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96話 新しき夜明け

最終回です


「あ……あぁぁぁぁぁぁっ!!!」


始祖神サマエルの絶叫は、シンとライトが放った『天地開闢・創世ノ一撃(グラビティ・エンド)』の超重力の渦の中に完全に掻き消された。

ヒミコたちの封印術によって因果ごと雁字搦めにされた絶対神の肉体は、内側から眩い光の塵へと崩壊していき、やがて荒野の空間へ溶けるようにして消滅した。


世界の始祖たる神が、今度こそ完全に消え去ったのだ。


「……終わった、んだ」

シンは天を仰ぎ、その場に大の字に倒れ込んだ。シンが自身の魔力によって両手に具現化させていた二本の聖剣は、役割を終えたように静かに光の粒子となって消えていく。

「ああ。俺たちの、勝ちだ」

ライトも剣を地面に突き立て、荒い息を吐きながら爽やかな笑みを浮かべた。


静寂が戻った荒野に、奇跡のような七色の光が降り注ぐ。サマエルの支配から解放された世界の理が、本来の調和を取り戻し始めたのだ。と同時に、彼らに力を貸していた全ての精霊たちが、一人、また一人と光の粒子を纏い始めた。


風の精霊や大地の精霊だけでなく、ユイに寄り添っていた水の精霊、モカ、ココアに力を貸した火の精霊、雷の精霊も、愛おしそうに彼女たちの顔を見つめている。


『人の申し子たちよ、実に見事でしたわ。私たちは元の場所……大自然の巡りの中へと還ります。ですが、私たちの絆は、いつでもその心の中に生き続けていますわ』


風の精霊が代表するように優しく告げると、すべての精霊たちはそれぞれの属性の美しい光の嵐となって天へと昇っていく。

ユイ、モカ、ココアは、これまでの感謝を込めて、優しく光に手を振って彼女たちを送り出した。バハムートやマスタードラゴンの王たちも、静かにそれぞれの領域へと去っていく。


切なくも、どこか温かい、世界の調和を取り戻した別れの儀式だった。



それから、数ヶ月の時が流れた。

神殿の脅威が去り、人間たちの世界には目覚ましい復興と、穏やかな日常が戻っていた。


かつての激戦を共に戦い抜いた仲間たちも、それぞれが新しい未来へと歩みを進めている。


神界では、ライトとカイルの二人が中心となり、世界の平和を恒久的に守るための『神界の騎士団』の再建に向けて大忙しの日々を送っていた。二人が並び立って若い騎士たちを指導する姿は、早くも新たな希望の象徴となっている。


一方、古代の英知を正しく後世に伝えるため、ヒミコが立ち上げた新たな機関では、サーラとソフィアの二人が寝食を忘れるほど新しい魔法の研究に没頭していた。精霊たちが還った後の世界で、人と魔法がどう共生していくか――彼女たちの瞳は知的な輝きに満ち溢れている。


そして、ジンの隠れ家。


「おい、美味いからって食い急ぐんじゃねえよモカ! ココア!」

「だってジンさんの作る料理、めちゃくちゃ美味しいんだもん!」

「もう、モカ! 食べすぎはためだよ!」

「そういうココアだって沢山食べてるよ!」

「だっておいしいもん」


大皿を囲んで賑やかに笑い声を上げているのは、シン、ユイ、モカ、ココアの面々。その中心にいるのは、エプロン姿で腕を組みながらも、どこか嬉しそうに口元を綻ばせているジンだ。ジンの作った特製料理の数々を、みんなで大満足で堪能している。


「あはは、本当。サマエルと戦ってた時より、今の方がみんな勢いがあるかもしれないね」

ユイが楽しそうに笑いながら、シンのコップに麦茶を注ぐ。


「ふぅ……お腹一杯! やっぱりジンさんの飯が世界一だよ!」

シンが満腹の腹をさすりながら、ぽかぽかとした陽気の中でゴロリと草原に寝転がった。

そのすぐ隣では、ガイルが、相変わらず気持ちよさそうにスースーと熱心に寝息を立てて眠っている。王の威厳はどこへやら、その無防備なキラーパンサーの寝姿に、みんなの笑みがさらに深まった。


平和になった世界。飛竜と鳳凰の剣をいつでも具現化できるシンの両手は、今はただ、大切な仲間たちの温もりを感じるためにある。


だが、この男がただの日常で終わらせてくれるはずがなかった。

ジンがギラリと目を光らせ、寝転がるシンの頭をコツンと小突く。


「おいシン、美味い飯を食って満足したなら、さっさと身体を休めとけよ」


「え? なんで、ジンさん」


シンが不思議そうに顔を上げると、ジン師匠は不敵な、そしてかつてと変わらない熱い笑みを浮かべて言い放った。


「決まってんだろ。――明日も修行だぞ!」


「えぇっ!? またあの鬼特訓〜!?」


シンの絶叫と、それを遮るようなユイたちの爆笑が、どこまでも高く、澄み渡る青空へと響き渡っていった。


(『陰陽合一ノ神殺し~飛竜と鳳凰の力を融合した俺、覚醒した二刀流の聖剣が一本の【神殺しの刀】へと至るとき~』 完結)

最後まで読んでいただきありがとうございます。

これにて完結です。最後まで書き切ることが出来ました。

ホントにありがとうございました。

 

新作

ただ三味線を弾いて暮らしたい俺、うっかり九尾の狐の封印を解いて渋々冒険に出される

も良ければ読んで見て下さい 



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