28話 陰陽合一と真なる二刀
陰陽合一ノ神殺し~二刀の聖剣が一本の絆へと変わるとき~
「ハァァァァァッ!!!」
どこまでも真っ白だった精神世界が、今や世界を引き裂かんとする黄金の雷霆と、天を焦がす紅蓮の爆炎によって真っ二つに分断されていた。
魂の最奥で繰り広げられる、飛竜と鳳凰が放つ本気の猛攻。その一撃一撃は、かすめるだけでも僕の魂そのものを消し飛ばしかねないほどの凄まじい質量と、神聖な神威を伴って襲いかかってくる。
「くっ、うおおおおっ!」
僕は具現化させた二振りの聖剣『日輪』と『月読』を前方に交差させ、ガイルさんとの戦いでその身に叩き込まれた世界の息吹――不純物を一切排した強固な『波動』の鎧を全身に纏って、かろうじてその濁流を耐え抜いていた。
しかし、完全に防戦一方だった。
二匹の力はあまりにも巨大で底が知れず、ほんの一瞬でも気を抜けば、瞬時に僕の精神ごと魂の器を木っ端微塵に叩き割られてしまうだろう。
激しく燃え盛る炎の檻の向こうから、鳳凰の気高く美しい声が僕の脳内へと直接響き渡った。
『見事な粘りです、シン。……ですが、この程度の力では神カムルには遠く及びません。お前がその右胸に宿すアデル様の加護、そして今、龍神界に眠る神殺しの刀『天照』……その二つが揃って初めて、世界を偽りの光から救う唯一の希望となるのです』
「天照……神を殺す、刀……っ!」
『そうだ小僧!』
鳳凰の言葉を引き継ぐように、飛竜が黄金の雷光をその巨体に束ね、上空から猛烈な速度で急降下してきた。
『だがな、あのカムルのトカゲ野郎をブチ殺すには、オレたちの神聖な力だけじゃ到底足りねえんだよ! お前がその身に宿す、あのジンって男から叩き込まれたドス黒い破壊の力……あれも全部混ぜ合わせて、オレたちを力ずくで捩じ伏せてみせろ!!』
二匹の苛烈な激励が、僕の魂の奥底にある導火線に、バチリと特大の火をつけた。
外の世界の龍神界で、今まさにその『天照』が勇者ライトの手によって二つに折られ、唯一の希望が断たれようとしていることなど、今の僕はまだ知る由もない。
けれど、二匹の無念を晴らし、囚われのアデル様を救い出すためには、ここで弱音を吐いて立ち止まっている暇なんて、一秒だってないんだ。
「やって、みせるさ……! 僕の中にあるすべての力で、二人を完全に受け入れるッ!!」
僕は深く息を吐き、これまでは暴走を恐れて体内の奥底に封印していた、ジンさんの『暗黒闘気』を一気に解放した。
ドス黒く禍々しいオーラが、津波のように僕の身体から噴き出す。いつもなら正気を失いかけるその強烈な破壊衝動を、僕は左手の『月読』が放つ静謐な月の波動で優しく包み込み、純度の高い超エネルギーへと瞬時に中和していった。
そして、完全に制御下に置いたその凄まじい闇の力を、今度は右手の『日輪』へと繋ぎ、全身の血管へと巡らせていく。
紅蓮の炎と、蒼氷の月。ジンの遺した、漆黒の闘気。
そして、現実世界でバハムートさんとマスタードラゴンさんという二大巨頭から、世界の理を震わせて注ぎ込まれ続けている、膨大な世界の魔力。
すべての歯車が、僕の右胸にある『聖痕』を中心に――カチリと、完璧な音を立てて噛み合った。
「うおおおおおおおおっ!!!」
僕の咆哮と共に、両手に具現化していた二振りの聖剣が、世界を塗り替えるほどの眩い閃光を放って、その「真の姿」へと覚醒していく。
右手の『日輪』は、太陽の破壊力を暗黒闘気と混ざり合うことで「紫黒の炎」へと昇華させ、飛竜の剛力を宿した巨大な大剣へと形を変えた。
対する左手の『月読』は、月の静寂を絶対的な凍気へと変え、鳳凰の美しい羽が幾重にも折り重なった、神聖で気高き細剣へと姿を変える。
『――ほう、本当にやりやがったな、小僧……!』
『素晴らしいわ、シン。私たちの魂が、今、完全にあなたと同化していく……!』
覚醒した二振りの異形の刃を構え、僕は白い世界に一歩、力強く前に踏み出した。
体内を満たす、これまでに感じたことのない圧倒的な万能感。
あれほど暴れ狂っていた飛竜の黄金の雷も、鳳凰の紅蓮の炎も、今はまるで僕自身の体の一部であるかのように、優しく、そして力強く魂と同調している。
「いくよ、二人とも! 僕たちの本当の力――見せてあげる!」
シンはついに、至高の存在である飛竜と鳳凰の完全制御に成功し、二振りの聖剣の真の姿を解放した。
精神世界での過酷な最終試練を完全に突破し、偽神カムルとの決戦に挑むための絶対的な力を、少年はその両手にしっかりと掴み取るのだった。
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