58話 光柱の帰還(反撃の狼煙)
「みんな、行こう。ライトさんたちのところへ!」
シンが迷いのない力強い声で告げると、ユイはその大きな瞳に溜まっていた涙をゴシゴシと拭い、力強く首を縦に振った。
「うん! 男の人たち、幻獣界で今も私たちのために必死に戦ってくれているの。一刻も早く急がなきゃ!」
「待ちなさい。私も行くわ。サーラ、ソフィア、神界の最低限の防衛はアデル様と残りの神兵たちに託し、私たちは最前線へ合流するわよ!」
最高位の魔術師であるヒミコの毅然とした号令に、「はい!」とサーラとソフィアが声を揃えて力強く応じる。
シンが右手を天に掲げると、周囲の空間から眩い純白の光が一堂に集束し、かつて彼を苛んでいた暴走の闇を完全に排斥した、神聖なる『日輪の剣』と『鳳凰の剣』がその両手に美しく具現化した。さらに、彼の隣に立つユイの背中で、水の精霊の翼がザァッと大きく、美しく羽ばたく。
「アデル様、行ってきます!」
「うむ、世界を……すべての光を頼んだぞ、神殺しの少年よ!」
最高神アデルの威厳に満ちた見送りを受け、一行は足元に展開されたまばゆい光の円陣へと飛び込み、激戦の続く幻獣界へと時空を超えて転移した。
――その頃、幻獣界の最前線。
「はぁ、はぁ……くそっ、本当に底なしだな……!」
勇者ライトは、傷だらけになった聖剣『エクスカリバー』を辛うじて杖代わりに地面へと突き立て、肩で激しく息を繰り返していた。
ライトたちの周囲には、これまでの死闘で倒してきた数千、数万の魔獣の残骸が山のように転がっている。しかし、血の赤色をした不気味な日食の空からは、それを遥かに上回る凶悪な魔獣の増援が、今もなお絶え間なく豪雨のように降り注いでいた。
「ライト、弱音を吐くにはまだ百年早いぜ……!」
ジンもまた、全身から溢れる黒い闘気を極限まで振り絞り、迫り来る魔獣を執念で両断していくが、その刃の軌跡には確実な疲労の色が混じり始めている。カイルの魔法剣の光も徐々に弱まり、大地を駆ける真の姿のガイル、上空のバハムートも、無数の魔獣による物量作戦の包囲網に、徐々に背後へと押し込まれつつあった。
その魔獣の群れの最奥から、歪んだ空間をメリメリと引き裂いて、ひとつの巨大な影がゆっくりと這い出てくる。
それは、ルドルフの底なしの闇の力を吸収し、神をも見下す禍々しい巨躯へと変貌を遂げた魔王サタンの姿であった。その背後には、強奪された3つのクリスタルが、世界を完全に滅ぼすための闇のエネルギーを放ちながら不気味に回転している。
「フハハハハ! 往生際の悪い虫ケラどもめ! 世界はすでに我が永久の闇に完全に包まれた! お前たちが縋る神殺しのガキも、今頃は呪いに内側から焼き尽くされて無様に死んだはずだ! お前たちに、もう希望など残されてはおらんのだよ!」
サタンがその巨大な爪の手をライトたちへ向けて掲げ、すべての命を一瞬で消滅させる極大の闇の魔力弾をその中心に形成し始める。
「ここまで、なのか……。シン……」
ライトが悔しげに奥歯を食いしばり、絶望の天を仰いだ――まさにその瞬間であった。
ドゴォォォォォン!!!
サタンの魔力弾が放たれるよりも早く、天空から降り注いでいた魔獣の群れを、天界から真っ直ぐに直撃した一本の「巨大な純白の光の柱」が激しく貫き、一瞬にして数千匹の魔獣を消滅、蒸発させた。
「な、何だと!?」
サタンが驚愕にその目を大きく剥く。
凄まじい光の残光がゆっくりと収まったその中心――大地の最も苛烈な最前線に、一人の少年が静かに、地を踏み締めて着地していた。
その両手には、神聖な輝きをこれでもかと放つ二振りの聖剣。そして彼の背後には、水の翼を神々しく羽ばたかせたユイ、ヒミコ、サーラ、ソフィア、そして妖精のモカとココアが凛々しく並び立っている。
「シン……!?」
ライトの瞳に、一瞬にして黄金の希望の火が再び激しく灯った。
シンはゆっくりと振り返り、満身創痍になりながらも自分を信じて待ってくれていた親友に向かって、ハッキリと、優しく微笑んだ。
「待たせてごめん、ライトさん。――僕たちの世界は、絶対にこんな闇なんかには渡さない!」
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