85/93
19
翌日から、サンダースはいつも通りだった。
二日酔いだと頭を抱えて軍部に現れて、休暇は終わったと笑い。
それが、〝英雄〟の誕生だった。
以降4年、完璧な〝救国の英雄〟は、いつもそこにいた。
だれが見ても隙も油断もない、〝英雄〟だった。
そして。
そんな〝英雄〟の見せる、ふとした緩んだ表情や自然な感情。
それは変わらず、ラーグハルトだけが知っていた。
おそらく、洗い浚いラーグハルトに話したことで、吹っ切れたのだろう。
ショウとの思い出を誰より共有する友人、そして、自分の不完全な部分を誰より知る戦友だったからこそ。
その戦友が誓った、支えるという約束は、きっと本当に〝英雄〟を支えていた。
たとえ永劫に〝英雄〟でなけれならないとしても。
ただ一人、全てを知ったうえで、自分を支える戦友がいる。
その安堵こそが、酔いの逃避を辞め、永劫の役割を背負う覚悟を決める引き金になり得たのだ。
それに気付いた時、確かにラーグハルトは幸福だった。
はたして想いが成就しないとしても、幸福なことだった。
変わらずに成就することもなければ、諦めることもない感情を抱えながら。
けれど、自分の存在が、その人を支えることが出来ているならば。
ただひとりの人の、唯一無二の支えで、あれるなら。
それだけで、いいと思っていた。




