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追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。
第2部 華やかな北の都 第1章 ユラニア王国とグブズムンドル帝国

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第89話 それぞれの運命

 王国歴162年12月17日 朝 皇帝宮 迎賓の館にて――


「凄い、晩餐会だったね」


 昨日のことを思い出し、ティアナは微妙な笑顔で話す。ケーキの食べ過ぎでヤスミンは絶賛胸焼け中だ。


「今日、食べられない」


 朝食会場には新鮮な魚貝類やパンがずらりと並べられ、ヨーグルトや野菜なども食べきれないくらい準備されていた。けれども昨日食べすぎてしまったレオンシュタイン一行は、ほとんど手をつけることができない。


 昨日の晩餐会は急遽決定したにも関わらず、大がかりなものだった。


 城の大ホールは1000人は優に入れそうな広さがあり、調度品も芸術的な価値が高いものばかりが並んでいた。高価な絵画や調度品はそれほど多くなく、皇帝の姿勢が良く現れていた。その大ホールに王族や貴族が溢れんばかりにひしめいていたのだ。


 新鮮な海の幸は勿論、羊肉も豊富に用意され、国力を示すように他国から購入されたものも多かった。


 グブズムンドルは北国故に果物や野菜があまり育たないというのに、それを全く感じさせない料理の数々だった。デザートのケーキも充実し、ヤスミンは全品制覇に余念がなかった。


 レオンシュタインたちが疲れているだろうと祝宴は2時間ほどで終了したが、その間レオンシュタインは数多くの貴族たちと挨拶を交わしていた。帝王の一族とも挨拶を交わすなど、異例の優遇を感じたレオンシュタインだった。


「おはようございます。レオンシュタインどの、よく眠れましたか?」


 颯爽と現れたヴィフトは、グブズムンドル風のチュニックに青を基調としたスラックスを身にまとっていた。 朝からヴィフトは紳士だった。


「昨日は素敵な会にお招きいただき、ありがとうございました」


 笑顔でレオンシュタインの礼を受けたヴィフトは、そのままテーブル席に着く。給仕にコーヒーを注文し本題に入る。


「皇帝より滞在期間の延長を仰せつかりました。レオンシュタインどの一行は3月31日まで滞在費の全てが無料となります」


 好意が巨大すぎる。けれども、ヴィフトの口調は有無を言わせないほどの強さがあった。断るなということなのだろう。


「ヴィフトさん、本当にありがたい話ですが、どうしてここまで?」


 あえて理由を尋ねたレオンシュタインに、ヴィフトは少しだけ真面目な顔になる。コーヒーが運ばれてきて、その香りがテーブル全体に漂う。コーヒーを一口、口に含むと、ヴィフトはその理由を説明し始めた。


 それは帝国はユラニア大陸の国々とのつながりが薄いという事実だった。その責任者であるヴィフトの言は重い。国交を結んでも、王国の貴族との繋がりができないことが目下の悩みであり、シュトラント伯爵家との繋がりは何としても保っておきたいとのことだった。


「そこで、これからの過ごし方について、こちらから提案させていただきます」


 バルバトラスにはペルトラン大学の臨時講師、また、同大学の短期留学生としてフリッツとヤスミン、レオンシュタインはケプラビーク音楽院への短期留学、ティアナはケリズ魔法学園への短期留学が提案された。


 そして、イルマには望んでいた研鑽が決まる。


「えっ? 帝国騎士団への仮入隊!? 凄いんだけど!」

「ヨークトル殿の小隊へ入隊です。最強との呼び声が高いです」


 そうイルマに伝えたヴィフトは、全員の方に向き直って意思の確認をする。感謝の声のみが伝えられ、反対意見は全くでなかった。


「それでは、これから手続きに入ります。明日それぞれの場所へ行き、手続きを完了させてくださいね」


 コーヒーがなくなるまで雑談をすると、ヴィフトは業務に戻っていった。


「じゃあ、みんなのやりたいことを確認しますか」


 レオンシュタインは全員の気持ちを聞いておきたかった。


 バルバトラスは本が読めるため大歓迎らしいし、フリッツは領地経営学について学びたいという意向を示していた。イルマは大歓迎だし、ティアナも魔法を極めたいらしい。ただ、ヤスミンだけは戸惑っていた。困惑しているヤスミンを見て、レオンシュタインは1つの提案をする。


「僕はしばらくヤスミンと一緒に大学を見て回るよ。何だか楽しそうだし」


 ほっとした表情で、ヤスミンはレオンシュタインを見て頷く。


「じゃあ、しばらくは別々になるけど、朝と夜は一緒にご飯を食べようよ。寂しいからさ」


 レオンシュタインの言葉にみんなは笑顔で答える。


 そして、この帝国への滞在はそれぞれに大きなものをもたらすのだった。

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