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53話 三位一体の閃光(トリニティ・バースト)

グルァァァァッ!!


忘却の洞窟の暗闇から、サタンの闇の魔力によって狂暴化した魔獣たちが、鋭い爪を剥き出しにして四方八方の壁や天井から牙を剥いて襲いかかってきた。


「ひゃああっ! ユイ、右からもたくさん来てるよ!」


「モカ、ココア、私の後ろに隠れて!」


案内役の二人を素早く自身の背中へと庇いながら、ユイは精神を集中させ、凛とした声で呪文を唱えた。


「――『氷連連斬ひょうれんれんざん』!!」


ユイの突き出した手から放たれた、無数の鋭利な氷の刃が、迫り来る魔獣たちの急所を寸分の狂いもなく正確に貫いていく。しかし、闇の恩恵を受けた魔獣たちは一切の恐怖を失っており、傷を負っても怯むことなく、さらに数を増して次々と押し寄せてきた。


「ユイ、焦っては駄目。まずは足元を狙って奴らの機動力を削ぎなさい! ――集え、光の刃――『フォトン・エッジ』!」


冷静に戦況を見極めていたサーラが、空間に無数の光の刃を展開して一斉に射出する。鋭い光の軌跡が魔獣たちの足を正確に縫い止め、その動きを完全に封じ込めた。


「さすがサーラさん……! 先輩たちばかりに格好いいところは譲りません、私もみんなを絶対に守ります! 『セイクリッド・ブレス』!!」


ソフィアが胸の前で聖杖を握りしめて深く祈りを捧げると、サーラから徹底的に教わった高度な支援魔術の清らかな光が、ユイたちの身体を優しく包み込んだ。

魔獣の群れが吐き出していた毒の霧が瞬時に無効化され、それどころかユイとサーラの体内に流れる魔力の回復速度が、劇的な勢いで跳ね上がっていく。


「みんな、素晴らしい連携よ。だけど――本尊が動き出すわ。全員、一歩下がりなさい!」


師匠ヒミコの鋭い警告の声と同時に、洞窟の頑強な天井を派手に破壊しながら、ひときわ巨大な質量を持った影――『ダークネス・オーガ』が、地響きと共にその姿を現した。その丸太のような腕力は、ただ一撃で周囲の岩盤を粉砕するほどの圧倒的な破壊力を秘めている。


「グオオオオオオッ!!」


ダークネス・オーガは鼓膜を震わせる咆哮をあげると、手にした巨大な棘付きの棍棒を、ユイたちの頭上へ向けて容赦なく振り下ろした。


「させない……! お兄ちゃんたちに、シン君の命を託されたんだから! ――『ハイ・プロテクション』!!」


ソフィアは自身の限界以上の魔力を一気に振り絞り、サーラ直伝の最上位防御障壁を目の前の空間に力強く展開した。


ズガァァァン!!


洞窟全体が激しく陥没するかのような凄まじい衝撃波と爆音。しかし、ソフィアが必死に歯を食いしばって張った光の壁は、オーガの圧倒的な一撃をヒビ一つ入ることなく完璧に受け止めてみせた。


「よくぞ耐えたわ、ソフィア! サーラ、ユイ、私に呼吸を合わせなさい。この一撃で一気に決めるわよ!」


ヒミコが陣形の中央で高々と己の杖を掲げると、忘却の洞窟の空気そのものがミシミシと鳴動するほどの、神聖で、圧倒的な密度の魔力がその一点へと収束していく。


「「はい、先生!!」」


サーラとユイがヒミコの左右に息を合わせて並び立ち、同時に自身の魔力を師の波長へと完全に同調させる。偉大なる至高の魔導師を中心に、三人の異なる魔力が美しく重なり合い、巨大な魔法陣を描いていく。


「聖なる光よ、すべての闇の拠り所を塵へと排斥せよ――『トリニティ・レイド・バースト』!!!」


ヒミコの完璧な統率によって放たれたのは、三位一体の超極大光属性複合魔法。

視界のすべてを真っ白に染め上げる眩い光の奔流が、薄暗い洞窟内をまるで真昼の太陽のように照らし出し、猛り狂うダークネス・オーガの巨体を、その周囲に群がる無数の魔獣ごと一瞬にして完全に飲み込んだ。


「ギャアアアアアアッ!?」


耳を聾するほどの断末魔の叫びとともに、あれほど悍ましかった魔獣の群れは、闇の霧を遺すことすら許されず、綺麗な光の粒子となって完全に消滅した。


激しい戦闘の余韻を残しながら、心地よい静寂が戻った洞窟。


「はぁ、はぁ……やった、の……?」


ソフィアが聖杖に身体を預け、肩で激しく息をしながら小さく呟いた。


「ええ、みんなの頑張りのおかげよ。ソフィアの張った防壁も、ユイの魔術の追撃も完璧だったわ」


サーラが優しく微笑みながら、限界を超えて戦い抜いたソフィアの頭をそっと撫でた。ヒミコも満足そうに小さく頷き、暗闇の先にある確かな気配を見据える。


「素晴らしいコンビネーションだったわ。でも、目的の泉の気配はまだこの先よ。モカ、ココア、案内を頼めるかしら」


「うん! みんな、すっごく格好よかった! 癒やしの泉はもうすぐこっちだよ、急ごう!」


モカとココアが嬉しそうに飛び跳ねる。

全員でしっかりと手を取り合い、見事な勝利を収めた一行は、愛するシンが待つ神界へと無事に帰還するため、さらに洞窟の奥深くへと確かな一歩を踏み進めるのだった。


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