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39話 奈落の謁見

陰陽合一ノ神殺し~二刀の聖剣が一本の絆へと変わるとき~


神界が復興の暖かな光と、戦いを終えた英雄たちの賑やかな笑い声に包まれている、ちょうどその頃。


遥か奈落の底。重くどす黒い雲が不気味に渦巻く「魔獣界」の深淵には、一切の光を拒絶する漆黒の謁見の間が存在していた。


水を打ったような、肌を刺す凍りつくような静寂の中。

広大な謁見の間の最奥にある玉座へ深く腰掛けたサタンは、その醜悪な唇に不敵な笑みを浮かべていた。


サタンの目の前には、禍々しい輝きを放つ3つのクリスタルが、互いに引かれ合うように怪しく共鳴しながら宙に浮かんでいる。


先の戦いの最中に、神界から強奪した眩い『光のクリスタル』。

もともとこの魔獣界の底でサタン自身が所持していた、底なしの『闇のクリスタル』。

そして――つい先刻、奈落へと同時にもたらされたばかりの、鈍い輝きを放つ『土のクリスタル』。


「……サタン様。龍神界より奪いし土のクリスタル、確かにここに」


すう、と漆黒の影から這い出るようにして、一人の男が姿を現した。

男の全身からは、生き物ならざる不気味な死霊の瘴気が、ゆらゆらと陽炎のように立ち上っている。男の名はドロス。かつては龍神界の王であるマスタードラゴンの最側近として栄華を誇った男だ。


しかし彼は、先の大戦においてマスタードラゴンを裏切り、その激怒の手によって無惨に命を絶たれたはずの男であった。


「フハハハ! 見事だドロス。かつてマスタードラゴンに討たれ、無念のまま泥のように死んだお前の執念……我が闇の力で黄泉路から呼び戻した甲斐があったというものだ」


サタンの傲慢な言葉に、ドロスは生者の光を失った虚ろな瞳を妖しく光らせ、床に額をこすりつけた。

彼の肉体は今、サタンの強大な闇の力によって、歪んだ形で現世に繋ぎ止められているに過ぎない。しかし、その胸に燻るマスタードラゴンへの、そして世界への怨念だけは、本物だった。


「……ククク、我が故郷を滅ぼし、あの傲慢なるマスタードラゴンへの復讐を果たすためなら、この魂、喜んでサタン様に捧げましょう……」


地を這うような邪悪な声が、謁見の間に響く。


「良い心がけだ。あの傲慢なカムルが人間の小倅どもに討たれた時はどうなるかと思ったが、むしろ神界や龍神界が奴らの勝利の余韻で混乱している今こそ、我らにとって最大の好機」


サタンはゆっくりと玉座から立ち上がり、燃え盛る業火のような眼光で、遥か彼方の空を見つめた。


3つのクリスタルが今、この地に揃った。

世界を創り変えるための儀式に必要となる、残された最後のピースはただ一つ。


「残るクリスタルは、幻獣界にある『風』のみ。我が主、元王ルドルフ様の完全復活は、もう目の前だ……!」


魔獣界の王の地鳴りのような咆哮が、地獄の底に激しく響き渡る。


神界を救ったシンのあずかり知らぬところで、世界を再び混沌と恐怖で塗りつぶすための、新たなる侵略の火蓋が――いま静かに切られようとしていた。

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