AM07:32
秋の朝、空気はヒヤリとしていた。
冷たい床に座り込んだ人質達は、それぞれ5人程度のグループに分けられ、その他のグループとは一定の距離を取らされている。特に教官や最上級生は、2人以上同じグループにいないよう調整されているようだ。
(腐っても、士官学校だからな)
ルイは小さく舌打ちする。
軍人でもある教官は元より、生徒であっても、ただの一般人を人質に取るよりは反抗された時の脅威が大きい。だからこそ、こうして入念に反抗のリーダーになりそうな者同士を引き離し、結託を防いでいるのだろう。
(ほんと、ただの馬鹿な犯罪集団じゃねぇから余計に胸糞悪いんだよ、こいつら)
ヒヤリとした空気に身を震わせて、不機嫌に寝不足気味の目を擦った。
反抗された時のリスクだけを考えるなら、士官学校ほど占拠にむいていない場所も珍しい。しかし、この学校の形状を考えた時には、それは見事に180度覆るのだ。
東西南北、敷地への入り口は門が4つのみ。しかも縦に細長い門であり、一度に大量の人員が通過することはできない造り。そうなれば、救助の為に突入する際、門にいる見張りが厄介この上無い。細い道を通れるよう作った隊列を乱される前に速攻で通過するか、あるいは見張りを素早く倒さねば、そこでかなりの足止めを食らうはずだった。すると必然、そのロスタイムの間に、見張りが食堂の本隊に連絡を入れ、人質の集められている食堂は完全に迎撃姿勢を整えてしまうだろう。
人質を盾として配置する余裕を敵に与えるのは得策ではない。
(おまけに、この食堂は四方とも校舎棟に囲まれてるから、敷地外からじゃ完全に中の様子が見えねぇし……)
有事には軍事拠点として使用される為の施設だったことが、見事に災いしている。
占拠するのは難しいが、占拠さえしてしまえば非常に守り易いのが、この士官学校だったのだ。
無意識に、ルイは溜息を吐いた。
いつ終わるとも知れない緊張状態には、さすがに精神的にも肉体的にも疲労が蓄積している。気が強くて反骨精神旺盛なことには自信のあるルイですらこうなのだから、気の弱い人質などは、既に体調不良を起こしている者もいた。
あるいはテロリスト達も、常に気を張っているストレスから苛立ち易くなっているのが分かる。
(このままじゃ、人質とテロリストの間に何か衝突が起きるのも時間の問題だわな……)
腕組みして今後を思い、また、ヒヤリとした空気に身を震わせた。
その時だった。
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