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26話 全霊の終焉と折れし希望

陰陽合一ノ神殺し~二刀の聖剣が一本の絆へと変わるとき~


神界の暗い地下で、かつての戦友であるカイルたちが命懸けの潜入劇を繰り広げているとは、ライトはまだ知る由もない。


黄金の雷光が不気味に渦巻く龍神界の封印の間では、勇者ライトと元・幻獣王ガイルの死闘が、さらに熾烈を極めていた。


――キィィィィィンッ!!!


ライトの放つ聖剣エクスカリバーの純白の輝きが、ガイルの放つ目に見えない『波動』の衝撃波と正面からぶつかり合い、周囲の空間そのものを歪ませるほどの強烈な火花を四散させる。


すでにライトの身体は傷だらけだった。何本かの骨はとっくに悲鳴を上げ、流れ出る血によって視界も赤く染まりかけている。それでも、彼の真っ直ぐな瞳の奥にある炎だけは、決して消えていなかった。


(まだだ……まだ、俺の足は動く。ソフィアを助け出すまでは……絶対に、こんなところで倒れるわけにはいかないんだ……!)


その凄まじい執念を前に、今まで腕を組んで静観していたジンが、ふっと口元を獰猛に歪めた。


「おいガイル、いつまで手こずってやがる。この勇者さん、神の狗の割にはハラが据わりすぎてて、オレまで血が騒いきちまったじゃねえか」


「フン、ジンの言う通りだ。ただの操り人形ならとっくに噛み砕いている。だが、この小僧の覚悟……オレ様が直々に潰すには、少々骨が折れるわ!」


ガイルが黄金の毛並みを一斉に逆立たせて吼える。

ジンはその言葉に応じるように、腰に帯びた二振りの黒剣を、ゆっくりと鞘から引き抜いた。ジンが放つ底知れない『暗黒闘気』のドス黒いオーラが、神殿の聖光をじわじわと飲み込んでいく。


「おい勇者! お前がそのクソ真面目な聖剣にすべてを懸けるって言うなら、俺たち大人も本気で応えてやるよ。……来い、お前の最大を見せてみろ!」


最強の大人二人が、同時に牙を剥く。

皮膚が引き裂かれそうなほどの絶体絶命の重圧。しかし、ライトは怯むどころか、逆に不敵な笑みを浮かべた。


「上等だ……! 二人がかりで来るなら、俺の全霊を以て、その壁をブチ破るッ!!」


ライトは聖剣エクスカリバーを大上段に構えた。

彼の身体から溢れ出たすべての魔力、そしてソフィアを絶対に救い出すという魂の叫びが、聖剣の刃に限界を超えて収束し、まるで太陽そのものが顕現したかのような、巨大な光の刃を形成していく。


「ハァァァァァッ!!!!! 『エクストリーム・ブレード』!!」


ライトの全霊を懸けた渾身の一撃が、空間を焼き尽くしながら振り下ろされた。


それに対し、ガイルは『波動』を限界まで纏わせた漆黒の爪を突き出し、ジンは『暗黒闘気』を爆発させた二振りの黒剣を十文字に交差させて迎え撃つ。


――ドガァァァァァァンッ!!!!!


龍神界全体が悲鳴を上げるほどの、天地がひっくり返るような大爆発が巻き起こった。

紅蓮の衝撃、暗黒の波動、そして眩い聖光がぐちゃぐちゃに混ざり合い、世界の視界が真っ白に染まる。


「ぐ、あああああっ!!」


激突の瞬間、ジンとガイルの放った規格外のパワーによって、ライトの全霊の光の刃は真っ向から力任せに弾き飛ばされた。

凄まじい衝撃にライトの両手は完全に痺れ、聖剣の軌道が大きく外れる。


完全にコントロールを失い、激しく暴走したエクスカリバーの巨大な光の刃は、ライトの意図しない方向――彼の背後にそびえ立つ、あの『神殺しの刀』の封印水晶へと一直線に突き刺さったのだ。


――パキィィィィンッ!!!!


カムルが言っていた『エクスカリバーの光であれば完全に噛み砕き、破壊することができる』という言葉は、本当だった。

聖剣の圧倒的なエネルギーが強固な水晶を一瞬で貫き、その中心に眠っていた厳かな刀――『天照(アマテラス)』の刀身のド真ん中へと直撃する。


――キンッ。


世界の時が止まったかのような、高くて哀しい金属音が響いた。

次の瞬間、唯一神をも切り裂くと言われた伝説の刀『天照』は、無残にも真ん中から綺麗に二つへと折れ、地面へと突き刺さった。


「やった……のか……?」


刀が折れた凄まじい衝撃波が去り、もうもうと立ち込める土煙が晴れていく。

ライトは二つに折れた刀を見つめ、自分が任務を完遂したことを確信した。


しかし、それと同時に体力の限界を迎えたライトの身体から完全に力が抜け、聖剣をその場に落としながら、ドサリと白亜の地面へ倒れ伏して意識を失った。


ジンは二振りの黒剣を静かに鞘へと戻し、ぽつりと地面に突き刺さる「二つに折れた天照」を見下ろした。


「……折れちまったな」


「フン、カムルの言う通り、あの聖剣の光は本当にアマテラスを壊しやがった。これで神を殺す刃は世界から失われたわけだ…」


ガイルが琥珀色の瞳を険しく細め、低く唸る。


静まり返った封印の間。

勝利したはずの勇者ライトが倒れ、世界を救う唯一の希望であった神殺しの刀が破断するという、あまりにも皮肉で衝撃的な結末を迎えるのだった。


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