7話 修行〜その4
陰陽合一ノ神殺し~二刀の聖剣が一本の絆へと変わるとき~
――ギィィィィンッ!!!
魔界の荒野に、激しい火花と澄んだ金属音が鳴り響く。
特訓が始まってから、数ヶ月の月日が流れていた。
シンの前に立ち塞がるジンが繰り出すのは、黒鉄の訓練用木刀による容赦ない怒涛の連撃。だが、今のシンはかつてのように泥を舐めて転がるだけの少年ではなかった。
「ハァッ……!!」
シンの全身を、隙なく覆う漆黒の衣――自力で完璧に制御された『暗黒闘気』。
そして、その両手には眩い光を放つ二振りの聖剣がしっかりと具現化されていた。
右手には、太陽の爆発的な破壊力と飛竜の剛力を宿した赤蓮の聖剣『日輪』。
左手には、月の静けさと鳳凰の澄み渡る気を宿した氷蒼の聖剣『月読』。
(右で赤蓮の剛力を滾らせ、左で氷蒼の静寂を保つ……別々の呼吸を、一つに!!)
「いい顔になったじゃねえか、小僧!」
ジンの二振りの黒剣が、空気を切り裂き、シンの首元と胴体目がけて同時に迫る。
かつてなら見切ることすらできなかった神速の筋。だが今のシンには、右半身と左半身で別々の波長を刻むことで、その全てが克明に見えていた。
◆ 一閃、そして合格の刻
キィィィィンッ!
シンの右手――赤蓮の『日輪』が、太陽の剛力をもってジンの上段からの大振りを力任せに弾き返す! 激しい衝撃波が荒野の地面を爆ぜさせた。
「なっ……!?」
生じた、わずか一瞬の隙。
シンの左手――氷蒼の『月読』が、月の静寂を纏い、まるで空間をすり抜けるかのような無音の軌跡を描いてジンの懐へと閃いた。
ガァァァァンッッ!!!
「――そこだあッ!!」
激しい衝撃音とともに、ジンの手に握られていた黒鉄の木刀が、シンの放った氷蒼と赤蓮の閃光によって根元から派手に叩き折られ、宙を舞った。
「ハァ……ハァ……ハァ……っ!!」
刃を収め、荒い息をつきながらジンを見つめるシン。
ジンの手に残されたのは、短くなった木刀の柄だけだった。
ジンは折れた木刀を見つめると、ふっと呆れたように、そして誇らしげに口元を破顔させた。
「……ハッ! 合格だ、小僧」
「ジ、ジンさん……!」
「右の剛力と左の静寂、そして暗黒闘気……見事に自分のものにしやがったな。最低限の修行は合格だ!」
隠れ家のバルコニーからは、その光景を笑顔で見守る二人――ヒミコと、そしてユイの姿があった。
今のユイもまた、魔導書を卒業し、その両手にはヒミコの指導によって開花した、美しく強固な桃色の聖なる結界と治癒の光が宿っている。
「すごいよ、シン……! 本当に、ジンの木刀を折っちゃうなんて……!」
「ユイ……!」
駆け寄ってくるユイの姿を見て、シンは自分の両手を見つめた。
村で「呪われ子」と蔑まれ、誰にも見向きもされなかった両手。だが今は、右手に太陽と飛竜の赤蓮、左手に月と鳳凰の氷蒼、そして何より『大切な人を護るための力』がしっかりと宿っている。
「ユイ、俺……少しだけど強くなったよ。もう誰にも、ユイを傷させない!」
「うん! 私もね、シンの隣で戦える魔法を覚えたんだよ。だからこれからは、ずっと一緒だよ!」
二人は顔を見合わせ、晴れやかな笑顔を交わし合った。
その様子を、煙管をくゆらせながら満足そうに見つめていたヒミコが、長椅子からゆっくりと立ち上がる。
「あらあら、いい光景ねぇ。……さてと、ジン? 試練が終わったなら、次は美味しいものでも振る舞ってあげたらどうかしら?」
ジンは短くなった木刀を腰に差すと、豪快に自分の頭をガシガシと掻き、シンとユイに向かってニッと笑いかけた。
「おう、そうだな! 死ぬほど体を動かした後は、胃袋に叩き込むに限る!」
ジンは大爆音で鳴るシンの腹の虫を聞き逃さず、ポンとシンの肩を力強く叩いた。
「よし! 修行はここまでだ! お前ら、腹減ったろ? ……メシにしようぜ!!」
「「はいッ!!」」
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