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神には届かない  作者: 空野
ウェルロッドの憂鬱
69/93

3

 

 そうして、逃げ出した先。

 故郷から遠い士官学校で。


 ラーグハルトは、その親友に出会った。



『ああ、君が同室かな?』



 未来で独裁者を撃ち落とす〝救国の英雄〟、サンダース・クレイガンは、そう言って笑った。


『兄弟もいないから、誰かと同じ部屋で暮らすのは初めてなんだ。なるべく迷惑は掛けないが、何か気に触る事があったら、ガンガン言ってくれ』


 国内でも名の知れた兵器開発、貿易会社の代表の息子。

 国内の軍事産業を掌握しようとした独裁者により、半ば人質として士官学校に招かれた、その少年は。


『ところで、2段ベッド、上の段は俺で良いよな?そのつもりで先に荷物も置いてしまったんだ』


 自分の立場がわかっているのかいないのか、悪びれもせずに、何の緊張感も、心配ごともなさそうに。

 ベッドの上段を指して、上機嫌にそう笑っていた。


『それから机はこっちが良いんだ。……君は、どうだ?ジャンケンになりそうかな?』


 質素な、安い白の壁紙。

 量産品の、どちらにしても変わり映えない木製机。

 簡素なクローゼットが二つ。


 開いた窓からは、真っ青な空と、眩しい緑の葉が覗き、真っ白に透き通る陽光が差す、古びた寮部屋。

 窓を背に、我が物顔で机に腰掛ける黒髪碧眼の御曹司。


 楽天家の、金持ちの坊ちゃん。

 それが、第一印象だった。


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