23話 不屈の勇者と元王の波動
陰陽合一ノ神殺し~二刀の聖剣が一本の絆へと変わるとき~
「そこを退けと言っているッ!」
ライトが聖剣エクスカリバーを激しく一閃すると、周囲の不気味な雷雲すらも一瞬で吹き飛ばすほどの、まばゆい聖光が白亜の神殿を真っ白に染め上げた。
しかし、その視界を奪うほどの圧倒的な光の濁流を、真っ向から正面で受け止めたのは、黄金の毛並みを逆立たせた巨大なキラーパンサー――ガイルだった。
「ハッ、口ほどにもねえな勇者! 光の量だけは一人前だが、一撃の重さが軽すぎるわ!」
ガイルは巨大な前足に、目に見えない絶対的な『波動』の衝撃波を纏わせ、容赦なく肉球を振り下ろした。
――ドガァァァァンッ!!!
大気が内側から爆ぜるような大轟音と共に、ライトの身体が凄まじい風圧だけで弾き飛ばされる。
硬質な白亜の岩肌を何メートルも削りながら、ライトは辛うじて体勢を立て直して着地した。
「くっ……なんという重さだ……!」
ライトは額から流れる汗を乱暴に拭い、再びエクスカリバーを正眼に構え直す。
これまで人間界で数々の狂暴な魔獣を退けてきたライトだったが、眼前に泰然とそびえ立つ元・幻獣王の威圧感は、完全に別格だった。
一挙手一投足に、この世界の息吹そのものが宿っているかのような、完璧な調和と暴力。まともに直撃を喰らえば、聖剣ごと肉体を粉砕されかねない。
ジンは神殺しの刀が眠る巨大な水晶の前に佇み、古びた外套を風に翻しながら、腕を組んでその戦いを静かに見つめていた。
「おいおい勇者さんよぉ、その程度か? カムルの狗に成り下がった割には、ずいぶんと腰が引けてんじゃねえか」
挑発するように言葉を投げかけながらも、ジンの鋭い眼光はライトの微かなブレを捉えていた。
(……いや、こいつ、単なるカムルの信奉者じゃねえな。何か別の理由で、異常なまでに焦ってやがる)
「黙れ……! 俺は、神カムル様の命令を完遂しなきゃいけないんだ! ここで立ち止まるわけにはいかない……!」
ライトの脳裏に、捕らえられているかもしれない妹・ソフィアの、あの屈託のない笑顔が過る。
真っ直ぐな正義感と、妹を絶対に救い出すという悲壮なまでの覚悟。それがライトの身体に眠る全魔力を、限界を超えて爆発させた。
「ソフィア……待っていろ! 俺が必ず助ける! はあああああっ!!」
ライトは焦りによる踏み込みのブレを強引な力任せで補正し、地を這うような超高速の突撃を敢行した。エクスカリバーの刃が、太陽の如き猛烈な閃光を放ちながらガイルの喉元へと肉薄する。
「ほう、まだそんな速度が出せるか!」
ガイルは琥珀色の瞳を怪しく光らせ、鋭い爪をギラリと陽の光に反射させて迎え撃った。
――キィィィィィィンッ!!!!
神殺しの刀の間全体が悲鳴を上げるように震える、凄まじい金属音が響き渡る。
聖剣の放つ純白の光と、元王が放つ絶対的な波動のエネルギーが正面から衝突し、余波だけで周囲の強固な岩肌が次々とチリとなって消し飛んでいく。
ガイルの圧倒的な爪牙の猛攻が容赦なくライトを襲い、その凄まじい衝撃にライトの腕の骨がミシミシと悲鳴を上げた。
しかし、ライトは一歩も引かなかった。
どれだけ波動の衝撃に肌を切り裂かれ、血を流そうとも、その真っ直ぐな瞳の奥にある炎だけは絶対に消えない。
それどころか、ガイルの放つ絶対的な重圧を逆に押し返すように、エクスカリバーの光はさらにその輝きを増していく。
「ぬっ……!?」
ガイルの喉から、驚愕の唸り声が漏れた。
圧倒的な強者の前にへし折られるどころか、背負うものの重さによってさらに輝きを増す、人間の底力。
(この小僧……我の波動の直撃を喰らいながら、眼の光がちっとも死んでいねえ。ただのカムルの操り人形かと思ったが、腹の底の覚悟だけは本物だな)
ガイルは獰猛な笑みをさらに深くし、自身の波動の出力をもう一段階引き上げた。
全身傷だらけになりながらも、決して折れない勇者の剣。
大切な者を守るための意地と意地が、龍神界の封印の地で、激しく火花を散らし続けるのだった。
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