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そもそもで、サンダースが塞ぎ込む理由はわかりきっていた。
『ひでぇ眺めだよ、まったく』
首都郊外の墓地。
ズラリと並んだ墓標は、殆どが内戦期に立ったものだ。
風の音に耳を澄ませれば、その墓標の連なりの中に眠る、知った相手の声が耳殻に蘇る。
ショウ・グルーヴ。
最期まで、ラーグハルトが親友と呼べなかった男は、終戦の道を開いた奇跡の戦いで戦死した。
その戦死の詳しい経緯を、ラーグハルトは知らない。
議事堂戦の詳細は、国家安全上の観点から、国の上層部によって秘匿されていた。
ただ確かなのは、その時ショウと一緒にいて、ショウを含む部隊を指揮したのが、サンダースだったこと。
ショウだけでなく、その日、奇跡を起こした部隊の大半が戦死した。
命と引き換えに国家を守った〝英雄達〟。
そして、その〝英雄達〟を率いた〝英雄〟の中の〝英雄〟。
誰もが、サンダース・クレイガンを褒め称える。
戦死した部隊の遺族達ですらも。
敵地に取り残された状況からの決死の反撃と聞けば、悲しみに慟哭しながら、しかして安堵するのだ。
避けられない死だったのならば、せめて家族の死を、無駄にしないでくれて良かった、と。
過酷な内戦の日々を生き抜いたからこそ。
山と積まれる兵士や一般人の亡骸を見て来たからこそ。
遺族達は、涙ながらに〝英雄〟の両手を握って微笑む。
あなたのおかげで、家族は、積み上げられるだけの墓石の1つにならずに済んだ。
ただただ戦地で死ぬのではなく。
この空しく恐ろしい時代を終わらせるための力となれたのなら、と。
そして国民の全てが言う。
あなたのおかげで、積み上げられた墓石達は、やっと、次の墓石が積まれる音を嘆かずに眠れる、と。
誰もが、そうして〝英雄〟を称えた。
けれど、サンダース当人にとって、その称賛は何の救いにもならないのだろう。
愚直なまでに誠実で、危ういほどに意志の固い彼は。
生きて帰してやれなかった指揮下の者達を、きっと今も悼み続けている。
まして、振り返れば蘇る輝かしく麗しい日々。
あの例えようもなく懐かしい日々、思うだけで胸を押されるような思い出の中、いつも隣にいた親友。
ショウを連れ帰れなかったことを、指揮官として、友人として、どれほど悔やんでいるだろう。
花を供えた墓石の前。
佇むラーグハルトの耳に、弔いの鐘の音が聞こえて来る。
かつて毎日のように響いたこの音は、きっと、この国から徐々に徐々に減っていくだろう。
けれど、一番聞きたくなかった人の弔いの音は、既に響いた後だった。




