↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
39/97

38話 神界の休日

陰陽合一ノ神殺し~二刀の聖剣が一本の絆へと変わるとき~


偽神カムルが完全に消滅し、本物の暖かな光を取り戻した神界。

最高神アデル様の指揮のもと、崩壊した白亜の宮殿の再建がさっそく始まっていた。


「おい、そこの瓦礫をもっと右に運べ! 手際が悪いぞ!」


「チッ、なんで俺がこんな神界の泥仕事を手伝わなきゃならねえんだよ……」


大汗をかきながら不貞腐れたように大きな瓦礫を担いでいるのは、他ならぬジンだった。その隣では、長煙管を優雅にふかしたヒミコが「アデル様に直々に頼まれちゃったんだから仕方ないじゃない。ほらジン、サボらないで手を動かす」と楽しそうに笑っている。

カイルとライトも「神界を狂わせたのは俺たちの責任でもある。全力で償わせてもらう」と、実直な面持ちで巨石を黙々と運んでいた。


一方、その賑やかな喧騒から少し離れた空中庭園――。


『では、我らはこれにて龍神界へ戻る。シンよ、また会おう』


マスタードラゴンが大きな黄金の翼を広げ、幻獣王バハムートと共に天空の彼方へと去っていく。残されたシンたちがその雄大な背中を見送っていると、隣にいた巨漢のガイルがガハハと豪快に笑った。


「さて、俺はどうするかねえ。……ま、シンの小僧と一緒にいた方が面白そうだし、一緒についてってやるよ!」


「えっ! ガイルさんがついてきてくれるのは嬉しいけど……その、ガイルさんの姿のままだと、人間の街ではみんな怖がっちゃうかも……」


シンが恐る恐るその凶悪な容姿を指摘すると、ガイルは「あー、確かにそうだな!」とあっさり納得し、不敵にニヤリと笑った。


「幻獣界の元・王を舐めるなよ? これくらいお手の物だ。――フンッ!」


ガイルが軽く気合を入れると、その強靭な巨躯が瞬く間に白い煙に包まれた。

煙が徐々に晴れた後に現れたのは、くりくりとした大きな愛らしい目を持つ、一匹の小さな【三毛猫】の姿だった。


「ニャーン(これで文句ねえだろ?)」


「わぁ! かわいいーーーっ!」


ユイとソフィアが瞬時に目の色を変えてガイル(猫)に駆け寄り、一斉にその小さな身体をモフモフとし始める。だが、それを見た妖精のモカとココアは、顔を真っ青にしてガタガタと震えだした。


「わ、わわわ……ユイ、ソフィア、危ないボク……!」


「猫ちゃんになっても中身は元王様なんだよーっ!?」


いくら見た目が愛くるしくなろうと、相手はあの世界を震わせた恐怖の幻獣の王だったガイルなのだ。二人の恐れを知らない行動に、小さな聖獣たちは完全に困惑して距離を取っていた。当のガイルは「ニャ、ニャーオ!(こら、やめろ、俺は元・幻獣王だぞ!)」と必死にピンクの肉球で抵抗するが、少女たちの愛の猛攻には全く通用していなかった。


「ふふ、じゃあ神界の再建はカイルさんたちに任せて、私たちはソフィアちゃんとサーラさんに、神界を案内してもらいましょう!」


ユイの微笑ましい提案で、シン、ユイ、モカ、ココア、そして猫になったガイルの一行は、神界観光へと繰り出すことになった。


「ここが神界の名物、聖光の果樹園だよ! この黄金のリンゴ、すっごく美味しいんだから!」


案内役のソフィアが、木に実ったピカピカと輝く黄金の果実を差し出す。ちょうど激戦を終えてお腹がペコペコだった一同は、さっそくその果実に勢いよく齧り付いた。


「ん〜〜! シャキシャキしてて甘くて美味しい!」


「生き返るボク〜!」


みんなが幸せそうに頬を緩める中、シンはふと、遠くの宮殿で忙しそうに働いているカイルたちを見つめた。


「そういえばソフィアちゃん、ライトさんとカイルさんって、昔からあんなに真面目だったの?」


シンが素朴な疑問を尋ねると、ソフィアはクスクスと悪戯っぽく笑いながら、神界の「裏話」を暴露し始めた。


「ううん、全然! カイルさんって、普段はあんなに強面で厳しい騎士様なのに、実は大の虫嫌いなのよ? 昔、任務中に小さな芋虫を見て悲鳴を上げて気絶したことがあるんだから!」


「ぶはっ! あのカイルさんが芋虫で気絶!?」


シンが思わず口の中のリンゴを吹き出しそうになる。すると、サーラさんも楽しそうに便乗して、ライトの秘密を話し出した。


「ライトも負けてないよ。昔、ソフィアちゃんにカッコいいところを見せようとして、神界の崖から飛び降りる荒技を披露したんだけど、着地に失敗してそのままお尻からサボテンの群生地に落ちてね……。一週間くらい、お尻のトゲが抜けなくて半泣きで過ごしてたんだから」


「ちょっとサーラさん! お兄ちゃんのそんな恥ずかしい話、シンくんに言わないでくださいよ!」


ソフィアが真っ赤になってポカポカと怒り、シンは大爆笑した。すると今度は、シンがイタズラっぽく目を輝かせて言った。


「カイルさんたちも面白いけど、僕の師匠のジンだって負けてないよ。あの人、あんなに怖くてぶっきらぼうなのに、実はものすごい『パン作りの名人』なんだから。僕たちが旅立つ前も、毎朝すっごくフカフカで美味しいクロワッサンを焼いてくれたんだ」


「そうそう! ジンさんの焼くメロンパン、外はカリカリで中はモチモチで、本当に絶品なんだよね!」


ユイも嬉しそうに同意する。その瞬間だった。


「ニャッ、ニャッハハハハハハハハハ!!!!!」


それまでユイたちに大人しく撫でられていた三毛猫のガイルが、突仰向けにひっくり返って腹を抱えるようにして大爆笑し始めた。


「ニャーオ、ニャニャーン!(あの黒剣を振り回す狂犬のジンが、毎朝パンをこねて焼いてるだと!? ハハハ、傑作だ! 今度からパン屋のジンって呼んでやるぜ!)」


見た目はただの猫の鳴き声でありながら、その念話は大爆笑と共にみんなの脳裏に直接響き渡る。モカとココアは「ジンさんのパン、そんなにツボだったのー!?」と、相変わらず困惑し続けるのだった。


神界には、これまでの緊迫した戦いを忘れさせるような、穏やかな時間が流れていた。


――しかし、その平和な神界の遥か真下。

どす黒い雲が不気味に渦巻く「魔獣界」の深淵では、サタンが持ち帰った光のクリスタルを巡り、世界を再び恐怖に陥れる恐るべき陰謀が、着実に次の段階へと進んでいたのだった。

最後までお読み下さいましてありがとうございます。感想書いて貰えれば嬉しいです。 第1章終わりです。引き続き第2章をよろしくお願いします。良い評価付けて貰えると励みになります。お願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。