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無二の親友という立場は、全てを許してくれた。
『ラーグ、聞いてくれ、ミーナが』
『お、なんだ、遂に別れた?』
『ありえない。縁起でもないこと言うなよ』
そう言って、恋人の話をニコニコと語るサンダースに、茶々を入れながら頷いて。
『はいはい、すいませんね、惚気の邪魔して』
笑ってガシガシと頭を掻きまわして、そして、上機嫌なその声を笑いながら聞いて。
何かがつっかえたような痛みは、それでも、その歴代の恋人達の誰よりも彼を理解している、無二の親友という立場の心地良さが麻痺させてくれる。
かつて故郷で年下の同性に恋した時ほど、もう不器用でも純情でもなかった。
あの時よりも、もっと強固で揺るぎない想いだけれど、だからこそ、それを隠す方法も知っていた。
ただ、あるいは。
『ラーグハルトって』
ある時、ポツリと言ったショウだけは、何かに気付いていたのかもしれない。
『ラーグハルトって……珍しい黒髪の女の子が、好きだよね』
痛みの麻痺する親友という場所で、〝普通〟に人を好きになるように見せて。
けれど、どこかで溜まりきって積もり続ける想いは、無意識に愛しい色を選び取って誤魔化して。
おそらく、告げれば叶うまい。
それは誰よりサンダースを理解しているからこそ、よくわかる。
サンダース・クレイガンは、間違いなく、同性は愛せない。
けれど、もし、想いを告げて拒絶されたとしても、それで崩れるほど友情は脆くないことも、知っている。
おそらく何一つ変わらずに、親友としての日々は続いていくことだろう。
だから、ラーグハルトが恐れていたのはただ1つ。
友情が終わることではなく、この隠した想いを、終わらせなければならなくなること。
告げて砕けてしまえば、この想いを終わらせなければならなくなる。
けれど黙っていれば、叶わないかわりに、完全に諦めてしまう必要もないのだ。
殆ど夢のような無いに等しい希望を抱いたまま、限りなく居心地の良い場所で微笑んでいられるのだ。
そのためならば、痛くはなかった。
彼の恋人の話を聞くことも。
特に思い入れのない誰かに愛を囁くことも。
痛くなかった。
このまま日々が続いて行けばいいと、そう願っていた




