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12話 暗黒闘気と波動の調和 

陰陽合一ノ神殺し~二刀の聖剣が一本の絆へと変わるとき~


ザーーーーッ!!


轟々と鳴り響く地鳴りのような音が、何日もの間、幻獣界の巨大な滝壺に響き渡っていた。


「くそっ……また弾かれた……!」


シンは荒い息を吐きながら、冷たい岩場にガクリと膝をついた。

右手の『日輪』と左手の『月読』を具現化し、ガイルから教わった波動を纏わせて何度も激流へ打ち込んだが、その度に凄まじい水流の質量に押し負けてしまう。集中がわずかでも乱れるたび、具現化した聖剣はパリンとガラスのように儚く砕け散り、その度に精神を削って作り直さなければならなかった。シンの体力も精神力も、とうに限界を迎えている。


その様子をじっと見守っていたガイルが、重々しく口を開いた。


「小僧。お前は我が波動を掴み、ジンの暗黒闘気を必死に抑え込もうとしている。……だが、それではいつまで経ってもその滝は切れんぞ」


「え……? だけど、ジンさんの暗黒闘気を混ぜたら波動の調和が崩れて、具現化した剣が内側から壊れちゃうんじゃ……」


「排除するな、受け入れろ」


ガイルの琥珀色の瞳が、鋭くシンを射抜いた。


「お前の中にある力は、どれも一級品だ。ジンの暗黒闘気もお前の魂の一部、今まで生きてきた証。抑え込むのではなく、左手の『月読』で優しく包み込み、右手の『日輪』へと繋ぐのだ。お前が真の器なら、すべてを混ぜ合わせ、己の力として御してみせよ」


「己のすべてを……受け入れる……」


シンは、ガイルの言葉を噛み締めるようにゆっくりと立ち上がった。

背後では、ユイが祈るように胸元で魔導書をぎゅっと握りしめ、モカとココアも固唾を呑んでシンの背中を見つめている。


シンは深く、長く息を吐き、再び両手に『日輪』と『月読』を同時に具現化させた。


その瞬間、体内の奥底から、ジンに叩き込まれたあのドス黒く破壊的な『暗黒闘気』がカッと激しく湧き上がる。

いつもならここで焦って抑え込もうとするところを、シンはあえて、その暴れ狂う暴虐の力を全身の脈絡へと巡らせた。


「ぐっ、うおおおおおっ……!」


身体が内側から強引に引き裂かれそうな激痛が走る。

だが、シンは左手の『月読』を強く握りしめた。月の静寂と鳳凰の治癒を宿す蒼氷の細剣。月読はもともと紅蓮の炎だった。極限の『治癒と優しさ』が、鳳凰の炎から余分な熱を削ぎ落とし、すべてを穏やかに鎮める『蒼氷の静寂』へと昇華した。そこから溢れ出た清らかな波動の光が、暴虐な暗黒闘気を拒絶することなく、優しく包み込んでいく。


するとどうだろうか。劇薬のようだった破壊の衝動が、みるみるうちに静まり返り、純度の高い莫大な『超エネルギー』へと変化していくではないか。


(今だ……これを全部、右手に流し込む!!)


調和され、中和された凄まじい力が、シンの身体を回路として、右手の『日輪』へと一気に充填(チャージ)されていく。

太陽の破壊と飛竜の剛力を宿す赤蓮の刃が、ジンの黒いオーラと完全に混ざり合い、禍々しくも神聖な、見たこともない『紫黒の炎』を激しく吹き上げた。


紅と蒼、そしてジンの黒。

シンのすべてが、今、完全に一つに融和した。


「これで……決めるッ!!」


シンはカッと目を見開き、交差させた二振りの聖剣を、目の前の大滝へと向かって同時に振り下ろした。


「ハァァァァァッ!!!」


放たれたのは、空間そのものを消し飛ばすような、超巨大な紫黒の十字斬撃だった。

凄まじい風圧とエネルギーの奔流が滝へと激突する。


一瞬の静寂の後――ドンッ!!!


鼓膜を震わせる爆音が響き渡り、何トンもの激しい水流が文字通り『蒸発』して吹き飛んだ。

白い水飛沫が霧のように美しく舞い散る中、そこには完全に流れを断ち切られ、剥き出しになった巨大な滝の岩肌が、確かに露わになっていた。


「やった……本当に、切れた……」


シンが剣の具現化を解くと、糸が切れたようにドッと足から崩れ落ちた。


「シン!」


ユイが慌てて駆け寄り、その小さな身体でシンをしっかりと支える。モカとココアは「やったね!」と大はしゃぎで、シンの周りを嬉しそうに飛び跳ねた。


ガイルはゆっくりとシンに歩み寄ると、ニヤリと肉食獣特有の獰猛で、しかしどこか温かい笑みを浮かべた。


「見事だ小僧。ジンの力と我が波動、そして己の聖剣。すべてを混ぜ合わせたその一撃……かつてのジンでも成し得なかった領域だ」


ガイルは満足そうに胸を張ると、幻獣界のさらに奥、霧の向こうへと視線を向けた。


「これで幻獣界を進む最低限の力は身についた。……よし、暇つぶしの修行はここまでだ。ここからは、元・幻獣王ガイル様が、お前たちの旅の案内役(ガード)として同行してやる。行くぞ、人の子よ」


ガイルが歩き出すとともに、目の前の霧が晴れていく。

シンたちの前に、どこまでも広大で、神秘的な生命の息吹に満ちた『幻獣界』の本当の景色が広がっていくのだった。

最後までお読み下さいましてありがとうございます。感想書いて貰えれば嬉しいです。 

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