22話 白亜の死闘と最強の壁
陰陽合一ノ神殺し~二刀の聖剣が一本の絆へと変わるとき~
黄金の雷光が不気味に渦巻く世界――『龍神界』。
その最奥に位置する封印の間へと続く白亜の岩場は、今、激しい咆哮と激痛のような爆炎に包まれていた。
「グオオオオオッ!!!」
神カムルの支配が及ばないこの世界において、侵入者である勇者ライトの前に立ちはだかったのは、龍神界の誇る屈強な守護ドラゴンたちだった。彼らの巨体から放たれる凄まじい雷のブレスが、周囲の岩肌をドロドロのマグマへと溶かしていく。
「そこを退けッ! 俺には時間が無いんだ!!」
ライトは眩い聖光を放つ聖剣『エクスカリバー』を片手で巧みに操り、襲いかかるドラゴンの巨大な爪を鋭く弾き返した。
正義感が強く真っ直ぐな彼は、本来であれば無益な殺生を好まない。しかし、神の命令をこなせば行方不明の妹ソフィアを探してくれるというカムルの言葉を盲信するライトには、立ち止まる余裕など微塵もなかった。
「ソフィア、今助けるからね!……ああっ、痛っ!?」
あまりの心の焦りからか、緊迫した戦いの最中、ライトは足元に突き出た岩に盛大に足を取られ、バランスを崩しかけた。
実戦において致命的とも言えるそんな危なっかしい一幕を見せつつも、そこは人類最強の勇者。彼は強引に身体を極限まで捻ることでドラゴンの追撃を紙一重でかわし、そのまま懐へと肉薄する。
「はあああああっ!!」
眩い光の斬撃が虚空を切り裂いた。
エクスカリバーの一閃によって守護ドラゴンたちの武器や巨体が強烈に弾き飛ばされ、ライトは一気にドラゴンの包囲網を突破する。どこか抜けたところを見せながらも、結果としてねじ伏せてしまう圧倒的な剣技だった。
肩で息を切りながらも、ライトはようやく最奥の『神殺しの刀』の間へと辿り着いた。
眼前にそびえ立つ巨大な水晶。その中心には、カムルが破壊を命じた不吉な一振りの刀が眠っている。
しかし、それは禍々しい武器などでは決してなかった。むしろ、カムルの偽りの聖光を拒絶するような、どこまでも静かで厳かな『本物の神威』を放っていた。
ライトはその神聖さに一瞬圧倒されそうになりながらも、激しく首を振って雑念を払い、聖剣を両手で固く握りしめて上段へと構えた。
「待っていろ、ソフィア……。俺が必ず、お前を助け出す……! 一撃で、粉砕する……ッ!!」
エクスカリバーの刃に、水晶ごと刀を噛み砕くほどの膨大なエネルギーが収束していく。ライトが刃を振り下ろそうとした、まさにその瞬間だった。
パキィィン!!!
突如として、ライトの目の前の空間がガラスのように激しく割れ、禍々しい紫黒の『次元の門』が唐突に口を開いた。
「くっ、新たな敵か!?」
ライトは瞬時に身を翻し、引き絞った聖剣の切っ先を次元の門へと向けた。真っ直ぐな正義感の光が、溢れ出してきた不気味な暗黒の気配と正面から激突する。
門の向こうから、地響きのような豪快な笑い声が響き渡った。
「ガハハハ! 威勢がいいじゃねえか、現役の『勇者』さんよぉ!」
古びた外套を翻し、底知れない暗黒闘気を纏って現れた二刀流の達人――ジン。
そして、その隣で琥珀色の瞳を怪しく光らせ、空間をビリビリと震わせるほどの圧倒的な威圧感を放つ黄金のキラーパンサー――元・幻獣王ガイル。
「……何者だ、お前たちは。ここは神カムル様の命を受けた、俺の任務だ。邪魔をさせるわけにはいかない。そこを退け!」
ライトは少年らしからぬ、しかし遮る者への容赦を捨てた鋭い口調で二人を睨みつけた。
ガイルはのっそりと巨大な前足を進めると、獰猛に口元を歪めた。
「フン、ジンの言う通り、随分とクソ度胸のある聖剣使いだな。おいジン、ここは我が直々に揉んでやると言ったはずだ。お前は後ろで大人しく見ていろ」
「わかってるよガイル。おい勇者、お前がそのクソ真面目な聖剣を振るうっていうなら、俺たちも容赦はしねえ。お前のその覚悟、本物かどうか試してやるよ!」
ジンが二振りの黒剣を抜き放ち、ガイルが黄金の毛並みを逆立たせて咆哮を上げる。
大切な弟子たちの未来を守るため、そしてアデルの遺産を守るため、最強の大人コンビが、人類最強の勇者ライトの前に絶対の壁として立ちはだかるのだった。
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