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神には届かない  作者: 空野
ウェルロッドの憂鬱
80/93

14

 

 無二の親友という立場は、全てを許してくれた。


『ラーグ、聞いてくれ、ミーナが』


『お、なんだ、遂に別れた?』


『ありえない。縁起でもないこと言うなよ』


 そう言って、恋人の話をニコニコと語るサンダースに、茶々を入れながら頷いて。


『はいはい、すいませんね、惚気の邪魔して』


 笑ってガシガシと頭を掻きまわして、そして、上機嫌なその声を笑いながら聞いて。


 何かがつっかえたような痛みは、それでも、その歴代の恋人達の誰よりも彼を理解している、無二の親友という立場の心地良さが麻痺させてくれる。


 かつて故郷で年下の同性に恋した時ほど、もう不器用でも純情でもなかった。

 あの時よりも、もっと強固で揺るぎない想いだけれど、だからこそ、それを隠す方法も知っていた。


 ただ、あるいは。


『ラーグハルトって』


 ある時、ポツリと言ったショウだけは、何かに気付いていたのかもしれない。


『ラーグハルトって……珍しい黒髪の女の子が、好きだよね』


 痛みの麻痺する親友という場所で、〝普通〟に人を好きになるように見せて。

 けれど、どこかで溜まりきって積もり続ける想いは、無意識に愛しい色を選び取って誤魔化して。


 おそらく、告げれば叶うまい。

 それは誰よりサンダースを理解しているからこそ、よくわかる。


 サンダース・クレイガンは、間違いなく、同性は愛せない。


 けれど、もし、想いを告げて拒絶されたとしても、それで崩れるほど友情は脆くないことも、知っている。

 おそらく何一つ変わらずに、親友としての日々は続いていくことだろう。


 だから、ラーグハルトが恐れていたのはただ1つ。


 友情が終わることではなく、この隠した想いを、終わらせなければならなくなること。


 告げて砕けてしまえば、この想いを終わらせなければならなくなる。

 けれど黙っていれば、叶わないかわりに、完全に諦めてしまう必要もないのだ。


 殆ど夢のような無いに等しい希望を抱いたまま、限りなく居心地の良い場所で微笑んでいられるのだ。


 そのためならば、痛くはなかった。


 彼の恋人の話を聞くことも。

 特に思い入れのない誰かに愛を囁くことも。

 痛くなかった。


 このまま日々が続いて行けばいいと、そう願っていた


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