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86話 神代の尖兵 ライト 

海底神殿を揺るがす光柱が収まり、そこに現れた四体の『始祖神の四駒』。

冷徹な神の魔力を放つ彼らは、侵入者を排除する機械のように、静かに、しかし確実な殺意を持ってそれぞれの武器を構えた。


「おいおい、どれもこれもとんでもない化け物揃いだな……!」

カイルが冷や汗を流しながらも、愛剣を固く握り直す。


「私たちの特訓の成果を見せる時よ!」

ユイが叫び、モカとココアもそれぞれの魔力を編み上げ始める。


敵の狙いは、二刀を完成させたシン。

だが、シンを始祖神の元へと届けるため、そしてヒミコたちが封印術を見つけ出す時間をもぎ取るため、最強の先達たちが前へと踏み出た。


「シン、ここは俺たちに任せておけ。お前は来るべき瞬間のために、その力を温存しておくんだ」

ライトが黄金の光を全身から噴き上げながら、穏やかに、しかし絶対的な決意を込めて告げた。


「まずは僕から行かせてもらうよ」


大型の剣を静かに引きずりながら、人型の駒『α(アルファ)』が前に歩み出た。

その大剣から放たれるのは、空間そのものを歪ませ、周囲の物質を自重で押し潰すほどの圧倒的な重力と破壊の魔力。αが防壁を崩すように大剣を振り上げた瞬間、ライトがその前に立ちはだかった。


「お前の相手は私だ、人型」


ライトの背後で、光の精霊が美しく輝く。

精霊の力を完全に宿したライトの黄金のオーラは、聖なる太陽そのものの輝きを放っていた。


――オオオオオッ!!!


αが地を割り、大剣を激しく振り下ろす。その一撃は、海底神殿の地面を何十メートルにもわたって一瞬で叩き割る破壊力だった。ライトは即座に障壁を展開する。


「聖光展開――『天光の盾(アエトス・シールド)』!」


ライトの前に展開されたのは、光の精霊の魔力によって限界突破した、極大の光の障壁。

しかし――ズウゥゥゥン!!! と天地を揺るがす衝撃音と共に、ライトの表情が驚愕に歪んだ。


「なっ……光の盾が、重力で『押し潰されて』いく……!?」


αの大剣が纏う不条理な重力波は、ライトの聖なる光をも歪ませ、強引にへし折ってきたのだ。パリン、とガラスが割れるような凄まじい音を立てて、ライトの絶対防御である『天光の盾』が木端微塵に砕け散る。


「がはっ……!?」


正面から破壊の衝撃を浴びたライトは、受け流しきれずに地面を激しく転がった。

鎧の隙間から鮮血が吹き出し、神殿の床に赤が飛び散る。


「ライトさん!」

シンの叫び声に、ライトはなんとか聖剣エクスカリバーを杖代わりにしながら立ち上がった。

しかし、その身体のダメージは深刻だった。息は絶え絶えで、精霊の力を宿しているはずの黄金のオーラが、チカチカと小さく明滅している。


αは容赦なく追撃の歩みを進める。

大剣に禍々しい神威の魔力を極限まで収束させ、一撃でライトをこの空間ごと消し飛ばす術式を展開し始めた。迫り来る、絶対的な死の予感。


「……はは、流石に強いな。精霊の力を借りても、これほどとは……」


ライトは血を吐き出しながらも、不敵に微笑んだ。

そして、あえて『聖剣エクスカリバー』の輝きを完全に消し、鞘へと収めた。頼るべき絶対の刃を、この絶体絶命の瞬間にあえて排したのだ。


(聖剣の出力に頼っていては、あの重力大剣の破壊力には勝てない。私の魂の奥底、アデル様から受け継いだ純粋な闘気の源流――それだけを、今ここで爆発させる!)


ライトがそっと目を閉じた瞬間、神殿の空間を包んでいた重力波が、ピタリと止まった。

いや、止まったのではない。ライトの身体の奥底から噴き出した、かつてないほど濃密で純粋な『光の闘気』が、αの不条理な重力を力ずくで押し返したのだ。


「――『光魂神醒(こうこんしんせい)』!!」


ライトが目を開いた瞬間、彼自身が周囲のすべてを白銀に染める太陽そのものの輝きとなった。

αの放った超極大の破壊魔力波がライトを飲み込もうとするが、ライト自身から放たれる圧倒的な光の闘気の前に、触れた先から霧散し、光の粒子へと還元されていく。


「な、に……!?」

αの無機質な目に、初めて明確な動揺が走った。


「これで終わりだ、始祖の駒よ。――僕の全霊を受け取れ!!」


ライト自身の命を削るように溢れ出る極限の光の闘気を、聖剣エクスカリバーが吸い込み、一本の巨大な光の刃へと変貌させる。


「――『真・聖王十字斬(シン・グランド・クロス)』』!!!」


キィィィィィン!!!


神殿全体が一瞬で真っ白な光に包まれた。

次の瞬間、ライトがαの背後へと泥臭く着地し、そのまま力なく崩れ落ちるように膝をついた。


その背後で、剛剣のαは全身から黄金の光のヒビを走らせ、断末魔の叫びすら上げることなく、静かに光の塵となって消滅していった。


「ハァ、ハァ……っ、クソ……本当に、危なかった……」


ライトは鞘に収めた剣を支えに、辛うじて意識を保っていたが、身体はボロボロで魔力も完全に空っぽだった。

地獄のような防衛戦。ライトの満身創痍の背中が、この戦いの過酷さを物語っていた。


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