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神には届かない  作者: 空野
ウェルロッドの憂鬱
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16

 

 日当たりの良い部屋だった。

 午後の日差しが照らす室内は明るくて、風に揺れるカーテンには汚れもなく、床も清潔で。


 ただ、無数の酒瓶が転がっているのが、異様だった。


『おい、お前、骨折完治まで酒は禁止じゃなかったか?』


 眉を寄せて振り向いたラーグハルトに、サンダースは何も言わずに肩を竦めただけだった。


『しかも、手当たり次第って感じじゃねぇか……』


 書棚もソファも。机上も。

 整っている部屋だけに、強烈な違和感だった。


 どこにでも売っている大手のビールから、きっと秘蔵だったのだろう年代物の高級ワインまでが、手当たり次第に空けられて、フローリングの床に投げ出されている。


 家にあったアルコールを片っ端から摂取したようにしか見えなかった。


『……何があったんだよ?』


『いや、特になにもない』


 振り向くラーグハルトに、折れた左手の親指を庇いながら茶を入れるサンダースは、どこかボンヤリしている。


『少し、酒が恋しくなっただけだ。内戦末期は、殆ど飲めなかっただろ』


『少しって量かよ、これが。治るモンも治らなくなるぞ、医者の言う事はきいておけよ』


 何か危機感は感じていた。

 けれど、内戦の中で誰かが酒に走るのは、良くも悪くも慣れ切っていたから。


 溜息まじりに酒瓶を片付けてやった日から、思えば、何かが変わり始めていたのかもしれない。


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