キャットファイト
全身を薬物に侵された上に、羽交い絞めにされているアウローラ。
聖剣使いの少女は、それでも──
「はぁっ……はぁっ……くっ……! ──そう、簡単に……!」
「何……!?」
渾身の力と精神力を振り絞って、羽交い絞めにしていたルーナを振りほどき、投げ飛ばす。
聖剣使いの人並外れた力で投げられたルーナは、それでもアクロバティックに体勢を整えて着地。
すぐさま立ち上がると、剣を引き抜いてアウローラと対峙する。
アウローラもまた、聖剣を構えてルーナと向かい合った。
「はぁーっ……はぁーっ……ま、負けませんわ……私はおじさまのように、強くなりますの……!」
半ばまで虚ろになった瞳で、それでも立ち向かう意志を見せるアウローラ。
少女の頬は真っ赤に染まり、脚はガクガクと震えている。
その様子を見て、鞭使いの女性が感心したような声をあげる。
「あらあらまあまあ、頑張るわねぇ。少量で象でも耐えられなくなる薬なのに、よっぽど抵抗力が強いのかしら? でも──」
「くっ……!」
鞭使いがヒュンと鞭を振るう。
中距離からの攻撃。
アウローラはそれを、とっさに飛び退って回避する。
だが着地の先で、がくりと片膝をつく。
「はぁーっ……はぁーっ……負けない……負けませんわ……!」
「うふふふっ……その無様に抵抗する姿、ぞくぞくするわぁ……♡ そんなかわいらしい神器使いは、これからたっぷりと調教して、私のペットにしてあげますね~」
「だ、誰が……私の体は……私をペットにしていいのは……おじさまだけですわ……!」
アウローラは、自分でも何を口走っているか分からないままに、それでも気力を振り絞って立ち上がる。
だとしても、聖剣使いの少女に勝ち目はないように思えた。
しかし、そこに──
「──よく言った、アウローラ!」
ボーイッシュな少女の声が響き渡る。
それは山の下から駆け上がってきた、黒髪ポニーテールの剣士の声。
さらにもう二人、猫耳族の獣人の少女と、杖を手にした長い銀髪の少女が現れる。
三人の少女たちはアウローラを守るように素早く割って入り、鞭使いと聖騎士ルーナを牽制するように武器を構えた。
「アウローラ、すごいことになってるにゃね……。大丈夫にゃ?」
「百合も構いませんが、どうやらそういう問題ではなさそうですね」
三人とも、淡く輝く神々しい装いをしている。
その格好には覚えがなかったが、アウローラは希望を抱いて、少女たちの名をつぶやく。
「エレンさん、ミィナさん……それに、セラフィーナさん……どうして、ここに……おじさまと一緒に……別の任務に、向かったはずじゃ……」
「ダグラス様はすべてお見通しということですよ──解毒!」
セラフィーナが解毒魔法を唱えると、アウローラの体を蝕んでいた薬の効果が消え去った。
体調を取り戻した聖剣使いの少女は、三人の少女たちの横に立って並ぶ。
「アウローラ、戦えそうにゃ?」
「え、ええ。もう大丈夫ですわ」
「でもさっきの戦いながらハァハァ言ってるアウローラ、かわいかったなぁ」
「エ、エレンさん! そういうことは言わないでくださいの!」
一方、復帰した聖剣使いの姿を見て面白くないといった顔になったのは、鞭使いの女性だ。
「……ルーナ。これはどういうことかしら?」
「そ、そんな……どうして……冒険者たちには、偽の任務に行かせたはずなのに……!?」
鞭使いの隣でカタカタと震える聖騎士ルーナ。
そこに鞭使いから、死刑宣告が下る。
「ルーナ、あなた謀られたわね? これはあとでお仕置きが必要ね」
「ひっ……! ま、待ってくださいイェソド様! これは何かの間違いで……」
「言い訳はここを切り抜けられたら聞いてあげる。……ああもう、ペットにしたいかわいい子たちがこんなにたくさんいるのに。癪だわ~」
鞭使いはひゅんと鞭を振り、戦闘姿勢をとった。





