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それでも、願いとは裏腹に、戦禍の時代はあらゆるものを壊していく。
そこにはいかなる例外も認められない。
そして、いつの世も。
戦禍の中心には、〝英雄〟が立つのだ。
それは、内戦の終結期のことだった。
『おい、生きてるか?』
鳴らしたベルの後に返事はなくて。
コンコン、と玄関扉を叩いて声を掛けた。
『サンダース、俺だよ。開けろ』
少し声高に言うと、微かに、扉の向こうで音がした。
議会軍は実質的に勝利が確定している。
数多の犠牲を生んだ国内史上最悪の独裁者は捉えられ、きっと裁判の後に処刑される。
あとは、地方に残った独裁軍の小規模拠点をいくつか叩けば、この内戦は完全に終わる。
3年に及ぶ過酷な内戦、そして、長年に渡った独裁の恐怖から、ようやくと、この国は救われるのだ。
その立役者となった若い将校は、表向き、奇跡の議事堂戦以来、怪我の療養中となっていた。
事実、数か所の骨折、多々の裂傷に、いくらかの火傷など、彼は間違いなく怪我人ではあったけれど。
実際に深かったのは、精神面での痛手だろう。
『おい、本当に生きてるよな?』
病院に長く留まることを拒否し、最低限の傷が治ると〝英雄〟は自宅に籠ってしまった。
『サンダース』
様子を見に来たラーグハルトの声に、ようやくと、鍵の開くカチリという音がする。
『心配ない。残念だが、生きている』
扉を開けて淡々と答えた声。
久方ぶりに見た親友は、無機質な、どこか機械のように感情の抜けた顔をしていた。




