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追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。
第2部 華やかな北の都 第1章 ユラニア王国とグブズムンドル帝国

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第76話 王都でのトラブル

 王国歴162年11月29日 ユラニア王都 城門付近にて――


 話し合いの結果、王都入りのメンバーはレオンシュタイン、ティアナ、イルマの3人となった。フリッツは馬車の手入れ、バルバトラスは読書をすると決めていた。ヤスミンも寒さに震え、馬車で毛布にくるまっていると宣言する。


 馬車の荷台から降りたレオンシュタインたちは、城門に向かって歩みを進めていく。やがて4人の屈強な兵士が門を守っているのが目に入ってきた。


「次!」


 高圧的な物言いが気になったが3人は黙って兵士の前に立った。


「お前たちは何用で王都へ行くのだ?」


 壮年の隊長が厳しい口調で尋ねてくる。ただ、周囲の兵士たちの目はティアナとイルマの身体に注がれていた。


「王都を見たことがないので、一度見ておきたいと思いまして」


 レオンシュタインは素直に答える。


「この時期に旅行とは、他国の間者ではないのか?」

「そのようなことはありません。私はシュトラントの出身です」


 こんな3人で間者もないだろうと思ったが、レオンシュタインは丁寧に説明し始める。隊長は、濁った目をレオンシュタインに向け、証明するものはあるかを尋ねてくる。ごそごそと袋の中を探り、伯爵家を出るときに門番からもらった証明書を取り出した。


「こちらでございます」


 出された証明書をひったくるように読んだ隊長の顔色が少し変わる。


「お前……失礼、貴方はシュトラント伯爵家のレオンシュタイン殿でしたか」

「はい、そうです」


 レオンシュタインの胸に安堵の気持ちが広がっていく。


「では、この2人は何だ……ですか?」

「私の従者でございます」

「そ、そうか」


 残念そうに隊長が答えるが、周囲に立っていた兵士たちは食い下がってきた。


「レオンシュタイン殿は分かったが、この2人の従者は身元が明らかになっておらん。禁制品を持っているかもしれないぞ」


 そう決めつけ、小屋で身体検査をすると宣言した。


「ええ、なぜです? 私の従者だと言っているではありませんか」

「いや! 身元が明らかでないため、持ち物を調べる必要がある」


 そう言うと、年配の兵士は2人を小屋へ連れて行くように命じた。


「お待ちください。では、私たちは引き返します」


 慌ててレオンシュタインは兵士に伝えるが、イルマとティアナは既に兵士たちに囲まれていた。隊長はレオンシュタインに落ち着くよう話したが、その顔はいやらしい想像で緩みきっていた。


「レオンシュタイン殿、ただの取り調べですから目くじらをたてることももないでしょう。貴殿も貴族ならお分かりでしょう」

「何をだ?」

「私は公爵家に連なるもの。ここで騒ぎを起こすのは得策ではありますまい」


 身分を笠に着た隊長の物言いにレオンシュタインは怒りを感じ始めていた。


「私たちも少し楽しませてもらえればいいのですよ」


 ニヤニヤを崩そうともせずレオンシュタインの肩に手をかける。


「しょせん遊び女だろう。ケチケチするな」


 その瞬間、レオンシュタインは肩にかけられた手を払いのける。


「ふざけるな!!! イルマ! 抜剣せよ!!」

「あいよ」


 イルマの剣が抜かれ、刃に陽光が反射し鈍い光を放つ。兵士の一人がその様子を見て、思い出したように指差した。


「イルマという名前と剣……。お前、狼口のイルマか?」

「あら、私も有名だったのね」


 兵士は急に興味が無くなったような声を出した。


「お前ら、こいつは別にいらんぞ。狼のような顔だからな」

「おいおい、私の顔に用事があんのかよ」


 イルマの剣が横に薙ぎ払われ、兵士はくるのが分かっていても、その斬撃を止めきれない。ショートソードは手元から跳ね飛ばされ、5mも向こうでガチャッと音を立てる。


「あっ!?」

「未熟」


 そう言うと足で兵士を蹴りつけた。訳がわからないという表情のまま兵士は地面に倒れ込んでいく。


「手を触れるのも嫌だからね」


 ウインクをしながら兵士に吐き捨てるように話す。


「こいつ!」


 イルマの斜め後ろから斬撃がやってくる。先ほどの兵士よりは腕が立つようだがイルマは動じない。


「この程度で王国の兵士がやれるんだ。気楽だねえ」


 言いながら男の剣をいなして、はね上げる。


「新兵からやり直しな」


 思いっきり相手を蹴り飛ばしていた。蹴り飛ばされて折り重なるように倒れた2人に近づくと、イルマは剣を地面に刺してしゃがみ込む。自分の胸を両手で隠すようにしながら、イルマは可愛らしい声を出す。


「ごめんねえ。私にさわれるのはレオンだけなんだ」


 すぐに急に声の質を変え、次は「斬る」と威圧した。おびえた表情の二人は倒れたまま何度もうなずく。


 その頃、ティアナも男たちに取り囲まれていた。


「こいつは仮面か。それでもいいか。抜群の胸と尻に用事があるからよ」


 下卑た笑いが広がる。


「お前もあの伯爵家の男に毎日可愛がられてんだろ。あんな男より、俺たちがもっと気持ちよくさせてやるよ」


 黙ったままのティアナの全身が、ぼんやりと黄色い色で包まれているように見える。


「さあ、こっちにこい」


 ティアナに触ろうとした瞬間、その男の手に雷の矢が突き刺さる。


「痛え!」

「こいつ、魔術師か!」


 痛む手を押さえながらしゃがみこんだ男の後ろから、もう一人が飛び出してくる。


「これは、お仕置きが……」


 その瞬間、足が地面から動かせなくなり顔から倒れこむ。


「お仕置きが何?」


 仮面の奥から無表情に言い放つ。横から飛びかかろうとした男にも雷の矢を放ち、足を地面に縫い付けたままにした。ティアナは肩をすくめ、イルマに合図をすると彼女は無言で2人を蹴り飛ばした。


「王都に入るのに、こんな審査があるんだったら諦めよう」


 後ろから近寄ってきたレオンシュタインは、うんざりといった顔つきで提案する。いいことが待っているとは思えない。


「でも、主、いいのか?」


 剣を収めながらイルマは確認する。


「いいよ。二人が危険にさらされるのは何よりも嫌だからね」


 嬉しさを顔いっぱいに表現しながら、イルマはレオンシュタインの側に寄っていく。その瞬間、ティアナに腰の紐をぐいっと掴まれる。


「ん? 何?」

「イルマ! 過剰なスキンシップは控えて!」


 優しい口調だが『絶対に許さない』という気迫が感じられる。イルマはイルマで譲らない。


「主の優しさに、身体で感謝の気持ちを表そうと思っただけなのに。ティアナみたいに電撃ばかりでは可哀想」

「す、好きでやってるわけじゃないよ!」

「どうだか……」


 頬を膨らませて、ティアナは抗議の意を表していた。


「じゃあ、馬車に戻ろ」


 レオンシュタインたちが戻ろうとすると物陰から1人の男が近づいてきた。

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