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73話 氷鏡の魔導灯(極限の完全同調)

火と雷の二大精霊が放った、世界を消し去らんとする螺旋の破壊光線――。

大地を融解させ、空気を爆発させながら迫り来るその光を前に、ユイは静かに瞳を閉じた。


(怖くない。モカがいて、ココアがいて……ソフィアちゃんがくれた言葉がある)


ユイがそっと目を開けた瞬間、その瞳は澄み渡る絶対零度の蒼へと染まっていた。


「水の精霊よ……私に、みんなを守る盾を! ――『氷鏡の魔導灯エーテル・ランタン』!!」


キィィィィィン……ッ!!!


ユイの突き出した両手から、かつてないほど巨大な蒼氷のドームが展開された。

ただの氷ではない。その内側には、月明かりを浴びた湖面のように美しい、無数の『光の鏡』が幾重にも張り巡らされている。


ドガァァァァァン!!!


精霊たちの放った業炎と雷撃の光線が、蒼氷のドームへと激突した。

凄まじい衝撃波が走り、周囲の空間が激しく歪む。しかし、ソフィアの助言通り、その破壊のエネルギーは氷の壁を破壊することなく、内側の鏡の術式によって滑らかに滑り、ドームの内壁をぐるぐると円を描いて高速で循環し始めた。


「――な、何だと……!? 我らの合体攻撃が、吸い込まれていく……!?」

「バカな! 破壊されず、熱量すらも内側に閉じ込められているというのか!」


驚愕する精霊たち。

氷のドームの中では、閉じ込められた業炎の赤、雷撃の紫、そしてユイの蒼氷が激しく交ざり合い、まるで一つの巨大な、そして神聖な『光のランタン』のように美しく輝いていた。


「ぐっ……、あ……あぁっ……!」


だが、その膨大なエネルギーを繋ぎ止めるユイへの負荷は凄まじい。

あまりの熱量と電撃の圧力に、ユイの足元がミシミシと沈み込み、背中の水翼が激しく明滅する。


「ユイ!!」

シンが思わず一歩を踏み出すが、それをガイルが片腕で制した。

「待てシン! 今あいつらの中に割り込んだら、せっかくの綺麗な循環のバランスが崩れて大爆発を起こす。……信じて待つんだ!」


「ユイ、今だよ! 僕たちの魔力も、全部そのランタンの中に流し込むから!」

「うん! びりびり、メラメラ、全部ぜんぶ、混ぜちゃってぇぇ!」


モカとココアがユイの背中にそっと手を添える。

二人の純粋な想いと、限界を超えて引き出された『業炎』と『雷』の魔力が、ユイの身体を通じてドームの中へと直接流れ込んでいく。


「みんな……ありがとう……っ! ――いっけぇぇぇぇ!!!」


ユイが両手を天へと突き上げる。

すると、内に秘められた全てのエネルギーを完璧に調和・中和した『氷鏡の魔導灯』の球体が、眩いばかりの三色の光を放ちながら、精霊たちの頭上へとゆっくりと舞い上がっていった。


その光は、精霊たちを傷つけるための「牙」ではない。

すべてを優しく照らし、包み込むための、文字通りの『ランタンの灯火』。


光が弾け、戦場全体を神聖な輝きが満たしていく。

その温かく、どこか懐かしい魔力の波動に触れた瞬間、火と雷の精霊はハッと息を呑み、動きを完全に止めた。


「この……優しくも清らかな気配は……」

「……同胞、水の精霊……なのか……?」


光の粒子が蛍のように舞い散る中、精霊たちの怒りに燃えていた瞳に、真実の光が写り込もうとしていた。


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