16話 必殺技
陰陽合一ノ神殺し~二刀の聖剣が一本の絆へと変わるとき~
「いくよ、みんな!」
僕の声と同時に、バハムートの紋章を怪しく刻んだゴーレムたちが、一斉に地響きを立てて地滑りのように突撃してきた。
頑丈な硬質の岩でできた身体を持つ魔獣の群れ。普通に刃を叩きつけるだけでは、こちらの得物が弾かれて火花を散らすのが関の山だ。
「前衛は任せて、シン! 『重力』!!」
ユイが魔導書の新しいページを、強い意志を込めて力強く開いた。
直後、発動した高密度の魔法がゴーレムたちの頭上へと降り注ぎ、強力な不可視の重圧がその巨大な岩体を地面へと縫い付ける。
ズゥゥン……!
凄まじい風圧とともに、ゴーレムたちの突進スピードが一気にガクンと落ちた。
「今だよモカ! ココア、お願い!」
「まかせてっ! 『プチ・スピード』!」
面倒見の良いココアが、手から淡い光を放ち敏捷性を高めるサポート魔法を放つ。
ココアの魔力によって劇的な超加速を得たモカは、疾風のような速さで地を滑り、ゴーレムの懐へと恐れず潜り込んだ。
「ボクの電撃を喰らえ! 『プチ・サンダー』!!」
モカが小さな可愛い両手を勢いよく突き出す。
パチパチパチ! と手から放たれた鋭い青紫の雷撃が、ユイの重力魔法によって身動きの取れないゴーレムの関節部分へとピンポイントで炸裂した。
バリィィン!
小気味良い破壊音を立てて、数体のゴーレムの足が砕け散り、巨体が大きく体勢を崩して瓦解していく。
「みんな、最高の連携をありがとう……! ここからは僕が決める!」
完璧に作り出されたこれ以上ない勝機。
僕は一歩前へと力強く踏み込み、両手を虚空へと差し伸べた。
カッと眩い赤蓮の光と、静謐な蒼氷の輝きが虚空で実を結び、二振りの聖剣がその姿を現す。
右手に『日輪』、左手に『月読』。
二刃の具現化に呼応するように、僕の魂の奥底に眠る『鳳凰の力』と『飛竜の力』が、再び激しく脈動した。
「ふぅ……」
僕は深く息を吐き、体内にあるすべての力を拒絶せず、ただ受け入れた。
ジンさんに叩き込まれた、暴虐で破壊的なあの『暗黒闘気』。それを左手の『月読』が持つ静かな波動の光で優しく包み込み、中和された純粋な超エネルギーへと変えて、一気に右手の『日輪』へと流し込む。
紅と蒼、そしてジンさんの黒。
二振りの刃が交差した瞬間、禍々しくも神聖な、見たこともない圧倒的な『紫黒の炎』が激しく吹き荒れた。
少し離れた岩の上で寝転がっていたガイルが、琥珀色の瞳を細めてニヤリと不敵に笑う。
「ほう……あの時の偶然の一撃を、完全に己の『必殺技』として制御しおったか」
「ハァァァァァッ!!!」
僕は目を見開き、限界までエネルギーを充填した二振りの聖剣を、残ったゴーレムの群れ、それらを包む濃い霧、そして背後にそびえ立つ巨大な岩の壁に向かって同時に振り下ろした。
「喰らえ! 『紫黒・双天十字斬』!!」
放たれたのは、空間ごと全てを消し飛ばすような、圧倒的な紫黒の十字の巨大斬撃。
――ドンッ!!!
鼓膜を狂わせるような爆音と共に、一瞬にしてゴーレムの群れが光の粒子となって消滅し、行く手を遮っていた巨大な岩壁が、綺麗な十字の形に真っ二つへと両断された。
バラバラと崩れ落ちる岩壁の隙間から、それまで遮られていた眩しい光が、僕たちの顔を優しく照らし出す。
「すごい……! 本当に一撃で、あんなに頑丈な壁を全部壊しちゃった……!」
「やったぁ! ボクたちの完全勝利だね!」
ユイが目を輝かせて駆け寄り、モカとココアが僕の両肩の上で大はしゃぎしながら尻尾を振る。
僕は聖剣の具現化をゆっくりと解き、少し額の汗を拭いながら、新しく開かれた道の先を見つめた。
ガイルはのっそりと巨体を立ち上げると、黄金の尾を小さく振った。
「ふん、合格だ。トカゲ野郎の小細工など、お前たちの足止めにもならん。……さあ、この先がバハムートの本当の領地だ。行くぞ、小僧ども」
仲間たちの固い絆、そして自らの手で完成させた必殺技。
僕は確かな成長の手応えを胸に、現・幻獣王バハムートの待つ幻獣界の最深部へと、さらに力強く歩みを進めるのだった。
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