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神には届かない  作者: 空野
ウェルロッドの憂鬱
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11

 

 そうして春に、その出会いはやって来た。


『僕は、ショウ。ショウ・グルーヴ。よろしくね』


 ちょっとした書類上の都合の関係で、隣地の士官学校から移ってきたのが彼だった。


『ええと、ええと……次の授業は……!?』


 決して有能なわけではなく、しかし、無能なわけでもない。

 ただちょっと要領の悪い凡人。


 けれどなぜか、その男には誰もが仕方ないなと笑いながら手を差し伸べた。


『ええええ!?この教室ってどっち!?』


『なんだ、ショウ、まだ慣れてねぇの?一緒に来いよ、こっちだから』


『ありがとう!助かるよ……!』


 そんな、人好きこそすれ、凡人の凡人のようなショウは。


『どうしよう、サンダース!』


 しかし何故か、自然に非凡なヒーローの隣に立つようになった。


『絶対この課題当てられる!でもこっから先わからないんだ……!助けて、サンダース!』


 困り顔で両手を合わせる、東洋系の小柄な新入りの同期に。


『仕方ないな。どれだ?』


 呆れたように笑いながら、それでも結局楽しそうに、いつも課題を見てやるようになったのがサンダースだった。


『あーこれか。ラーグハルト、お前得意だろ、手伝ってくれ』


 同期内で常に主席を走り続ける御曹司。性格も良い人気者のサンダース・クレイガン。

 飄々としているくせに、いつも総合順位で上位5番以内から落ちないラーグハルト・フライム。


 寮の同室であることも踏まえて、誰もが自然と思っていた二人組に、ショウという異分子は、いつの間にかすっかり溶け込んだ。


 夏が近付く頃には、秀才のコンビは、でこぼこのトリオに変わって。


『サンダース、また課題やってるの?それ提出まだずっと先だよ?』


 ごく自然に、寮部屋には殆どの場合、ショウがいるようになっていた。


 ずっと先に提出の課題を睨むサンダースに、両手いっぱいに抱えた菓子を見せて休憩しようと微笑んで。


『田舎の父さんから手紙が来たんだ。母さんもね、こんなにお菓子送ってきてさ、電話までかけてきたんだよ』


 いつの間にかそこにいて、少し照れ臭そうに、そして素直に嬉しそうに、無邪気に笑っている。


『……そうか。それは良かったな。ちゃんと返事書けよ』


 結局課題を閉じては振り向いて、クシャリと笑うサンダースは、いつも楽しそうだった。


『おーまーえーらー、結構イイ時間になっちまったぞ。そろそろ寮監が見回りに来るから注意しろよー』


 二人を見守って、横から時々ちょっかいや忠告をするのが、ラーグハルトの役割だった。


『いざとなったら、ショウはベッドの下に押し込んで隠せば良いさ』


『ええ!?サンダース酷いよ!?』


『はは!そりゃ明暗だ!ジャストサイズだろうしな』


『ラーグハルトまで!確かに狭いところ落ち着くけどさ!』


 ゲラゲラと笑い転げて、結局寮監に見つかって三人揃って叱られて。

 それは、噓偽りなく、楽しい日々だった。


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