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神には届かない  作者: 空野
ペッパーボックスの黎明
91/93

4

 

 同期の数人が証言した目撃情報から辿っていくと、1人の下級生に行き着いた。


『すみません、ごめんなさい、俺、先輩達が怖くて……』


 呼び出し、騙し討ちに加担してしまったという下級生の話を聞いて、グースはだいたい何があったか把握する。


(まぁルイは普段の態度がアレだからなぁ……)


 通りすがりの同期に、教官を読んで体育倉庫へ来てくれと言い放っては来たものの。


(俺が丸腰で駆け付けても、あんまり戦力ならない)


 仮にもギャスパーの好敵手であるルイを呼び付けるのだから、騙し討ちとはいえ、多少は腕っぷしに自信のある上級生達なのだろう。

 となれば、近接戦闘については可もなく不可もなしのグースでは、丸腰の加勢はさして意味がなかろうと、咄嗟に後で懲罰を受ける覚悟で備品室からゴム弾の銃など持ち出したが。


(威嚇になるかなぁ……?)


 体育倉庫を物陰から見詰めながら、少し思案する。

 扉の前には、2人、見張りと思しき上級生が立っていた。


(撃てるわけない、って舐めて掛かって来るかもしれないし、実際、ちょっと実際には撃ちにくい)


 ゴム弾は非致死性とは言うものの、実際には当たりどころが悪ければ死ぬこともあるし、特に、それが近接距離からの発砲であればなおさらに威力は上がる。

 だから、それを知っていればこそ、人に向けて撃つには度胸がいるのだ。


(あっちはおそらく複数人。よしんば、外にいる2人はここから撃ってひっくり返せたとしても、扉を開けた先では、どうなるかわからない)


 標的と距離さえあれば、ゴム弾は威力が適切に落ちている。そしてグースは、確実に標的の比較的軽症で済みそうな位置に当てられる自信がある。


 しかし、もしも扉を開けた時に、どうせ撃つ度胸はあるまいと考えた相手が、迷わず飛び掛かって来たなら。


(至近距離に来られちゃうと、どんなに良い位置に照準を合わせても、それなりの大怪我になる……)


 倉庫の中は狭いであろうし、中にいる人数も不明。

 扉を開けた瞬間すぐ傍にいたなら、その時点でグースは詰みだ。


(……俺はつくづく後方支援特化だな……)


 得手不得手にムラのある自分を、久しぶりに真剣に疎ましく思う。


 その時だった。


「おう、グースハウザー、何楽しそうなことしようとしてんだよ」


 愉快げな声が、背後から聞こえた。


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