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追放された貴族の三男。得意なバイオリンの音色が美人さんや有能配下を引きつけて、気がついたら巨大王国と大戦争をしてた件について  作者: ちくわ天。


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第44話 やっぱり、ダメ!

 王国歴162年9月26日 22時頃 ローレのお店にて―― 


「今日、入ったばかりのイルマで~す。よろしくう」

「え、ええええ!? イ……イル……」


 イルマは黙って、とばかりにレオンシュタインの足をそっと踏む。


「レオンさん。じゃあ、乾杯プロースト!」

 

 露出が高いイルマがすぐ側にいて、やたらと身体をつけてくる。レオンシュタインは気が気ではなかった。分かっていたことなのだがイルマは胸が大きく、どうしても目がいってしまう。


「お客さん、私の胸ばっかり見てますね」


 ニヤニヤしながら、さらに密着してくる。


「いいんですよう。さわっても」


 旅の仲間にそんなことはできない。そのため今日は仲間ではない女の子と、たくさんふれ合っておきたかったのにとレオンシュタインは思う。女の人に対するトラウマを乗り越えたいのだ。あわよくば、ちょっとだけイケナイことをしてみたいと思っていたレオンシュタインだったが、どうやら上手くいきそうもない。


 ローレさんもさりげなく向こうに行ってしまった。気を遣わずに話せそうな人だったのに……残念だなとレオンシュタインは思う。レオンシュタインの視線に気付いたイルマは、ねたような声を出す。


「ふうん、お客さん。あっちの子が好みなんですかあ」

「い、いえ」

「ふふ、お客さん可愛い。私、好きになっちゃいそう」


 そう言いながら頭をレオンシュタインの肩に乗せてくる。


 飲んだお酒がレオンシュタインの冷静な判断力を狂わせ、どうしてこうなったという疑問が頭の中でぐるぐると巡っている。そのたびに落ち着こうと、クピクピと酒をあおる。


 あまりに飲むペースが早いためイルマは心配になり、落ち着かせるために部屋の隅にある長椅子のところに連れていく。顔が赤くなっていたレオンシュタインの足取りは乱れ、フラフラしながらようやく長椅子に腰を掛けた。


「主……。大丈夫?」


 心配したイルマが水を持ってきたにも関わらず、それはいらないとレオンシュタインは手で示すと、いきなりイルマに抱きついてきた。


「ええ!? あ、主!」


 びっくりしたイルマは冷静になろうと大きく深呼吸をする。


「何ですか? お客さん。このお店はお触り禁止ですよ」


 さりげなく手を振り解こうとするが抱きついたまま離れないため、イルマのあせりがつのる。自分で触らせようとしていたことは都合良く忘れているイルマだった。そんなイルマをよそに、レオンシュタインの抱きついた手が腰の辺りに降りてくる。


「ひゃん!」


 可愛らしい声を出してイルマは真っ赤になる。でも、冷静に冷静にと自分に言い聞かる。


「お客さん、お水を飲みましょ」


 その瞬間、長椅子の上に二人は倒れ込み、レオンシュタインの顔がイルマの胸に乗せられる。思ってもいない展開にイルマの心臓が早鐘のように鳴り響く。


「主! ダメ! こんなところで」


 小さな声で拒絶の意を示すがレオンの手はさらに下に降りてくる。お酒を全く飲んでいなかったイルマの顔は、今や真っ赤になっている。


「私、こんなの初めてで……。でも主がしたいなら……」


 混乱しているイルマは自分でも何を話しているのか分からない。でも、覚悟を決めたようにレオンシュタインを見つめていた。


「私、嫌じゃないよ。うん。でも……私にもね、気持ちの準備が必要だし……」


 レオンシュタインの顔が自分の近くに寄ってきて、さらにきつく抱きしめてくる。


 イルマは自分の顔を両手で覆う。


「や、優しく……って、やっぱりダメ!!!!」


 レオンシュタインはイルマの耳元に顔を近づけて一言だけ話していた。


「み、水を……お願いします」


 そう言うなり、ばったりと倒れ込んでしまった。この状況に呆然としたイルマだったが、羞恥心と苛立ちでレオンシュタインの頭をゴチゴチと叩いてしまった。


「水……痛……」


 ようやく自分を落ち着かせたイルマは、


「馬鹿……」


 とつぶやいて、自分の膝にレオンシュタインをのせて休ませる。酔いつぶれてしまったレオンシュタインを心配したケスナーたちは、肩を貸して連れ出そうとした。そこにローレさんが割って入り、身内が迎えに来ていることを伝達する。身内とは、イルマのことだ。


「ごめんなレオンちゃん。俺たちが離れちゃって」


 ケスナーやオイゲンが代表して謝り、その日は解散することになった。


 その後、酔いつぶれたレオンシュタインをイルマが背負って宿まで帰ることになった。自分の背中ですうすうと寝息を立てているレオンシュタインの顔が近く、イルマは宿に着くまで顔が赤いままだった。


 宿に着くと、顔色の悪いレオンシュタインをティアナが心配して、夜を徹して世話をし続けていた。


 一方、イルマも早々にベッドに入ったのだが、あまりの恥ずかしさに目が冴えてしまい、なかなか寝付けないまま朝を迎えたのだった。

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