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ラーグハルト・フライムがサンダース・クレイガンに抱く感情は、まず間違いなく純然たる友情だ。
それは出会いの日から以降十年、間違いなく存在し、ずっとずっと強くなっていく感情だった。
けれど。
友情に僅か遅れて、独立して芽生えた思いをはっきりと自覚したのは、果たして出会いの年の終わり。
大晦日の晩だった。
『なんか食えそう?』
2段ベッドの上段に眠る相手を、梯子に足を掛けて覗き込む。
『……ぜったい、無理だ』
呻いたサンダースは、布団に頭まで埋もれる勢いで食事を拒否した。
真冬に、凍るように冷たい屋外水道の水を頭から被ったのは、流石に体に堪えたらしかった。
事のあった翌日あたりから、こんこん咳をしているな、と思ってはいたが、大晦日の午後になって、頭が痛い、くらくらする、吐きそう、と訴え、熱を計らせれば案の定38度後半の有様だった。
『お前さぁ、もっと早く調子悪いって申告しろよなぁ』
相当の高熱だろうが、と思いながら。
『風邪薬飲むにもチッとは何か胃に入れねーと。ゼリーとかも無理そう?』
寮の食堂はとっくにしまった夜中だった。
けれど何か食べられるなら、万一に備えて備蓄していた缶詰や菓子でも食わせてやるか、と。あるいは、大晦日の今夜ならば、寮の談話室には居残り組の同期達が集まって、諸々に料理など持ち寄ってのカウントダウンパーティーをしている。そこからゼリーなりプリンなり、何か病気でも比較的食べやすそうな物を持って来てやることも可能だろうと思った。
けれど。
『何も食べたくない……』
グッタリと拒否して布団を更に被って。
かと思えば、急に振り向いて、布団の隙間から青い目でじっと、伺うようにこちらを見るのだ。
『お前は、談話室行って良いからな』
何を言うかと思えば、そんな事で。
『俺はもう寝るから、気を使わなくて良い』
そうして再び頭まで布団に潜って背を向ける。
『行きたくなったら勝手に行くぜ。お前のせいじゃねぇから安心しろよ』
ポン、と、軽く布団の上から叩くと、頷くような気配があった。
そうして。
少しして、寝息が聞こえ始めた。
規則正しく、布団が上下する。
寝たのか、と思って。けれど、もしかしたら、気を遣わせないための狸寝入りかもしれない。
サンダースという人間が、そういう奴であることを、ラーグハルトは知っている。
『……談話室ねぇ』
ポソリと呟いて。
ラーグハルトは肩を竦めた。




