95話 二刀の聖剣が一本の絆へと変わるとき
「その神の動揺を逃すな! 『アマテラス』を使え!! それこそが、世界に唯一残された、真の『神殺しの刀』だ!!!」
ジンの魂の叫びが、荒野に激しく響き渡る。
『五魂神醒・双極斬』を受け、生まれて初めて胸元から鮮血を流して動揺する始祖神サマエル。その絶対神の狂気的な魔圧が膨れ上がるよりも早く、シンは二振りの聖剣を胸の前で静かに交差させた。
これまで共に修羅場を潜り抜けてきた、陽の聖剣と陰の聖剣。
シンは深く息を吸い込み、限界を超えた魔力の波動とともに、その魂のすべてを込めて紡いだ。
「――【陰陽合一】」
その瞬間、眩いばかりの紅蓮の陽光と蒼天の陰光が一つに溶け合い、二本の聖剣が吸い込まれるように完全に融合を果たした。真の奇跡が今、ここに成る。
光が収束したシンの両手の中に顕現したのは、世界に唯一残された神殺しの銘――『アマテラス』。
しかし、進化はそれだけでは終わらない。シンの中に宿る「五魂(五つの精霊の力)」が、待ってましたと言わんばかりにアマテラスの刃へと一斉に雪崩れ込んだのだ。五つの属性の輝きを得た刀は、七色の神々しい光を放ち、その姿をさらに高位の存在へと変貌させていく。
――『アマテラス・真』。
世界そのものを祝福するかのような圧倒的な神気が、シンの手の中で完成した。
「みんなの想いも、精霊たちの力も……全部この一撃に懸ける!!」
「――『陰陽神裂・光輪斬』!!!」
カァァァァァァンッ!!!!
シンが振り下ろした一閃は、巨大な光の輪となって荒野の空間を裂き、サマエルを真っ向から一刀両断にした。凄まじい爆音と光の粒子が荒野を満たす。
しかし――光の渦の中から響いたのは、執念に満ちた神の咆哮だった。
「おのれェェェ! 創世の主たる我が……人間に屈するなど、絶対にあってはならんのだぁぁぁッ!!」
「なっ……!?」
爆煙を吹き飛ばし現れたサマエルは、身体を深く引き裂かれながらも、その全身からこれまでの比ではない禍々しい漆黒の神威を爆発させていた。死なない。それどころか、全ての力を発動し、現世そのものを道連れにするかのような圧倒的な抵抗を始めたのだ。
「これ以上の好き勝手は……させませんわ!」
荒野に立つ風の精霊が、その美しい顔を険しく歪めて叫ぶ。
「みんな、術式を最大出力に!! 完全に、ここで封印するわよ!!」
ヒミコの声を合図に、サーラとソフィアも血の滲む唇を噛み締めながら、全魔力を魔法陣へと注ぎ込む。白銀の因果の鎖がさらに太く、幾重にもなってサマエルの巨躯を縛り付けていくが、サマエルの狂気的な抵抗の前に、魔法陣にピキピキと亀裂が入り始める。
「くっ、完全に抑え込めない……! 押し切られる……っ!」
「――いや、まだだ!!」
その時、シンの隣に、白銀の光を纏った男が並び立った。ライトだ。
ユイの回復魔法によって動けるまでに回復したライトは、愛剣を力強く握りしめ、シンの『アマテラス・真』の輝きを見つめて不敵に笑った。
「シン、お前だけに全てを背負わせはしない。俺たちの全ての絆、ここで神にぶつけるぞ!」
「ライトさん……。はい、あいつを倒して、絶対にみんなで生きて帰るんだ!」
シンとライトが同時に地を蹴った。
シンの手にする『アマテラス・真』に宿る陰陽五光の力。そしてライトの剣に宿る、すべてを切り開く究極の白銀の魔力。二人の英雄のエネルギーが空中ではじけ飛び、お互いの力を引き込み合うようにして巨大な『重力の渦』を形成していく。
世界を無に還そうとする始祖神の力に対し、二人が生み出すのは、世界を新しく創り変えるほどの混沌のエネルギー。
「これが、俺たちの最後の……!!」
「未来を切り開く一撃だぁぁぁッ!!!」
二人の咆哮が重なり、それぞれの剣が同時にサマエルの脳天へと振り下ろされる。
二人の絆が奇跡の融合を果たした、人類史上最強最大の究極合体技――。
「――『天地開闢・創世ノ一撃』!!!!」
ドゴォォォォォォォォォンッ!!!!
放たれたのは、光すらも脱出できない超重力の漆黒と黄金のエネルギー。
ヒミコたちの封印術によって完全にその場に繋ぎ止められていたサマエルは、避けることも、防ぐこともできず、その一撃を正面から完全に喰らった。
「ば、馬鹿な……我が創りし世界の、人間の、絆の力が……我が理を、書き換えるというのか……あ、あぁぁぁぁぁぁっ!!!」
重力の渦の中心で、サマエルの肉体が、そしてその傲慢な神威が、内側からバリバリと崩壊していく。ヒミコたちの強大な封印術の鎖がサマエルの因果を完全に雁字搦めにし、そこへシンとライトの『創世の一撃』が絶対神の存在そのものを、世界の深い闇の底へと永久に圧殺していくのだった。
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