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斧使いのおっさん冒険者ハーレム英雄譚 ~報われない人生が神話級の斧に出会って激変する話~  作者: いかぽん
第3部/第1章

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乗合馬車での出会い

 いかがわしい宿にて、サンタ服コスの嫁たちとイチャラブエッチをたっぷりと楽しんで、その翌朝。


 俺たちが隣街に向かう乗合馬車の停留所に行くと、そこで見覚えのある一人の少女と遭遇した。


 空色の髪と、同色の不思議な深みのある瞳を持った少女だ。


「……あれ? ……あの、どこかでお会いしましたっけ」


 少女のほうもまた、俺たちの姿を見て首をかしげる。

 俺はどこで会ったかを思い浮かべつつ、少女に返事をする。


「昨日だな。サンタ衣装を売っていた衣服店の前で」


「あーっ、あのときの! 思い出しました! 私の隣で真剣な顔つきで衣装を見ていましたよね。……あれ、結局買ったんですか?」


「ああ、買った。四着な」


「すごい、お大尽! えっと、でも……あれって女性用デザインでしたよね? あれをあなたが着るんですか? しかも四着も着回すぐらい何度も……?」


「いや着ねぇよ。嫁たちが着る用だよ」


「嫁たち……?」


 少女はきょとんとして、俺の後ろに立っている少女たちのほうを覗き見る。


 ミィナ、エレン、セラフィーナの三人は、「嫁にゃ」「嫁だよ~」「嫁ですね」と少女に答えた。


 それを聞いた少女は、わあと驚いた顔を見せる。


「えっ……? あの子たち、あなたの娘さんじゃなかったんですか……?」


「ああ、年齢的にそう思うのも無理はないが、三人とも俺の伴侶だよ。……ていうか仮にあいつらが俺の娘だとしても、着るのは俺じゃなくてあいつらだと思わんか?」


「はっ、それは確かに! これは大ボケをかましました!」


 ぺん、と自分のおでこを叩いてみせる少女。

 なんというか、微妙に間が抜けているというか、つかみどころのない娘だな。


 そんな話をしていると、乗合馬車の到着時間になったので、俺たちは馬車に乗り込む。

 少女もまた、同様に馬車に乗り込んだ。


 ほかに乗車客がいないのを見て、乗合馬車は停留所から出発する。


 ガタガタと揺られる馬車の中。

 少女は自分の名前をビナーと名乗りつつ、人懐っこく話しかけてくる。


「それにしても奇遇ですね、またこんなところで一緒になるなんて。皆さんは旅をしているんですか?」


「ああ。あてのない旅だが、武者修行も兼ねてな」


「武者修行ですか……」


 少女──ビナーはちらりと、俺が手にした聖斧ロンバルディアを見た。

 さらにエレンの剣、ミィナの短剣、セラフィーナの杖などに目を向けていく。


 一方で俺も、ビナーの出で立ちに注目する。


 軽装の旅姿だが、立派な意匠の施された弓と、数十本の矢が入った矢筒を装備していた。


 俺たちの出で立ちを確認したビナーが、あらためて声をかけてくる。


「皆さんはやっぱり、冒険者でしょうか?」


「ああ。ビナーも冒険者か? それにしたって、女子の一人旅ってのはいろいろと危険だろうし、腕に覚えはあるんだろうな」


「まあ……はい。そんじょそこらの人間には、負けることはまずないと思います」


 どこか他意を含んだような言い方。

 するとそこに、エレンが横から口を挟んでくる。


「そんじょそこらの人間には、ねぇ。──じゃあ、ボクとどっちのほうが強いかな? いくらなんでも、ダグラスより強いってことはないだろうけど」


「……そう言うからには、ダグラスさんは相当お強いということです?」


 ビナーがスッと、鋭く目を細める。

 小動物のような愛らしい雰囲気が鳴りを潜め、猛禽類のような鋭利な気配が現れた。


「うん、強いよ。それもね、そんじょそこらどころじゃない。なんなら世界最強って言っても過言じゃないんじゃないかな? ボクの師匠とは引き分けちゃったけど、あれもダグラスが【鬼神化】を使わないっていうハンデマッチをしたからだし」


「……ふぅん。世界最強とは、ずいぶん大きく出ましたね。でも、だったら……」


 エレンの返事を聞いて、ビナーは口元に手を当て考え込むようにする。

 いったい何を考えているのか。


 その態度に何かを感じたらしいミィナが、横から口を挟む。


「ビナーは強い冒険者に興味があるにゃ? 何か困ってることでもあるなら、うちの旦那は相談に乗ってくれるかもしれないにゃよ。にゃあ、ダグラス?」


「ああ。手助けできるかどうかは事と次第とによるが、せっかくの縁だ。相談したいことがあるなら、話は聞くぞ」


 ミィナに振られた俺は、ビナーに向かってそう伝える。


 強い冒険者に興味があるとなれば、彼女が戦力を必要とする何らかの厄介ごとに巻き込まれている可能性があり、それに対して手助けをするのもやぶさかではないと思ったからだ。


 だが俺のその考えには、人助けの慈善目的だけではなく、幾分かの打算も入り混じっていた。


 先日、商業都市ベルフォードで開催された闘技大会の決勝戦で、俺はエレンの師匠にして“竜神器十将”を名乗る大剣使いの女剣士ティフェレトに、事実上の敗北──【鬼神化】を残していたとはいえ、少なくともあれを勝ちとは呼べないだろう──を喫した。


 ティフェレトとは再会の約束をしたわけではないが、いずれまたどこかで遭遇するような予感がしている。


 そしてティフェレトは俺に、次に会ったら必ず殺し合うと言っていた。


 一方で俺は、次に会ったときにはあの戦闘狂の女剣士を、力でねじ伏せてやりたいと思っている。


 我ながら暴力的な発想だと思うが、心の奥底から自然に湧いてくる衝動なので仕方がない。

 どんなに善良ぶっても、それが俺のオスとしての本能であり、本音なのだろう。


 その衝動を肯定するにせよしないにせよ、今の俺に、あの女を力でねじ伏せられるほど強くなりたいという気持ちがあることだけは確かだ。


 そして、強くなるためにはどうしたらいいかとロンバルディアに問えば、返ってきた答えは「地道に強敵と戦い続けること」だそうだ。


 ロンバルディアとともに強敵と戦い、それに打ち勝つことによって、俺はこの恐るべき力を持った聖斧の能力をより強く引き出せるようになる。


 ちなみにだが、エルフたちを救うために古竜(エンシェントドラゴン)を打倒したあとには、俺は新たに四つのスキルを使いこなせるようになった。


 その詳細はひとまず省くが、強敵と戦うことが強くなるための最有力の手段であるというのは、どうも間違いがなさそうだ。


 ならば強敵の匂いのする話に乗っかることは、俺にとっても利益になる。


 ……とまあ、そんな打算もあって、ビナーの様子に興味を持った俺だったのだが。


 一方でビナーは、沈んだ顔をしていた。

 何かに悩むように。


「ダグラスさんたちは、いい人みたいです。だから……でも強い人の血を吸わせれば、それだけ少ない人数で済む……その分だけたくさんの人間を犠牲にせずに……。でもどっちにしても、女王が復活した暁には……」


「……ん? それは何の話だ?」


「あっ……! い、いえ、こっちの話です! 何でもないです!」


 ビナーは取り繕うように手をぶんぶんと振り、ごまかし笑いをする。

 様子が怪しいなとは思ったが、それ以上に突っ込むのは躊躇われた。


 ──と、そのときだ。


 がたんと、突然に馬車が止まった。


「……? 何でしょう。次の街に着くには、まだ早いと思いますけど」


 セラフィーナが首をかしげる。


 そして馬車の外からは、慌てた御者の声と、横柄な態度の別の誰かの声が聞こえてきた。


「な、なんだお前たちは!」


「へっへっへ、見て分かんねぇかなあ? この道を通るには、新たに通行料が必要になったってことだよ。なぁに、身ぐるみ全部置いていけとは言わねぇ。心ばかりでいいんだ。例えば中に美女が乗ってるなら、そいつをそっと置いていってくれるだけでもいいぜ? 俺たちは優しいんだ」


 そう言った男の声の後に、げらげらとした粗野な男たちの笑い声が多数聞こえてきた。


 ……やれやれ、どうやら厄介ごとのようだ。

 俺は嫁たちに声をかける。


「どうも招かれざる客のようだ。俺は馬車を出て様子を見てくるが、お前たちはどうする?」


「ボクも行くよ。中で待っててもしょうがないし」


 エレンがそう答え、ミィナとセラフィーナもそれに同意だというようにうなずく。

 さらに──


「私も出ます。──そういう手合いなら、ちょうどいい(・・・・・・)ですし」


 ビナーもそう言って、弓を手に取った。


 俺たちは馬車の戸を開いて、外へと飛び出した。


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