「グレイシア様とどう過ごしていたのか……っていうのを、フィルちゃんに聞かせる形で語ったんだったわね」
「そうそう。ここではサブタイを漢字二文字縛りにしてみたりね。ま、記念すべき1000話は違ったわけだけど」
「ここで1000話まで到達してたのか、めでたいね」
「まだまだ続くんだけどね」
「それで、エランさんは実際に、ダークエルフと会っていたんですよね」
「そうなんだよね。私自身、そのことを忘れていて、フィルちゃんに話しているうちに思い出したんだよね。
ダークエルフなんて種族に出会ってたら、間違いなく覚えているはずだしね」
「その方は、フィールドさんと会ったことを忘れるような魔法をかけていたんですの?」
「どうだろ。記憶を消す魔法なんて聞いたことないし……でも、実際に忘れていたわけだし」
「案外、エランちゃんの記憶喪失にもそのダークエルフが関わってるんじゃない?
記憶を失くす前のエランちゃんのこと、知ってるみたいなんでしょ?」
「それに、将来ダークエルフと会うことも知っていたみたい。私の過去も未来も、知られちゃってるんだよね。エランこわーい」
「妙なキャラ止めろ。まあダークエルフなら、どんな魔法使えてもおかしくないんじゃない、死んだ人間を生き返らせることもできるみたいだし」
「わ、私をにらまないでください」
「それに私、実は魔人との戦闘経験もあって……いやあすっかり忘れてたよ」
「記憶喪失でもそうじゃなくても、物覚え悪いんじゃない?」
「ひどい!」
「でも、まるで本のお話みたいですわよね。幼い少女がエルフの男性に拾われ、共に生活するなど。
エルフは人間に比べて成長速度が遅いですから、いつかフィールドさんもグレイシア様とお似合いの年齢に成長して、二人は結ばれる……」
「私と師匠が? あっはははは、ないない。あははは」
「そこまで笑う? まあグレイシア様は既婚者……みたいだしね。ラッヘって娘もいるし」
「それもあるけど、そもそも師匠は恋愛対象としては見られない」
「バッサリだねぇ」
「だって、十年一緒に過ごしていたんだよ? ご飯にお風呂に就寝に……小さい頃からずーっと一緒なんだよ。
フィクションの世界なら確かに、年頃になった時に恋愛感情が、なんてこともあるかもしれないけど。実際は私にとってお兄さんでお父さんでおじいさんな相手に、そんな気持ちは湧かないよ」
「おじいさんって、それは辛辣すぎ……いや、グレイシア様がどれだけ長く生きているのかわからないけど、実際にそれくらいの年齢でもおかしくはないのかしら」
「そうそう。見た目は若くても、その中身はどれほどなのか。ルリーちゃんだって、私たちと同じくらいの見た目だけど、最低でも五十年以上は生きてるんだし」
「あー……」
「うん……」
「ですわ……」
「複雑そうな目で私を見ないでください!?」
「どうする、今更だけどルリーさんって呼んだ方がいい?」
「今まで通りでお願いします!」
「たははー。まあこんだけ話進めといて、今更ルリーさんって敬語使うのも慣れないだろうしね」
「まああんたは、普通に相手が年上でもタメ口使ってるけどね」
「うおっほん!
……まあ師匠から見ても、私は娘以上の感覚はなかったんだと思うよ。だからこの名前をつけたんだし」
「強引に話を戻したね」
「確かに、異性として見ている相手に娘の名前はつけませんわよねぇ。
……はぁ、ですわ」
「あからさまに残念そうだね」
「だってぇ、せっかくフィールドさんのそういうお話だと思ったんですのに」
「そこは、ダルマスくんやヨークリア様で我慢しておこうよ」
「だから二人ともそういうんじゃないから!」
「我慢て……何気にひどいわね」
「ちなみに、この章では幼くかわいくプリティな私の一人称だから、所々漢字じゃなくてひらがな表記にしているんだ。
いつもは「師匠」なところを「ししょー」とかね。「ししょう」じゃなくて、「ししょー」にするところがこう、かわいらしさをだねぇ……」
「あーはいはい。それで、謎の黒髪美少女はこの章でなにか明らかになったんですか? 魔人との戦いですでに白髪状態になってたとか、最初から精霊と仲が良いままとか、名前が分からないままとか、肝心なことはわかってないじゃない」
「それは……ぐすん」
「泣いちゃった! ですわ!」
「クレアさん、言い過ぎです」
「えぇ、私が悪いの?」
「まあ、未だ謎のままってのも、ミステリアス主人公ってことでいいじゃないか。それにこの作品の本質は彼女の正体ではなく、彼女が最高の魔導士になることなんだから。
その過程で明らかになっていくさ、多分」
「それはそうかもしれないけど」
「そうだよ、これは私が最高の魔導士になる物語だよ!」
「さっき聞いたわ」
「クレアちゃんが冷たい……」
「こんなもんよ私は。
……結局、本人が自分が何者かわからないから、使い魔が記憶を読むってこともできないみたいだしね」
「あくまでも術者の記憶を読むんだから、術者本人も忘れていることは読めないんだね。単に忘れているだけならともかく、記憶を喪失しているんだし」
「こればかりは思い出すの気長に待つしかないよ。強い衝撃を与える……って話も聞くけど、それなら今までそういうチャンスいっぱいあったし。
ま、なんとかなりますよ」
「なんで自分のことなのに他人事なのよ」




