37話 天地開闢
陰陽合一ノ神殺し~二刀の聖剣が一本の絆へと変わるとき~
「お前が偽りの神か。……飛竜と鳳凰の仇、ここで討つ」
漆黒の日本刀――『日輪』と『月読』が融合して新生した至高の聖剣『アマテラス(天照)』を構えたシンの背後から、凄まじい地響きが轟いた。
正面戦場を完全に蹂躙し、制圧した師・ジン、ガイル、そして巨躯を誇るマスタードラゴンが、満を持してこの最上階へと合流を果たしたのだ。
さらには、聖天最高位の魔導で完全回復を遂げた勇者ライトが、聖剣『エクスカリバー』を力強く握りしめ、シンのすぐ隣へと並び立つ。
「おのれ……裏切り者の騎士どもに、忌々しい地上の眷属どもめが……!」
玉座の間から彼らを見下ろす神カムルは、その傲慢な顔を屈辱と怒りで激しく歪めた。しかし次の瞬間、カムルの目はシンが持つ漆黒の刃へと釘付けになり、その表情が驚愕によって凍りついた。
「ば、バカな……っ!? なぜ貴様がその刀を持っている……! そんなはずはない! 『アマテラス』は、ライトが確実に破壊したはずだァァァッ!!! なぜ今ここに存在する!!!」
「な……っ!? アマテラスだと……!? 僕があの時、この手で確かに叩き割ったはずのあの刀が、なぜ……!」
ライトもまた、シンの手にある漆黒の美しき刀身を見て、驚愕に目を見開いた。シンは前方の敵を見据えたまま、隣のライトへと力強く、一切の迷いのない声を届ける。
「ライトさん、あなたが壊した天照の破片は、日輪と月読として生まれ変わり……そして今、二匹の聖獣の意志と共に一つになって新しく蘇ったんです。――偽りの神カムル、お前を倒すためにね!」
シンが鋭く叫び、アマテラスの漆黒の刃から、神聖なる陰陽の闘気を限界突破の勢いで爆発させた。
「フ、フン……! 幻影を見せているだけだ! 【神の光輪】がある限り、貴様らの攻撃など一切届かぬわ!」
狂乱したカムルが、その頭上に輝く光輪から、空間ごと圧殺するような絶望的な神の障壁を展開する。だが、その絶対防御の壁に向け、地上の最強たちが一斉に牙を剥いた。
『我が龍息を防ぎきれると思うなよ、偽りの神よ!』
「オラァッ! 神様なら、この『波動拳』を百発くらい耐えてみせろ!」
「ククク、神殺しとは最高の興奮だな。刻め――『暗黒・絶禍斬』!!」
マスタードラゴンの黄金のブレス、ガイルの空間を割る波動拳、そしてジンの放つドス黒い暗黒闘気の斬撃が、カムルの障壁へと同時に、真っ向から着弾した。
――ドゴォォォォォォォンッ!!!!!
「ぐ、ぬぅぅっ!? なんという威力だ……!」
地上最強の面々による総攻撃を受け、さしものカムルの障壁に激しい亀裂が走る。だが、それだけでは決定打には至らない。凄まじい復元力で障壁が修復されようとするその一瞬の隙を見逃さず、勇者ライトが限界を超えた速度で地を蹴った。
「今だ……! 俺の命に代えても、この隙は維持する! シン、行けぇぇぇぇッ!!!」
ライトは自身の全闘気をエクスカリバーへと捧げ、修復されかける障壁の亀裂へと強引に剣を突き立てた。バキバキと耳障りな音を立てて、神の光の壁が完全に静止する。ライトの身体がカムルの神威の反動によって血を吹き出すが、彼は一歩も退かなかった。
ライトが作り出した、文字通り命懸けのたった一瞬の好機。
「ライトさん……! ありがとう……!!」
シンがアマテラスの刀身を構え、天空へと高く跳躍した。
アマテラスの真の力が少年の決意に応え、漆黒の刀身に太陽の黒炎と鳳凰の蒼き凍光が、あり得ざる奇跡の融合を果たす。カムルの頭上で輝く光輪を見据え、シンは新しき神殺しの奥義を真っ直ぐに振り下ろした。
「神を断つ――『陰陽神裂・光輪斬』!!!!」
――パキィィィィィィィィンッ!!!!!
一閃。シンの放った漆黒の軌跡が、カムルの頭上の【神の光輪】を真っ二つに両断した。
光輪がパリンと音を立てて粉々に砕け散った瞬間、カムルを包んでいた神聖なオーラが完全に霧散し、奴を無敵たらしめていた「加護」が完全に消滅した。
「ば、バカな……! 我が神の力が……消えていく……っ!?」
神の加護を失い、ただの巨大な邪悪へと成り下がったカムル。そこへ、待ってましたと言わんばかりに全員が同時に動いた。
「みんな、一斉に叩き込むわよ!!」
ヒミコの古代魔法、ユイの鋭い凍気、モカとココアの無数の魔力弾、サーラとカイルによる完璧な連携攻撃。そしてジンとガイル、マスタードラゴンの容赦ない追撃が、無防備なカムルの巨体へと逃げ場なく炸裂する!
「ぎゃああああああああっ! 痛い、痛いぞ……! この我が、虫ケラどもに傷つけられるなど……っ!」
絶叫し、激しく血を流して床をのたうち回るカムル。
その遙か頭上から、シンとライトが、お互いの聖剣を重ね合わせながら同時に舞い降りた。
シンの進化せし『アマテラス』、そしてライトの『エクスカリバー』。
二人の英雄の固い絆、そして全ての世界の想いが今一つに重なり、究極の合体必殺技へと昇華する。
「「これで終わりだ……カムル!!!!」」
「「『天地開闢・創世ノ一撃』!!!!!」
世界を創り直すほどの絶対的な光と闇の刃が、偽神カムルの身体を脳天から真っ二つに一刀両断した。
「ア、アデル……オレは……オレは……神だァァァァァッ!!!」
怨嗟と断末魔の叫びと共に、カムルの巨体は光の塵となり、神界を覆っていたすべての闇と共に完全に消滅していった。
分厚い雲が鮮やかに割れ、崩壊した戦場に本物の、どこまでも温かい太陽の光が差し込んでくる。
シンとライトは互いに剣を引き、静かに息を整えながら、固い握手を交わした。
偽りの神は倒され、人質は救われ、長きにわたる神界の欺瞞はここに暴かれた。
二人の英雄が掴み取った光の手によって、世界にはついに、本物の平和が訪れたのだった。
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