第13話 歓迎は突然に
第二章開幕です!一章もぜひ見てください。コメントも募集中です!
あの豪雨の日から半月。俺たちは実家を離れ、俺の今の家で、奇妙な同居生活を始めていた。
「なるほど。ここがあなたの住んでいる家、ですか。……かなり旧式の作りですね」
そう呟きながら、部屋の隅々を点検しているのは、あの日出会ったアンドロイドの少女、アオハだ。
「悪かったな、旧式の家で」
俺の言葉を聞いて彼女は、少し間をおいて、答える。
「……やはり難しいですね」
アオハは、指先をわずかに止めたまま、視線を宙に飛ばしていた。
「今、何か考えてたろ」
「はい。『旧式』という評価が、あなたの感情に与える影響を再計算していました」
「で?」
「不要でした」
「そういうとこだぞ」
俺は呆れながら答えた。アオハは無表情のまま、また一つ黙り込む。
あれから半月。ここに来るまで、いろいろなことがあった。まず思い出すのは、避難所で祖母と再会した時のことだ。祖母に後ろから声をかけると、人目も気にせず俺に飛び掛かり、俺の手を握る。
「タツキ!無事でよかったよ。ほんとにどこに行ってたんだい」
「おばあちゃん、見られてる。みんなに見られてるから」
ひとまず祖母に落ち着くようにと、声をかける。
「ごめんね、おばあちゃん。心配かけて。全部終わったよ」
「あんたって子は。いつもいつも後先考えず行動してその度に心配をかけて……」
またまた説教ルート確定だ。だが今回は、言い訳できそうな理由もない。そのまま他の避難した人の視線を浴びながら、説教を受ける。それを見ていたアオハが俺の裾を掴む。
「なぜ、笑っているのですか?」
「え?」
言われて初めて気づく。
「……嬉しいのかもな」
そう彼女に耳打ちをした。
「……まだまだ心については、学ぶことが多そうです」
「あんたねえ。説教受けてんのに誰と話して——」
俺が誰かと話をしていたのに祖母が気づいてしまったようだ。まあアオハのことは見えていないだろうし、適当に誤魔化す。
「ああいやこれは何でも」
「あんた」
祖母の声が一段低くなる。俺は唾をごくりと飲み込んだ。
「何?」
「……どうしたんだい、この可愛いお嬢ちゃんは!」
「へ?」
一瞬、何を言われたか分からなかった。すぐに辺りを見渡す。そのような人は辺りには誰もいない。祖母はいったい誰を指して——
いや、一人いた。俺は、アオハに目を向ける。が、すでに、祖母に手をがっちりと掴まれていた。祖母はその後アオハの顔をじっと覗く。
「どこから来たんだい?喉乾いてない?」
そう言いながら、祖母は半ば強引にアオハを引っ張っていく。
祖母の怒涛の質問攻めに、アオハの視線は宙を向いて黙りこくっている。アオハは助けを求めるように、ほんの一瞬だけ俺の方を見た。俺はすかさず祖母の肩を掴み止めに入る。
「おばあちゃん、落ち着いて。困ってるでしょ?」
すると祖母はぐるりとこちらを向いて今度は俺に向かって話しかける。
「アンタこんな可愛い子どこでひっかけたの?教えてくれたっていいじゃない」
アオハから、祖母の標的はまたも俺に向く。結局興奮した祖母を落ち着かせた頃には、すっかり日も暮れていた。
「……なるほどね。つまりアオハちゃんは、あの豪雨の中でアンタが助けた子で、家が川に流されちゃったから、しばらく泊めてあげたいと」
「そういうことだよ、おばあちゃん」
本当のことを話してもいいか、一瞬だけ迷った。 でも、アオハが小さく首を振ったのを見て、それ以上は踏み込まないことにする。祖母は腕を組み、少しだけ考える素振りを見せたあと、ニカっと笑って見せた。
「もちろん。いいに決まってるじゃないか」
「……ほんと?」
「当たり前だよ。困ってる子を放っとけるわけないだろ」
それに、祖母は付け加える。
「タツキが連れてきた子なら、大丈夫だろうと思ってね」
そう言って、祖母はアオハの方を見て、にこりと笑う。
「遠慮しなくていいからね。家は狭いけど、住めば都ってやつさ」
正直、最初から心配はしていなかった。それでも、こうしてはっきり受け入れてもらえたことに、胸の奥が少しだけ軽くなる。こうして俺は、祖母から正式に、アオハを家に泊める許可をもらった。
その後、俺たちは外に出て話をしていた。空はすっかり暗く、辺りを見回しても、輪郭がぼんやりと滲むばかりだ。
「そういえばさ。結局、どうしておばあちゃんにアオハが見えてたんだ?」
「あなたの祖母だけではありません。現在は、すべての人に私の存在が認識されています」
「……え、じゃあもしかして頭の上のメモリアってやつ取ったから?」
「はい。メモリアの力を使って、周囲からの認識を書き換えていました」
「なるほどな……」
「今は、その認識の書き換え?をやってないから見えてると」
そっと、ふとした疑問が湧いて俺は尋ねた。
「じゃあ、なんで最初に会った時は、見えないようにしてたんだ?」
その問いに、アオハは答えなかった。ただ、ほんの一瞬だけ、目を逸らしていた。だから俺も、それ以上は聞かなかった。その日の夜は、やけに静かだった。
現在、カクヨムをメインに焼きそばにきという名前で行なっています。ぜひそちらの方も見てください。一章は毎日投稿予定です。




