1話 出会いと融合
陰陽合一ノ神殺し~二刀の聖剣が一本の絆へと変わるとき~
「おい、呪われ子! こっちを見るな、穢れるだろうが!」
「気味の悪いアザを見せるな! 悪魔の化け物め!」
投げつけられる容赦のない石と、向けられる冷たい蔑みの視線。
それが、十六歳のシンにとっての『日常』だった。
生まれつき右胸にある、不気味な黒いアザ。そして、他人に言っても絶対に信じてもらえない『死霊や下級魔獣の姿が見える』という強すぎる霊感。それが理由で、シンは生まれ育った辺境の村で孤独に生きていた。
そんなシンを唯一、一人の人間として、名前で呼んでくれたのは、幼馴染の少女・ユイだけだった。
「はぁ、はぁ、はぁ……っ!」
そんなシンが今、夜の山林を息を切らせて必死に走っていた。
今夜、村の近くの森に、見たこともないバケモノが現れたのだ。白銀の鎧を纏い、顔を持たない不気味な兵士。それは神カムルが放った下級の『神兵』だった。
強い霊感を持つシンだけがその異形に気づいてしまい、目をつけられてここまで追い詰められていた。
背後から迫る、冷酷で規則正しい足音。神兵の構える無慈悲な槍がシンの背中に届こうとした、その時だった。
――ズウゥゥゥン!!!
天地を揺るがす大音響と共に、夜空を切り裂いて二つの凄まじい光の弾がシンの目の前に墜落した。
爆風に吹き飛ばされ、激しく咳き込みながらも、シンは必死に目を開けた。霊感の強いシンの目には、その光の正体がハッキリと見えていた。
(なんだ、あれ……。紫の雷を纏った、大きな羽の生えた竜……? それに、紅蓮の炎を纏った、美しい鳥……?)
それは、神界から命からがら逃げ延びてきた飛竜と鳳凰の魂だった。だが、すでに牙も羽もボロボロで、今にも消え入りそうに明滅している。
「チッ……こんなところに人間だと……? おいお前、オレたちの姿が見えているのか……!?」
荒々しいが、どこか弱り切った飛竜の声がシンの脳内に直接響く。
「まさか、この少年の右胸……。失われたはずの『本当の御方』の加護が眠っている……?」
鳳凰の気高い声が、驚きに震えていた。
しかし、状況は猶予を許さなかった。追ってきた神兵たちが、獲物をシンから二匹の魂へと変え、無慈悲に武器を振り上げる。
「ここまで、か……。神界も、人間界も、すべて奴の手に……」
絶望する鳳凰。神兵たちの無慈悲な刃が振り下ろされようとした、その時だった。
「……諦めるなよ!!」
シンはガクガクと震える足で立ち上がり、二匹の前に立ちはだかった。
「誰も僕を助けてくれなかった! 見てもくれなかった! だけど……あんたたちは今、僕を『化け物』じゃなく、一人の人間として見てくれたんだ!! 理由なんかそれだけで十分だ……こんな奴らに殺されてたまるかぁッ!!」
シンの魂の叫びと、右胸のアザから溢れ出す狂おしいほどの『波長』。
それを感じ取った飛竜の瞳に、激しい閃光が走る。
「……ハッ! 命乞いじゃなく、オレたちのために前に出ただと……!? おい鳳凰、感じるか!? このガキの魂……間違いない、あのお方の器だ!」
「ええ……! おの御方の魂が、まさかこんな辺境の少年に宿っていたなんて……!」
神兵の槍がシンの胸元に迫る。もはや一刻の猶予もない。
「おいガキ! オレたちの命を喰らう覚悟はあるか! 普通の人間なら精神ごと焼き切れぞ!!」
「あるに決まってんだろ! 力を貸せぇぇぇッ!!」
シンが血を吐くような覚悟で伸ばした手に、二つの光が吸い込まれていく――。
絶望する鳳凰。その時、シンの胸の奥で、今まで感じたことのない熱い衝動が突き上げてきた。
融合した瞬間、爆発的なエネルギーがシンの身体を駆け巡った。右胸の黒いアザが、まばゆい金色と紅蓮の光を放ち、竜の鱗と鳳凰の羽が折り重なった美しい『聖痕』へと生まれ変わる。
「おおおおおっ!!」
シンは自らの意志で、体内に満ちる二つの力を引きずり出した。普通の人間なら精神ごと消し飛ぶはずの神の力を、シンは恐怖を撥ね退け、神兵たちに向けて力強く解き放った。
「失せろ――ッ!!」
轟音と共に放たれた赤と青の光の奔流が、一瞬にして周囲の神兵たちを塵一つ残さず消滅させた。
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