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88話 疾風怒濤の連携 カイル、ユイ

海底神殿のあちこちで、耳を劈(つんざ)くような大爆音と神威の残響が同時に鳴り響いていた。

あちらではライトが光の障壁を砕かれながらも白銀の輝きを放ち、こちらではジンが血煙を上げながら黒炎の二刀を振るっている。まさに一瞬の油断も許されない同時進行の乱戦。


「……よし、次は俺たちの番だ。みんな,、準備はいいか!」


カイルが魔剣を力強く構え、背後の三人に声をかける。


「ええ、いつでもいいです! 特訓の成果、あの馬に見せましょう!」

ユイが手を掲げ、モカとココアも完璧にシンクロした魔力を練り上げながら頷いた。


彼らの前に立ちはだかるのは、顔は馬、体は人型の巨躯を持つ『β(ベータ)』。

その手には、空間を貫くほどの鋭利なオーラを放つ巨大な槍が握られている。


ヒヒヒィィィン!!!


不気味な嘶(いなな)きと共に、βが凄まじい脚力で突進してきた。そのスピードは想像を遥かに超えており、一瞬でカイルの目の前まで肉薄すると、容赦ない神速の刺突を放ってきた。


ガガガガガガガガガガッ!!!


「くっ……あぁぁぁっ!?」


βの放つ槍の連撃は、まさに音速の嵐。カイルは限界まで研ぎ澄まされた集中力でなんとか魔剣で受け流そうとするが、一撃一撃の重さが規格外だ。風圧だけで神殿の床が消し飛び、カイルの肌がその余波でピキピキと裂けて血が滲む。


「カイルさん!!『氷連連斬(ひょうれんれんざん)』!!」


ユイがすかさず援護の魔法を放つが、βは突進の軌道すら変えず、槍の石突き(後ろ側)を軽く一振りしただけで魔法を消し飛ばしてしまう。


「ヒヒィン!」

さらにβは槍を大きく旋回させ、カイルの防御を力ずくで弾き飛ばした。ガラ空きになったカイルの胸元へ、必殺の突きが迫る。


「しまっ――」


カイルは咄嗟に身を翻すが、鋭い槍の刃が彼の脇腹を深く抉った。鮮血が舞い、カイルは激しく地面を転がる。致命傷とまではいかないが、確実に追い詰められていく。


しかし、カイルの瞳の光は消えていなかった。転がりながらもすぐさま体勢を立て直し、叫ぶ。


「今だ! みんな、あいつの足を止めてくれ!!」


カイルが体を張って懐に飛び込み、βの注意を完全に引きつけた「その一瞬」を、三人娘は見逃さなかった。


「ユイ、モカ、ココア! 特訓の成果を今ここに!!」


ユイの声を合図に、三人の魔力がこれまでにない密度で混ざり合い、完全に一つへと重なる。シンクロ率100%の超絶魔法が、今ここに解き放たれる――。


「――『氷鏡の魔導灯(エーテル・ランタン)・シンクロバースト』!!!」


三人が同時に放ったその魔法は、七色のプリズムのような美しい光の奔流となり、特訓で見せたあの圧倒的な破壊力を伴って神殿の空間を埋め尽くした。


ドガァァァァァン!!!


「ヒ、ヒヒィン!?」

βが放っていた禍々しい槍のオーラごと、その巨躯を真っ向から力ずくで押し返す虹色の閃光。まともに喰らったβの肉体は、蒸発寸前の甚大なダメージを受け、強固な鎧をバキバキに砕かれながらその場に完全に無力化(ホールド)された。三人の魂のシンクロが、神の駒を完全に圧倒したのだ。


「よくやったみんな……これで、決める!!」


完璧なお膳立てを受け、カイルが地を蹴った。

その魔剣に、特訓で掴み取った全く新しい二つの魔力が爆発的に収束していく。


右半身からは、すべてを焼き尽くす苛烈な『炎の闘気』。

左半身からは、すべてを絶対零度で凍てつかせる『氷の魔力』。


「俺はもう、みんなの足手まといじゃない……! 俺の、二重の刃を喰らいやがれ!!」


カイルの咆哮とともに、一本の剣が右側は紅蓮の炎、左側は蒼氷の冷気を纏い、神殿の空間を二色に染め上げる。異なる二つの属性を一本の刃に同調させる、カイルの限界突破の象徴。


「――『炎氷二重魔刃(フレア・ブリザード・エッジ)』!!!」


ドゴォォォォォン!!!


放たれた二つの螺旋の刃は、『氷鏡の魔導灯・シンクロバースト』の直撃によって崩壊しかけていたβの身体を木端微塵に粉砕した。

槍の猛攻に大苦戦を強いられたものの、三人の圧倒的な新大技と、カイルの渾身の新技の連打によって、最後は作戦通り綺麗に勝利を掴み取って見せたのだ。


「ヒヒィ、ィィ……ッ」


βは最期の嘶きを上げながら、光の粒子となって消滅していった。


「よしっ! 決まったね!」

ユイたちがハイタッチを交わし、カイルも脇腹の傷を抑えて激しい呼吸を整えながら、剣をサッと納める。


「みんなのおかげだ、ありがとう。……さあ、残るはあと一体だな!」


カイルたちが視線を向けた先では、大地の精霊の力を宿したガイルが、最後の駒――神聖なる麒麟の『σ(シグマ)』と対峙していた。


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