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追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。


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第7話 戦闘開始

「レオン!」


 ティアナが悲鳴をあげた瞬間、レオンシュタインの眼前で矢が両断される。カラカランという音を立てて矢が下に落ちる。


「怪しいと思ったんだよ」


 後方を睨み付けたゾイラックは、足音を立てない黒ずくめの集団が迫るのを視界にとらえていた。


「行くぞ!」


 ゾイラックの号令一下、配下はすぐにシュランと剣を抜き、賊に走り寄っていく。剣がぶつかり、ガンガンという音と共に暗闇に火花が飛び散った。レオンシュタインは微かに鉄の焦げるような匂いを感じる。


 黒ずくめの軍団を後退させていたゾイラックだったが、突然、味方の呻き声が耳に入った。振り返ると、肩に矢が突き刺さっている。


「弓か。やっかいだ」


 思わず舌打ちをしたゾイラックの横で、ティアナは魔法の詠唱を始めていた。


「光球!」


 ティアナの手から大きな火花が飛び出し、光の球となって黒ずくめ集団の上に輝く。


「こりゃあ、ありがてえ!」


 ゾイラックたちは勢いづき賊を後退させていく。


「雷の矢!」


 ティアナの放った魔法の矢は賊の弓使いの手に突き刺さり、その手から弓を落としていた。その瞬間、高い笛の音が鳴り響いたかと思うと、集団は闇に溶けるように消えてしまった。


「嫌な奴らだ」


 仲間を呼び寄せたゾイラックは、負傷者の肩に包帯を巻き付けていたレオンシュタインに礼を言い、矢に毒がないか確かめていた。どうやら大丈夫なことを確認すると、全員で神に感謝する。


 遺留品を捜し回ると、1つの弓と両断された矢が地面に落ちていることに気付く。


「いい弓を使ってんな」


 見てみろとばかりにゾイラックは弓を味方に放る。あまりにも統率されていて普通の賊とは思えないとゾイラックは盛んに首をひねっていた。


「それでもみんな命があったのは何よりだ! と、いうことで~銀貨1枚いただきます」

「ごちっす」

「ごちっす」


 両手を前に出したゾイラックに丁寧にお礼を述べながら、銀貨を1枚とチップの大銅貨1枚を手に載せるレオンシュタインだった。


 丁寧にお礼を述べたティアナは、すぐに女であるとばれてしまう。


「お嬢ちゃんの魔法はすげえ」

「本当だ。あれがなきゃ弓にやられてたぜ」

「仮面の下って、もしかして美少女? いやあ、見てみたいな」


 みんないい人ばかりのようだ。


 ひとしきり盛り上がったのを見計らって、ゾイラックは先を急ぐことを提案した。賊は死んだわけではなく、追い払っただけなのだ。半月が細々と空に輝いているほか、ランタンにしか灯りはない。


「危ないから走ることはない。でも、急ぐぞ!」


 レオンシュタイン一行は黙々と前へ進み、月が南に昇る頃ようやくビコーたちの野営地が見えてきた。駆けつけてくるビコーの姿を確かめると、二人は気が緩んだのか、その場に崩れ落ちてしまった。


「おい、ルイーズ!」


 キャラバンから人が出てきて二人の寝床をこしらえ、すぐに寝かせる。


「まあ、無理もねえよ」


 ゾイラックはビコーに先ほどの襲撃の件を伝えると、ビコーはお礼を言いながら袋から礼金を出そうとする。だが、ゾイラックはそれを押しとどめて言った。


「兄ちゃんたちも戦ったんだ。また会おうって伝えといてくれ」

「分かった」


 寝ている二人をビコーが確認している間に、ゾイラックたちは手を振って出発してしまう。二人に毛布を掛け直したビコーは、優しく微笑み、命があったことを神に感謝したのだった。

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